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大切な人と「さよなら」すること

朝目覚ましの音で伸びをした。
ずっと長い夢を見ていたような気がした。
でも残った通話履歴から、やっぱり現実であったことを噛み締める。

何が正しかったのだろうか。
どうすれば良かったのだろうか。

「あのさ、思ったんやけど、ここまできたら一回お試しで付き合ってみない?」

自分でも不思議だった。なんでそんなこと思ったのか。
そしてなんできちんと相手の性格を考えなかったのか。
笑って「何言ってるん」って返してくれると思っていたのに。

実際は神妙な空気と重々しい言葉ばかりだった。

違う、違うの。困らせたかったわけではないの。
そんな深く考えて出したものでもないの。

結論なんて見えずにただ浮かんだものを口にしただけ。
それだけなのに、あいつは、そのなんてことない言葉に意味や真意を汲み取ろうとする。
私だってわからない、考えてなかった。浅はかだった。

無意識に、意図せずに、相手を傷つけ、困らせる行為を私自身がすることは、一番私にとって許せないこと。
それなのに、浅はかな考えと決断でまた同じことを繰り返したのだろうか。また大切な人を失うのだろうか。


男女の友情は成立するのか。
これは時と場合、相手によるものだと思うが、成立しうると思う。

でも始まりが私の一方的な恋愛感情だったから。
それをきちんと処理しなかったから、今は恋愛と別の形になっていると理解しているのに、恋愛を望んでいないのに、分類できない関係にモヤモヤとしている。

歩み始めが恋愛で先の見えないものだったから、歩いているうちに恋愛でなくなっても、先の見えない道を歩くことが怖い。
始まりがきっと恋愛でなければ、きちんと処理して別の道に移っていれば、先の見えない道を歩くことなんて何も気にしなかったはずなのに。
カテゴリーにこだわらないはずなのに。


「どうしてこのタイミングで、どうして俺なのか」

なんでだろう。
言い訳を並べるのなら、それっぽい理由はたくさん出てくる。
友達と話していて、「恋愛」と「結婚」は別の目的で、結婚なら、好きの感情がなくたって、自分にとって大切な人、考えの合う人と同じ目的を目指すことができるって思ったから?新年になって、あと少しでまた自分の環境が変わるときに、人間関係の整理をしていて、「この人にインスタで私のプライベートの生活を覗かれるのは嫌だな」「この人なら、ま、いっか」っていう線引きをしていくうちに、分類できないことにもどかしさを感じたから?恋愛感情はわからないけど、でもこの人なら忖度なく、私の思っていることを全て話せると思ったから?

言葉にして伝えてみても、どれが本当なのかはわからない。
全部それっぽく見えるし、言葉にできるものは本当に自分が思っているものなんだと思う。

「どうしよっか、この先」

沈黙が訪れるたび、胸を締め付けた。

ごめんね、本当にごめん。
何も考えずに無神経なこと言ってごめん。
何かを求めてしまってごめん。
こうなることなんて考えてなくてごめん。
困らせてしまってごめん。

「どうしよって」

「困らせちゃってごめんね、うーん、難しいけどさ、このまま終わったらきっと気まずくなって、なんか連絡取りづらくなっちゃうでしょ、きっと。だからどう終わらせたい?連絡を断った方がいい?」

「別に喧嘩をしたわけでもないのに、人間誰だってお互いに傷つけ合うのに、俺だって傷つけてるのに、それなのにこんな、これで、縁が切れてしまうものなの?これで連絡が途切れてしまうものなの?」

気持ち悪くないのかな、こんなこと言ったきたやつって引いているんじゃないかな、今までそういうふうに見てきたって思われているんじゃないかな、私に失望しているんじゃないかな、
そんなことを考えるのがしんどいんよね。もうしんどいんよね、ずっと。

「私ね、無意識のうちに、自分の意図とは関係なく、人を傷つけたり、困らせたりする自分が嫌いなの。本当に嫌いなんよね、そんな自分が。大切な人だからこそ傷つけたくないし、困らせたくないやん?自分が大切な人を困らせて傷つけるくらいなら、連絡を断った方がいいのかなって思っただけよ」

「うーん…俺が悪かったんかな、俺から連絡を断った方がよかった?」

「うーん、でもね、私、今までの時間は私にとってはすごく大切な時間やったよ?自分の考えを忖度なく、話の幅を狭めることなく、色々とあれこれ言ってさ。そこにまた新しい考えが加わったり、刺激を受けたり、よっぽど取るに足らない会話をするよりは、有意義で大切な時間を過ごせたと思う。ありがとうね」

「とりあえずさ、今ここで結論を出すのは難しいから、熟考してからにしよ」

「そうね、会話に付き合ってくれてありがとう、じゃあね」

今まで自分から連絡を断とうと思ったことはあった。
結局はできなかったけど。
でも不思議と今回はできるような気がする。
大切な人。本当に大切な人。でもね、ずっと苦しかったのも事実。
どうしてかはわからない。いつも、会うと、話すと、その後にしんどくて苦しい時間がやってくる。それから解放されることに安堵する自分もいてしまっている気がする。
もはや恋愛ではない。恋愛っていうのがしんどかったから。
見返りを求めずに好きでい続けることにしんどくなって、そのうちしんどさが勝ってしまった。好きがわからなくなった。
もう恋焦がれる気持ちも、ドキドキする気持ちもない。
でも大切な人だった。安心できた。
ずっと逃げてた。自分の気持ちも。この関係も。
どこかで区切りが欲しくて。ずっと逃げてきた真っ暗な道に光が欲しくなってしまった。
自分の中で解決できたことかもしれないのに、相手も巻き込んでしまった。

ごめんね
でもね、後悔していないの
今も何がよかったのかを考えている。どうすればよかったのだろう。
でも涙が流れないのは、今までの苦しさから解放されることに、どこか安心してしまう自分がいるから。
今までの時間は苦しかったけれど、私の大切な思い出。
大切な人を失ったとしても、この思い出は壊れないよね。




出逢わなければなんて
そんなの思っていないよ
だから笑って笑ってよね

君に届けとこの愛を
言葉にのせる毎日を
美しく思えないと
いつかは消えてしまうの
これで終わりだなんて
不思議な気持ちになるけど
元気でね

ー夜撫でるメノウー

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