【ネタバレあり】レコンキスタ プレイ感想


レコンキスタプレイしました。
率直な感想としては、どこか瞬間的に面白くなるという感じのゲームではなく、全体的に一定の面白さがあり安定して読み進めることができました。
また、複数の視点からの物語の描写をうまく用いており、それが前半部分(槙野+三沢ルート)と後半部分(汐見+上条ルート)でそれぞれの視点での話を描くことにより、前半と後半で物語の全容が分かっていき良かったです。このゲームで特筆して良かったのが各人物たちの「キーアイテム」や「思い出の品・行動」をうまく物語と絡めて、印象的に使っていたところです。それでは、各ルートについて簡単に振り返ります。ルートは私がプレイした順に振り返りたいと思います。


・槙野 暮葉ルート

このルートは最初にプレイしましたがとても最初から最後までの展開が綺麗でした。槙野は紅葉への未練を抱えており、娘であるもみじのことを愛しながらも、紅葉を失った悲しみから自殺願望を持ち続けていました。そんな中で暮葉と出会い、紅葉と暮葉を重ねて見ることとなり、紅葉のいない喪失感に苦しむことになります。このルートでは暮葉と生活を共にする中で暮葉がもみじの携帯電話を使ってもみじと槙野の写真を撮るシーンが日常の何気ないシーンでしたが最高でした。
そして、それがラストシーンで写真を見た時に紅葉を追って生きていくのではなく、今あるもみじとの日々を大切にして生きていこうという展開に持っていくのは展開として綺麗で感嘆してしまいました。

・三沢 真帆子ルート

このルートは真帆子が誰かにさらわれてしまって死者となっているところから始まりました。反魂の法に関することがこのルートでは徐々に明かされていました。そんな中で、真帆子が反魂の状態であり、反魂の法の副作用を最終的に汐見が取り除くことで幕をおろします。このルートでは魂ってなんだろうかと考えさせられました。骨髄移植をした真帆子の血は悠絵のものでDNAも悠絵のものが流れている。それで魂まで悠絵のものになるかというとならないとは思いますが、100%そうであるとは言い切れず最後のシーンで真帆子が「お兄ちゃん」と呼んでいたことから悠絵の魂が残っているのではないかと思わせるようなシーンでした。
このルートでは、「赤い糸」が見えないけど繋がっているという信くんと真帆子の思い出が大切な記憶として描写されており、とてもよかったです。

・三沢 詩菜ルート

このルートはラストが衝撃的なルートでした。
途中の「大丈夫のおまじない」も印象的でした。
(この大丈夫のおまじないは全編通して出てくるのですが、とても良かったです。)
最終的には信くんが詩菜の反魂状態をもとに戻すために犠牲になるのですが、それが悠絵→真帆子→三沢のように命のリレーのようにつながっていて、詩菜が繋がれた命を大切にしながら生きていくというラストシーンがとても印象的でした。
(あとは、大丈夫のおまじないが一人ですると悲しくなってしまうのもなんというかもの悲しさが伝わってきて悲しいですけど良いシーンでした。)

・槙野 麻咲ルート

麻咲ルートは中々狂気に染まりかけていたルートでした。
それこそ、汐見と同じような危うさを麻咲ちゃんが持っていたと思います。
麻咲ちゃんが過去に汐見と対峙した際に立ち向かえなかった後悔や、槙野が車に轢かれたときになんとしてでも大切な人を助けたいという思いが伝わってきて中々辛いものがありました。
暮葉を追い詰めて反魂の法を聞き出そうとしましたが、暮葉が「また槙野は大事な人に先立たれてしまう。同じ苦しみをまた味わって耐えられるのかしら」ということを口にし、麻咲ちゃんが反魂の法を諦めるシーンはなんとも言えないものがありました。実際に麻咲ちゃんが槙野のいる病院に戻って槙野が峠をさまよっているときに、私も麻咲ちゃんと同じく何が正しかったのか、これでよかったのか分からなく感情がぐちゃぐちゃになっていました。
(正直、詩菜ルートの前例があったので槙野が死ぬ可能性の方が高いかなと思ってました。)
最終的には、槙野は生き残り、小説をまた書いて生きていくラストになってよかったです。麻咲ちゃんともみじと槙野先生の三人で紅葉を見るシーンがめっちゃよかった……。他にもこのルートでは槙野が書いた児童小説の「失ったものを取り戻す話」がとても良かったです。両親を失った記憶を取り戻し悲しみも戻ってきましたが、周りの動物たちが気遣ってくれていることに気づく場面はとてもよく、槙野先生らしく悲しさもありますが、ハッピーエンドとしていい話でした。
(あと、麻咲ちゃんが助かってよかった…)


・過去編 汐見+上条ルート

「上条先生の牧師時代の暮葉との話」と「汐見の悠絵との話」
過去に何があったのか明かされるお話になります。
上条先生と暮葉の間に子供として、紅葉が誕生しますが一度死んでしまいます。その時に反魂の法を暮葉が使い紅葉を復活させます。そのことで村から悪魔憑きと村八分にされます。暮葉は家族に対して失いたくないという思いが非常に強かったため、反魂の法を使って、自分を犠牲にしてでも紅葉を救いたいという思いが強くあったのが伝わってきて暮葉と汐見は似てるなと思いました。暮葉が反魂の法を使ったことで後々の汐見による惨劇が起きてしまったとも言えますが、それが暮葉のせいとは中々言い難いし、上条先生が責任を感じるのも分かるし、でもどうにもすることがあの状況ではできないなと思いました。(本当だったら、暮葉が上条先生をもっと頼って色々打ち明けてくれればまた別の結末になったのかもしれませんが、それは最後のTRUEエンドで叶うことになるのですが…)
汐見に関しては何かあると思っていましたがやはり壮絶な過去がありました。汐見視点を見てからは彼が狂気に走ってしまったのも分かりますし、彼が他の何を捨てても悠絵を取り戻したいというのも否定できない感情だと思って、中々複雑な情緒で読んでいました。
(あと、近親相姦っていうのが絶対悪ではないと個人的には思うのですが、社会的・生物学的にはタブーであることも分かるので、なんとも難しいテーマだなと思いました。)
汐見先生と悠絵は互いを好きだっただけなのに、理不尽さをどうしても感じずにはいられない。その理不尽さが彼を狂気に突き動かしたのだとおもいました。

・現代編 汐見+上条ルート(TRUEエンド?)

このルートは今までの話を汐見と上条の視点から語りつつ、いままでとは違う展開になるような選択肢を選ぶ必要があるルートでした。
ライターと十字架の交換の下り、お互いに愛を誓いあうシーンもよかったですし、汐見が「魂とは生きている人の中に残っていく」ということに気づく場面もとてもよく、この物語のラストを飾るにふさわしいお話でした。
(個人的には、もみじが麻咲ちゃんのことをお母さん呼びするシーンが結構好き。)


・まとめ

レコンキスタは死生観に対して真っ向から向き合った良い作品でした。
それぞれのルートの結末に意味があり、誰かのルートだけでなく色々なエンドがあるからこそ相互に補完しあって全体として考えさせられるようなお話になっていたと思います。(特に詩菜ルートとか)
物語としても、思い出のアイテムや行動(ライターとか糸巻きとか槙野先生のお話とか、大丈夫のおまじないとか)をうまく使っていてすごくよかったです。
人間関係についても、お互いに見えるところ・見えないところでつながっていて(骨髄移植とか槙野先生のお話とか)とても見ていて物語のピースが徐々に嵌まっていくような感覚を味わえました。
このゲームをプレイして良かったと思います。


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