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『かも』

あの時 本気で挑んでいたら 今こんなとこにいない
そんな話あなたのその口から 聞きたくないのかも
『かも』作詞:KREVA

 はい、こんにちは☀️

 今日はですね〜 ラッパー"KREVA"について語った昨日の記事『存在感』の延長戦です。昨日は、KREVAの来歴や楽曲『存在感』について語りました。書いていると「あれも入れよう・これも入れよう」とどんどん膨らんでいき、ネタが収まりきらなかったので(多分noteの理想ってサクッと読める2000文字前後だと思いますが倍ぐらいになってしまいました)前回から溢れ出た分を今回ご紹介して行けたらと思います。

 今回紹介するのは、2010年リリースのミニアルバム『OASYS』より『かも』です。前回も触れたのでクドいようですが、"サプリング"の手法で手がけたアルバムの最終作にして最高傑作心臓』を経たKREVAが、自らの手でシンセサイザーを打ち込むことで0から音楽製作した初の作品が『OASYS』です。アルバムタイトルの『OASYS』とは、このミニアルバムでフィーチャーされているシンセサイザーの機種名です。権利問題等の障害により、0からトラックを作ることを余儀なくされたKREVAの再スタートの第一歩目という立ち位置の作品です。知らない人もいると思いますしとりあえず聴いてみましょう。レッツゴー!!

 一番語りたいのは歌詞ですが、サウンド面に目を向けましょう。この記事を読んでくれている優しい人たちの中には、DTMなどの作曲活動を行っている人もいるでしょう。そんなあなた方の中にはこう思った人もいるかもしれません、「このトラック俺にも作れんじゃね?」と。おそらくその感覚は正しいと思います。おそらく巷にあるDTMソフトであっさり再現できるくらいこの楽曲のトラックはシンプル・簡素です。(私は作曲をやってないので的外れだったら教えてください、叱ってくださいお願いします🙇‍♂️) 

 インタビューで本人が語る通り、サンプリングの道を離れ、0から曲を作っていくにあたって、まだ手法や可能性を探っている途中、いわば発展途上にあるサウンドなんですよね。ソースが見つかったので本人のインタビューを引用してみます。

「『心臓』以降は、トラックの手法としてサンプリングじゃないなとは思っていて。『心臓』でそれまでずっと取っておいたサンプリングのネタを一気に放出したというのもあるんですけど、だんだんシンセの“鳴らし方”がわかってきて、これまでより踏み込んで向き合えるようになった。最近のシンセはかなり親切にできていて、俺みたいに楽器ができない人にも優しい機能性に富んでいるんですよ。ただ、その機能を有効活用するのが意外と難しくて。たとえばボタンを押すと自動で料理をつくれる機能があったとして、それがジャストフィットで“自分の味”になるかといったら微妙なところで。でも、ここをこうすれば醤油の量を変えられるみたいな、自分好みのコントロールができるようになってきたんです。あと、あらためて自分に備わっている能力で大きいと思ったのは、コードを追っていけば自然とメロディが聴こえてくることで。いままではサンプリングから導かれることが多かったんですけど、最近は自分でシンセを弾くことで浮かんだメロディに肉づけすることができる。サンプリングというコラージュで描いてきた絵を自分の手で描いてみるのもいいかな、という感じですね」
KREVA - 音楽ナタリー 特集・インタビュー
https://natalie.mu/music/pp/kreva

 というわけでまさに、シンセサイザーという新たな武器を手にしたKREVAの、生まれ変わり後の処女作といった感じですね。ただ、単なる初心者と異なるのは、彼はそもそも伝説のHIPHOPグループ"KICK THE CAN CREW"のキーマンであった上、ソロでも『心臓』というマスターピースを生み出した上での再スタートな点です。RPGゲームで魔王をやっつけた後の2周目の冒険、"つよくてニューゲーム"みたいなものかも知れません。

 といいつつ、そもそも論として知ってほしいのは、HIP-HOP系のミュージシャンって一般的にはラッパーとトラックメーカーが分業制であるということです。音楽的素養のあるトラックメーカーが作ったトラックに、世界に物申したいこと、吐露したいこと、劇的な人生感を抱えたラッパー(MC)がラップを乗せて曲が完成するのが一般的です。

 そもそも一人でラッパーとトラックメーカーを兼ねているのがどうかしてるんですよ。それでいて最大の武器であったサンプリングを封印して、キャリア14年目にして初心者としてリセット"0から学び始める"ことができる"ストイックさ"って尊敬できるというより、言わせてもらうと、もはや狂気に感じちゃうんですよね。個人的に。

 さて、怖い話をした後で、歌詞の話に移りましょう。この『かも』の歌詞って高い理想を持ちながら、行動に移すことができずに燻ってるタイプの人々には、クリティカルヒット、ナイフが心臓に根元までブッ刺さる内容なんですよね。冒頭の歌詞もキツいですが、超強力な一節を引用します。ちょっと長いですが重要です。

結局は流れに任せてるけど
心では斜めに構えてる それで
「頑張ってるヤツはださい」って思ってる
「自分には全然関係がない」って
「ホントもうこれ以上いらない
適当に過ごせりゃ何も変わらなくていいよ
でもホントの俺はこんなもんじゃない」って
あぁ 今がホントの自分なのにね
『かも』作詞:KREVA

 やめてくれーーーーーーーーーーーーーーー😭
あたいの思春期を勝手に除くな💢ていうかどこに監視カメラを付けてやがった!?!?!?!?

 ということで、しょーもない冷笑系のスタンスで貴重な青春時代を終えてしまった愚かな人々には即死レベルのダメージが襲い掛かる歌詞となっています。

 前回の記事で紹介した通り、KREVAの歌詞って原則、表現が直接的なのが特徴で、詩的な表現はほぼありません。この手の歌詞って、"耳触りの良さ"や”華やかさ”を犠牲にしているものの、その分誰よりも早く芯に迫ります。すなわち、超高速で心の患部に無慈悲な豪速球がブチ込まれるのです😨

 こんなこと言われたって今更どうしたらええねん😖 もう多感な10代なんかとっくに過ぎちゃったわ💢 背中を押すならもっと早く言ってくれよ!辛すぎる!助けて!!😭

 なんて絶望する私みたいな人も多いと思いますが、KREVAは"突き放す"のではなく"手を差し伸べる"アーティストです。後半でこんなメッセージをリスナーに送ります。

全員が全員じゃなくていい 一人でも
今を受け入れて 明日に飛び出ろ
君は誰かの指示を待っているけど
未来は君を待ってるよ
『かも』作詞:KREVA

 最後の最後にこんなに優しくて暖かくなるなんてズルいわ、、、😢

 ライブ版も胸に響きますよホントに。この動画だと三浦大知(!?)とSONOMIとコラボしています。また、演奏も生バンドです。
(転載動画なので気に入ったら音源やDVDを買ってアーティストを応援しましょう。)

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