普段は年季の入ったユーザー様へ向けて記事を書いているが（喧嘩を売ってます）、たまには若者に向けて言葉を綴る。

　迷って仕事を始めた君よ。もし君が一般的な、優等生ルートを辿ったならば、今頃入社から３日目であろうか。

　とりあえず入社５年を突破したちょい先輩から所感を送ろう。誰も読まないかもしれないが、問答無用。

　かくいう私も入社直後の研修での項目の一つ「退職規定」の話に心を躍らせたものだ。唯一ワクワクしたのがそこかもしれない。

　学校と違って明確な出口が設定されていないから、引退かそれからしか光が差し込んでこないように錯覚したものだ。今でも思い出す（対して年数たってないけどね）。

　このタイトルに釣られて読んでくれた君がどんな仕事に就いたのかは知らないが、このタイトルに興味を持ったということは、まずキラキラしていないだろう。憧れた場所でもないはずだ。一般的な小規模の中小企業と想定する。

　なんだろう、すごいウェットだよね。

　“マニュアルなんかでは伝わらない温かみがある”的な感じ、見て覚えろ的な感じ、率先してできることを探せ的な感じがするはずだ。

　とても湿度が高い。

　こういった湿度を感じると、私はとあるコントを思い出す。それは（おそらく）２０年前ほどのネタ番組で、たしか芸人の”ほっしゃん”が披露した1人コントだったと思う。概要はこうだ。

　舞台に設置された一対のテーブルと椅子、テーブルの上には箱入りのティッシュペーパーが置かれている。コントが始まり現れるほっしゃん、おもむろにティッシュを引き出し口に詰め込む。そしてティッシュが充分に湿ったことを確認し、広げて卓上に並べる。それを何度か繰り返し一言。「え、何をしているかって？　ウェットティッシュを作ってんだよ」「こうして口に詰め込むとウェッ🤮ってなるだろ？　だからウェットティッシュってんだ」

　みたいな出だしだった。当時の私はめちゃくちゃ笑ったが、今思えば最悪だ。クソキモい。

　だが、このニュアンスはずっと頭に残っている。ウェッ🤮ってなるからウェットなんだ。ウェットはwetのカタカナ表記ではない。嗚咽の擬音だ。もちろん間に受けてはいけないが。

　（あえて主語をデカく使うと）日本社会はめちゃくちゃウェットだ。難しくいえば「ハイコンテクスト文化」なんて呼ぶのだろうが、連帯感が良くも悪くもクソ強い。総連れション軍団だ。

　例えば「経営者目線を持て」みたいなのはみなこのクソウェットの親戚だ。私にとってはクソ気持ちが悪い。こんなもん、字面がかっこいいだけで要するに中身は「操作されやすい人間を目指せ」ってことだ。

　「雇う側の都合を察せ」「言われる前に気付け」とね。それならば野党やら野盗にでもなった方が組織としてはまだ健全だと思う。別の意見がうまれるのだから。1番偉い人のやりたそうなことを勝手に先読みしてやっちゃう2番手3番手の有害さと比べたら圧倒的にマシだ。1番偉い人にツッコんで邪魔しないのであれば極論ソイツはいる意味がない。

　“意思決定の効率化”は万能ではない。万能感があるだけだ。人は少し処理が早くなると”進化した感”を錯覚するだけ。それなら「通路は小走りで移動しましょう」ってルールを作るのと差はない。

　あんだけ”自分らしさ”とか“好きな言葉は情熱です”とかやっておいて結局それかいとね。

　そして皆誇りを抱いて当然と思うようだ。下に抱かせたい人間の心情としては当たり前だ。時間として長くいたり、築き上げた自負のようなものがあるんだから。ただ、それは”オラが〇〇バイアス”がゴリッゴリにかかってるものであって、そう簡単に帰属意識なんて芽生えるわけないのだ。

　飲み会でビールを注がせたり、手首にバッテンを描いて拳を突き上げたところで仲間になんてなれない。絆を生むのは儀式ではない、時間だ。共同作業者からランクアップするしかないと思っている。運動会やその他もろもろはその手間を惜しんでいるにすぎない。

　だからそこで絆っぽいことをしても「私の居場所はここだったんだ！」って救われた風の振る舞いなんてしなくていい。オンリーワンなんかじゃない。居場所なんて腐るほどあるし、あなた以外の別の部品だって普通に嵌る。

　そう、僕らは特別なオンリーワンなどではない。なくて良い。

　我々はあくまで、そこらじゅうにあるサムワンとかエビワンなのだ。いてもいなくても変わらない。Everyman, Everywhere、至る所に凡人、みんなどこにでもいるような人だ。

　いてもいなくてもどうでもいい。

　だから見切りをつけてもいいし、耐えてオンリーワンを目指すのだってもちろん良いんじゃないかと思う。そうよ、迷って消去法で始めたからといって、正解じゃないなんて決まったわけじゃない。

　うまく行っちゃうこともあるだろう。いけるならいっちゃえばいいんじゃね。

　どうでもいいってことはいてもいいってことだしね。

　まあとりあえず言いたいのはね。

　最初の会社は3年は続けよう😃✊

　みたいな一般論は間に受けちゃヤーよ！！　ボヤボヤしてるうちに代わりがどんどん抜けて行ってオンリーワンもどきにされちゃうから！！

　私はこれを間に受けて５年も我慢してしまったよ。そろそろ私もどこかに行きたいのだ。いてもいなくても大したことじゃないんだから。

　おしまい