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"春の空気に虹をかけ"てよ

 今週末は忙しい予定。でも珍しく楽しみな忙しさだ。何故ならひっさびさに生で"オザケン"こと"小沢健二"を観るのだから。

 午前中は出勤なので仕事をし、昼に大急ぎでで高速バスへ乗り込む、そこから有明まで猛ダッシュの予定だ。理論上は開演少し前に着ける。仕事でだったらこんな雑なスケジュールイヤで愚痴りまくりだが今回は楽しみで仕方がない。今週よ、早く終わってくれええええ!!

 私がオザケンをどう好きなのかについては以前記事にしたことがあるので暇な子は読んでね。激推し曲の『back to back』のレビュー(のようなな何か)だ。

 "オザケン"は不思議な魅力を持つアーティストだ。「彼が売れたのは単なる時代のおかげだ」なんて評価もある。確かにその側面もあるのだろうがそれが全てではいはずだ。

 だって私、その世代じゃないもん。私はオザケンが一番売れてた、一世を風靡していた頃を知らない。王子様時代にはまだ物心がついていない。なんなら一番聴いてないアルバムが『LIFE』だ。そんな人間にもブッ刺さる何かがオザケンの音楽にはある。

 私はこれまで2度オザケンのライブに参加したことがあるが、そのどちらも多幸感に溢れた素晴らしい公演だった。(オザケンを評価する時は何故かやたら"多幸感"というワードが使われる)

 男性歌手の中で歌唱力が特別高いわけでもない。作曲についても引用が多めでオリジナリティが高いわけでもない。(歌い方が独特なので個性的だけどね、素晴らしきヘタウマ感)だけど惹きつけられる、夢中になってしまう、やたら高額なチケットを血眼になって狙ってしまう。

 今回参加するライブチケットも奇跡的にゲットしたものだ。この公演は元々は2019年下半期のアルバム『So kakkoii 宇宙』のアルバムツアーで2020年の同日(6/25、26)に予定されていたものだ。リードトラックの『彗星』でも"そして時は2020"なんて歌っている。

 このアルバムがとても素晴らしかったので、私はライブの開催情報をキャッチしてからすぐにチケット抽選に申し込んだ。まぁしかし当たらない当たらない。公式先行でも各プレイガイド先行でも全然取れないし、一般販売でも全然取れなかった。家族もファンだったので同様に申し込んでいたが誰も取れなかった。悔しい気分のまま公開日を迎えるはずだったが事件が起こった。

 皆様もご存じコ口ナ禍だ。この大騒乱は当選者も落選者も関係なく巻き込まれ、公演自体が中止となってしまった。しかしオザケン(そして運営)はライブを白紙に戻すのではなく延期とし、1年後の同日(2021年)に同座席でチケットを使えるように動いたのであった。しかし、ご存知の通り翌年も収まることはなく公演は流れ、2022年の今年にようやくの開催となったのだ。

 まだコ口ナ禍が完全に収束したわけではないが、2年の時を経てこういった状況下において安全にイベントを実施するノウハウが蓄積されてきたということだろう。

 で、なぜチケットが手に入ったのかというと偶然だ。一般の先着発売の開始時間に張り込んでいたら、イープラスとぴあで売り切れていたがローチケで取れた、それだけだ。2年前と同じ生活をしている人間なんて稀だ、おそらく過去に当選したが行けなくなってしまった人の分の席なのだろう。こればっかりは仕方がない。そんな無念な誰かの分も私はじっくりと味わいたい。

 何の曲を演るのかなぁ?もうツアーの終盤も終盤なのでネットでネタバレを見れば一発ではあるが、どんなセットリストを組んできたのかワクワクしている。私が行ったことのある公演『魔法的』『春の空気に虹をかけ』ではどちらも一曲目から素晴らしかった。

 『魔法的』ではソロの1stアルバムの一曲目こと『昨日と今日』から始まった。演奏が始まってもメンバーの姿をなかなか見せない"焦らし"のライティング演出がニクくてたまらなかった。

 『春の空気に虹をかけ』では一発目から当時の最新作であった『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』が披露され、しかも(良くも悪くも)強烈なポエトリーラップを冒頭にブチ込んでくる大胆なスタートだった。

 私は音源で聴いた印象から、この部分はネタ要素としか思っていなかったが、ライブの終演後には大好きになっていた。なんかクセになるし、

電話がかかってくる
それはとてもとても長い夜 
声にせずに歌う歌詞が振動する
僕は全身全霊で歌い続ける
『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』小沢健二

の部分にグッとくる。

 そしてさらに震えたのが"レツゲロンボー!!"と叫び声を聴いた時だ。

 「マジかよ!!"ある光"じゃん!?!?」小沢健二のターニングポイント。"この線路"から降りる曲。コレを生演奏、生歌唱で体感する日が来るとは思っていなかったので思わず目頭が熱くなった。サビの終わり際のコードがカッコ良すぎるんだ。

強烈な音楽がかかり 生の意味を知るような時
誘惑は香水のように
摩天楼の雪を溶かす力のように強く

僕の心は震え 熱情がはねっかえる
神様はいると思った
僕のアーバン・ブルースへの貢献
『ある光』小沢健二

 私がオザケンを知ったのはそもそもメジャーシーンから去った後で(うさぎ!を不定期連載していたものの)もう表立って音楽活動をすることはないと思っていたので、まさかこれを生で聴けるとはねえ。今思い出しても震えるぜ。(2012年のライブも逃していたので完全にもう無いと思っていたのよ。)

 いやあ、どんな構成で来るんだろう。楽しみで仕方がない。まぁ今この時にできることは週末まで生き延びることを決意するくらいなんだ。


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