年次のGDP速報を受けて2022年と2023年のGDPを比較する

 去る2月15日に、2023年の年次GDPの速報値が発表されました。そこで、今回は2023年のGDPと前年の2022年のGDPを名目・実質のそれぞれで比較して、コメントを述べたいと思います。まずは名目GDPの方から。

名目GDP比較
国内総生産 +31.77兆円(+5.68%)
民間最終消費支出 +11.39兆円(+3.66%)
民間企業設備 +4.34兆円(+4.59%)
政府最終消費支出 +3.01兆円(+2.50%)
公的固定資本形成 +1.70兆円(+5.89%)
財貨・サービス 純輸出 +11.78兆円
輸出 +8.08兆円(+6.71%)
輸入 -3,69兆円(-2.61%)

 ということで、昨年は物価高の影響もあり、実に名目5.68%、金額にして30兆円超の経済成長を果たしていました。名目GDPは591.4兆円まで増えています。物価高の影響があるとは言え、名目値でこれだけ経済成長したこと自体は良かったかとは思います。
 内訳を見ると、民間最終消費支出が3.66%増の+11.39兆円と、物価高の影響もありますが、一応個人消費が322.4兆円まで大幅には増えています。民間企業設備投資も、4.59%増の+4.34兆円と、設備投資も98.9兆円まで増えています。政府支出に関しては、政府最終消費支出は2.50%増の+3.01兆円とそこまで増えてはいませんが、公的固定資本形成が5.89%増の1.70兆円と名目GDPの伸び率とほぼ同じだけ増加しています。
 そして、最も主要な増加分となったのは純輸出で+11.78兆円もの増加となっています。輸出と輸入の内訳を見ると、輸出が6.71%増の+8.08兆円と特に伸び率が顕著です。逆に輸入は2.61%減の-3.69兆円と輸入物価の影響も一段落して、マイナスとなっていました。

 続いて、物価上昇分を除いた、実質GDPに関しても見ていきましょう。

実質GDP比較
国内総生産 +10.34兆円(+1.89%)
民間最終消費支出 +1.93兆円(+0.65%)
民間企業設備 +1.13兆円(+1.28%)
政府最終消費支出 +1.04兆円(+0.88%)
公的固定資本形成 +0.72兆円(+2.80%)
財貨・サービス 純輸出 +4.75兆円
輸出 +3.29兆円(+3.04%)
輸入 -1.45兆円(-1.33%)

 名目GDPが大幅に増加したのは物価高の影響が大きいですが、一応、実質GDPもプラス成長とはなっていました。実質GDPは1.89%増の+10.34兆円で、558.7兆円となっています。実質GDPでも過去最高を更新となりました。
 民間最終消費支出は0.65%増の+1.93兆円で297.7兆円です。こちらは消費税5%時代の10年前の2013年の303.4兆円にはまだ届いていません。消費税増税の影響で未だに個人消費は10年前の水準には戻り切っていないことが分かります。民間企業設備は1.28%増の+1.13兆円で89.7兆円です。こちらもコロナ前の2018年の91.5兆円までは戻り切っていない状況となっています。
 政府支出に関しては、政府最終消費支出が0.88%増の+1.04兆円で119.9兆円です。こちらは過去最高の数値となっていますが、実質GDPの成長率ほどは、政府最終消費支出は伸びていない模様です。公的固定資本形成は2.80%増の+0.72兆円で26.5兆円となっています。こちらは過去30年間で最低水準だった2022年よりは増加していますが、過去最高値の1996年の49.5兆円と比較すると23兆円もの大幅な減少となっています。27年前には今よりも倍近くも公共事業をやっていたことになります。
 純輸出に関しては、実質値でも+4.75兆円の増加となっており、実質GDP増加の半分近くは純輸出の増加によるものと言えます。内訳は、輸出が3.04%増の+3.29兆円で、輸入は1.33%減の-1.45兆円となっています。

 総評としては物価高の影響で名目GDPが30兆円以上も増えたこと自体は良いことで、実質GDPも10兆円超増えていますが、その半分は純輸出の増加によるものであり、インバウンドなどによる輸出頼みの経済状況であることは否めません。
 対して、内需に関してはまだまだ5年前のコロナ前の水準や、10年前の消費税増税前の水準には届いておらず、依然厳しい状況にあると言えます。政府支出に関しては、昨年は公的固定資本形成こそ増えていますが、政府最終消費支出の伸びが鈍く、社会保障費の抑制などが経済成長に悪影響を及ぼしています。
 こうした状況からも、日本国政府が取るべき経済政策は内需拡大にあると言えますが、岸田文雄政権は、今までの自民党政権と変わらず、今後も内需よりも外需頼みの経済政策運営が続きそうです。日本国民が経済成長を肌で実感出来る日が来ることは、まだまだ先となりそうです。
 以上、2023年の年次GDP速報に対する解説記事でした。記事をご覧頂き、ありがとうございました。

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