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日本のディストピア化を食い止めるには。

安い国ニッポン。

 悪い円安が表出し始めている昨今、外国から見た日本のあらゆるものの値段は、米ファンドが東芝買収を検討する程度に安くなっている。それとは反対に、円安と原油高が重なることで、国内の物価は上がるが、企業の利益が増えている訳ではないため賃金は上がらない。むしろ増加する社会保障費や年金保険料によって手取りは下がっていて、完全なるスタグフレーションである。

 そんな、一般の会社員でも今を生きるのに精一杯な日本社会において、これから社会に出たり、社会に出て間もない若い世代が将来に希望を持つのは無理があるし、そうした要因が少子化や晩婚化に影響していると考えるのが妥当である。

若者の貧困。

 私たちZ世代に留まらず、Y(ミレニアル)世代も、生まれてから一度として好景気だったことがなく、不景気故に企業も採用が慎重になり高学歴社会に突入。研究機関である大学は職業訓練校と化し、本来なら大学に行く必要のない者まで大学に通い、高い学費を支払って人生の夏休みを謳歌しているのが現状である。

 それに、大卒者のおよそ半数は奨学金という名の借金を、平均で277万円背負った状態で社会に出ている。その影響もあってか、ここ数年の金融庁の統計で、20代単身世帯貯蓄額の中央値は10万円に満たない。

 つまり、20代の半数以上が貯蓄ゼロで、心身を壊すなどでいつも通りの仕事が出来なくなった瞬間に支払いが滞るリスクを抱えていて、実際に貸与型奨学金利用者の9%は延滞している。こんな状態で長期的なことなど考えられずはずもない。

 ここまで散々暗い話題を出しているが、これらは、大学を出て、正規雇用で働いている状態と言う暗黙の前提条件がある。つまり、世間一般が考える最良の条件を整えたところで、20代の半数以上が貯蓄ゼロから抜け出せず、9%は奨学金の返済を滞納しているのが恐ろしいところである。

 日本国民の約半数は大学を卒業していないし、3割以上は非正規雇用である。雇用に関しては、アルバイトや女性が出産を機にパートに移るなどの理由もあるため、一概には言えないが、正規雇用に就けず不本意ながら非正規で働いている人もゼロではない。

 大卒、正規雇用の若者ですら半数がその日暮らしの生活をしているのに、それより就業における待遇が悪い非大卒、非正規雇用の若者がまともな生計を立てられる理由が見当たらない。

臭いものに蓋をする。

 そんな、これからの日本の未来を担う若者は、世代別人口で見るとマイノリティである。選挙で束になったところで、マジョリティである高齢者層には勝てないのは人口ピラミッドを見れば明らかで、現に日本女性の半数は50歳以上である。

 50歳を過ぎた人が、関心を持つのは年金が減らないか、社会保障が十分に受けられるかが主で、少子化対策や子育て支援は既に子供が巣立っていて関係ないため、そこに予算を割かれる位なら、年金や医療に充てて欲しいのが本音だと思われる。

 そうして高齢者ばかりが優遇されるシルバー民主主義が形成され、納税する割に政策支援を受けられない若者は、選挙離れなどの自己責任論をマスメディアで展開される始末である。

 そうして1970年代から懸念されていた少子化問題に対して、政府は何の対策を講ずることなく現在に至り、社会に絶望した若者は生き地獄よりも死を選び、自殺率が主要先進国でトップとなっている。

 これだけでも相当深刻だと思うが、最近では、仕事、社会的信用などの失うものがないことから、不寛容な社会に対して報復しようと、テロリズムに走り他人を絶望させてから死ぬことを選ぶ「無敵の人」が事件を起こすようになってきているし、これから更に増えると言うのが個人的見解である。

 なぜなら2040年頃には高齢者数がピークに達し、若者の3倍以上のシニアが世の中に溢れかえると予想される中で、現役世代は払い損となることが分かりきっている高い年金保険料や社会保険料を、源泉徴収によって強制的に搾り取られて、自分の生活が苦しい状況下で、高齢者を敬えるとは到底思えない。

 年金受給者も年金を納めてきたのは事実だが、〜1951年生まれは世代会計で得をしている。〜1981年生まれも1,000〜2,000万円程損するが、82年以降に生まれるY世代以降は5,000万円以上損をすると試算されているのを考えると可愛く思える数字である。

 今までは臭いものに蓋をする如く、社会もマスメディアも異端を排除してきたが、若者のガス抜きを怠り溜め続けていると、いつか恨みつらみが爆発した無敵の人が事件を起こし、ディストピア化していくのである。そうならないためにも、長期目線で日本のためになることを一人ひとりが心がけることが重要ではないだろうか。

日本の未来を考えた行動を。

 まず言えるのは、異端を排除しない風土の構築だと思う。これはコミュニケーションなのでコストが一切必要とせず、個人の心がけで実現できる問題である。

 SDGs17の目標に掲げられたことから、多様性を受け入れることを経営目標に設定した企業は多いが、日本でのマジョリティであるX世代以前の層ほど既存の価値観とは違うものに抵抗を示す割合が高いように感じるし、そうして世代間の分断が起きるのだと思う。

 若い世代ほど文化や伝統には囚われず、なおかつ異文化に対する先入観や偏見もなく何事にもフラットなポジションでいる印象がある。生まれつきインターネットが身近な環境で育っているため、多様性を受け入れる慣習が根付いていて、良いと思うものは積極的に取り入れている。

 もうひとつは、お金を海外に流出させずに国内で循環させることである。例えばVISAやMastercardを利用すると、加盟店が支払っている手数料は米国企業の利益となるが、JCBであれば日本企業の利益となる。通販はAmazonよりもYodobashi.com、サブスクはNetflixよりdTVなど、小さくても工夫する余地はある。

 長い目で見て、日本企業の利益となれば、事業規模が拡大して、雇用が増えたり、ボーナスが増額したりする。法人税や所得税、年金や社会保険料の納付額が増えれば、公共施設が便利になったり、家計の負担が減ったりと、国民にもメリットがあるが、外国企業にお金を支払っても、対価となるサービス以外での恩恵を受けられることはない。

 これを読んで、少しでも意識が変わる方が増えれば、次の世代により良い形で日本を残せるのではないかと考える今日この頃である。


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