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税収過去最高!→サラリーマン税制改悪?


「みなし経費」が相当手厚い仕組み?

 将来の税制のあり方が決まると言っても過言ではない政府税制調査会で、税収が過去最高にも関わらず、防衛、少子化の歳出増でサラリーマン税制である給与所得控除や、退職所得控除を見直す、事実上の国策によるサラリーマン冷遇を示唆する内容となった。

 税収確保の槍玉に挙げられたのが少子化・防衛費の歳出増だが、少子化対策の予算が2023年予算で5兆円規模、防衛費は強化資金繰入を足しても10兆円規模と、一般会計と特別会計の純計であるおよそ270兆円からすれば、たったの5〜6%に過ぎず、歳出全体で見れば、増加したところで大した割合ではない。

 それにも関わらず、これまでのサラリーマン税制の優遇を、一般的に手薄と言われているフリーランスなどの、正規雇用ではない者の働き方に合わせる形で改悪することを検討している段階である。

 検討しているが恐らく給与所得控除も、退職所得控除と同じく、徐々に改悪されていくだろう。現に2020年に給与所得控除が10万円減らされ、その分が基礎控除に振り分けられた。

 よく103万円の壁が話題となるが、これは基礎控除+給与所得控除の上限が103万円で、ここまでは税法上の課税所得がゼロに納まる=非課税の限界ラインである。

 この枠組みが2019年まで38+65=103だったものが、2020年から48+55=103と振り返られた。

 別に何ら変更がないのは、給与所得控除を受けられる賃金労働者の立場に限った話で、雇用契約を結ぶ形で報酬を受け取っていないフリーランスや、UberEatsなどの個人事業主には給与所得控除は使えず、基礎控除の48万円のみとなる。

 そこだけ強調すると、所得に応じて55〜195万円が給与所得控除として差し引かれるのは手厚く感じるかも知れないが、これは確定申告を行わないサラリーマンの「みなし経費」以外の何者でもなく、勝手に手厚いと言われて経費を削減される余計なお世話感が強い。

税務署に所得が筒抜けなサラリーマン。

 税金のリテラシーがある人は、クロヨンもしくはトーゴーサンピンの言葉を聞いたことがあるだろう。職業別で税務署が所得を捕捉している割合である。

 クロヨンの場合、サラリーマンは9割、自営業者が6割、一次産業従事者は4割と言われている。サラリーマンの感覚でいると、源泉徴収票で年収が確定するのだから、ほぼほぼ10割捕捉できて当然と思いがちだが、サラリーマン以外は「経費」が存在する。

 例えばこのnoteひとつとっても、1円でも収益が得られれば、著述業と捉えられる。個人事業主として開業届を出すことで、例えば著述業に必要なパソコンは経費処理できるため、仮に収入が300万円、経費がパソコン代で10万円だとすると、290万円に対して税金が課される。

 一方、サラリーマンであれば同じ300万円でも、2割くらいが税金と社会保険料で天引きされた、手取り240万円の中から、パソコン代の10万円を支払わなければならない。上手く経費処理できると、同じ買い物でも手元に残るお金は個人事業主の方が多くなり、結果として税務署は所得の6割しか捕捉していない構図となる。

 更に農業、林業、漁業と一次産業従事者となれば、そもそも収穫した作物を売らずに、自分で消費したり、お裾分けした見返りで違う作物を手に入れたものは、所得として計上しようがない上に、経費処理できるため、表向きの収入は少なく見えても、手元に残るお金は同じ収入のサラリーマンの比ではない。

 それくらいサラリーマンは筒抜けなのである。税法という制約はあるとはいえ、画一的にみなし経費で給与所得控除をされるよりも、事業で必要なものに支払った対価を計上する経費処理の方が、自由度が高く個人的には魅力的に映る。

サラリーマンの実費経費、殆どないは嘘。

 とはいえクロヨンのWikiには、会社で必要な備品などは会社の経費で出るため、実態としてはスーツ代や交際費以外の支出はなく、給与所得控除額ほどサラリーマンとしてのコストとして、充てられていない点を指摘されているが、個人的にはいささか懐疑的である。

 給与所得控除は所得の多寡に応じて55〜195万円で設定されおり、冒頭の政府税制調査会で指摘されているように、ざっくり年収の3割くらいになるため、中央値の360万円で考えると毎月9万円がみなし経費となる。

 確かにサラリーマンでなければ買う必要がない、スーツや革靴に毎月9万円も支払っていない。この事実だけを切り取れば、実費経費は殆どないとも捉えられる。

 しかし、出勤して束の間のお昼休憩で、毎日コンビニに寄っていないだろうか。退勤後も頑張った自分へのご褒美で、コンビニで酒、タバコ、スイーツなどを買っていないだろうか。出勤日に2回使うとして、平均客単価が700円の2掛け、出勤日が21日と仮定すると月額3万円コース。

 飲み代もコロナ禍はゼロだったが、以前の感覚では社会不適合者で大して誘われない私ですら、月1回ペースだったのだから、業種にもよるが長いものに巻かれるイエスマンだと毎週末は堅いだろう。

 イエスマンだと1次会でしれっとバイバイキンできるわけもないため、2次会、3次会となれば、確実に毎週5,000円は消えていく。これだけで月額2万円コース。この2点だけで、サラリーマンをすることで発生する、5万円位のランニングコストが見込まれる。

 身なりもそれなりに整える必要があるだろうし、具合が悪くても休めないと、市販薬で週末まで騙し騙し乗り切り、悪化した状態で医者の世話になる。薬代も医療費もバカにならない。

 休みで出掛ければ同調圧力でお土産を買うだろう。お世話になった人への慶弔費やら、謎のイベント参加費用といった変則的な特別な支出まで踏まえたら、真っ当な社会人ほど、給与所得時控除と同等の実費は支払っている気がする。

 そこから税金や社会保険料を徴収された、可処分所得(手取り)で自分の好きなものを買う。それも日頃のストレス発散目的で、大して欲しくもないものを衝動的に買っている場合だってある。これも社畜のストレスがなければ衝動買いに至らず、吟味したら払う必要がないものかも知れない。

 真っ当なサラリーマンほど、金食い虫になる構造上、実費経費が殆どないは嘘である。そんな中で控除が改悪されようものなら、もはや国策でサラリーマンなんてやるものではない。と暗に示しているようである。

 社会の枠組みから外れた者としては、私に時代が追い付く日を夢見ながら、賃金労働しない日々を謳歌している。


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