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オリンピック男子マラソン

大迫傑選手を初めて見たのは、2008年の都大路のアンカーだっただろう。高校2年生だった彼は自らアンカーを志願し、当時の日本人のみでの最高記録をマークした佐久長聖高校の一員として優勝のゴールテープを切った。その後、早稲田大学に進学し、最初の箱根駅伝で1区を走り、集団から抜け出して見事に区間賞を獲得。大迫選手の活躍もあり、その大会で早稲田は久しぶりの総合優勝を遂げる(ちなみに2位東洋大学との差は僅か21秒。今も残る史上最少差である)。大学在学中から海外に渡るなど、その当時から他の選手とは全く違う手法で、世界に挑もうとしていた。

大学卒業後に日清食品グループに入社するが、1年で退社し、ナイキ・オレゴン・プロジェクトに所属する。ファラー、ゲーレンラップら、世界の猛者たちがしのぎを削る場所にアジア人として初めて足を踏み入れたのだ。2017年にマラソンに初挑戦して以降、日本のマラソン界の閉塞感に間違いなく風穴を開ける存在であり続けた。そんな大迫選手が、今日の東京オリンピックを最後に第一線からは退くという知らせが数日前にTwitterに示され、話題になった。

今日のレースを見ていて、このレースに掛ける意気込みが物凄く伝わってきた。思えばMGCの時は、どこか落ち着かない様子で、様々な位置にポジション取りをしてしまい、それで体力を使ってしまった。その影響もあり、ラスト勝負では、今日一緒に出場した中村選手、服部選手に先着を許す形となった。しかし、今日のレースではそんな様子とは正反対だった。先頭が見える位置に陣取り、全く動かない。昨日の一山選手もそうだったが、すごくいい位置でレースを進めていた。

キプチョゲ選手はさすがに速かった。一人だけ次元が違った。途中、大迫選手は引き離されて8位まで落ちたが、そこから落ちてくる選手を拾っていった。これも、昨年の東京マラソンで行ったレース展開と全く同じだった。引き離されても無理に付いていこうとせず、ギリギリのところで持ちこたえ後半に巻き返す。MGCも東京マラソンも、過去に走ったレースが彼の財産となって、今日に受け継がれていった証拠だった。

2位集団までは、さすがに追いつかなかった。それでも一時は15秒差まで迫り、「もう少しだ!」と見ている人を楽しませてくれる展開を作った。結果は6位入賞、それだけでも立派な成績だが、こうしたレース展開は結果以上の何かを視聴者にもたらしたのではないかと思う。そういえば、今日はゲーレンラップ選手も走っていたが、大迫選手はラップ選手に先着した。トラックの記録では全く歯が立たなかったが、マラソンでは見事に上回ったのだ。

中村選手も服部選手も、自分の力を出し切れなかったことが残念だった。結果はどうであれ、二人が万全な状態ならもっとやれたはず…。そう思ったのは自分だけではないだろう。なにせ、3人とも箱根で、MGCで圧倒的な強さを見せたのだ。今日は大迫選手の日だったかもしれないが、二人が強いランナーであることは疑いようがない。最後まで、本当によく走り切ったなと思う。

今日が終われば、次のパリ五輪のことを考えてしまいがちだが、今日のレースはすごく色んなことを考えさせてくれる。この大会に臨むにあたり、どんな準備をどれだけ行ってきたのか。そういった部分をしっかり検証することも、次を考える前に必要なことだと思う。それにしても、オリンピックの重圧感に加え、こんな暑い中で42.195kmを完走したランナーたちは本当に凄い。最終日にとてもいいものを見せてもらった、そんな気持ちである。

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