れとろ

”好きなときに、好きなものを、好きなだけ” 演劇好きの文字書き。http://happ…

れとろ

”好きなときに、好きなものを、好きなだけ” 演劇好きの文字書き。http://happy-smile30.wix.com/kuusouya

マガジン

  • 100dai

    「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦しております。

  • 演じていただきました。

    れとろの文章を音声化していただいたもの。 たからものいれ。

  • 「モノカキ空想のおと」れとろ

    「モノカキ空想のおと」企画でつくったもの。 みなさんの作品はこちらから。 https://note.mu/monokaki

  • 台本

    声劇放送などでお使いいただけます。 (著作明記とURLの貼りつけお願いしています) こちらでも配布中。 「はりこのトラの穴」 http://haritora.net/script.cgi?writer=6271

  • 「時の貴婦人」 「特別列車の案内人」 コラボ企画

    みそらさん(https://note.mu/misora_umitosora) とのコラボで完成した台本とボイスドラマ。

最近の記事

86.芝居犬

よってらっしゃい みてらっしゃい 今宵皆様にお目にいれまするは 世にも奇妙なからくり舞台 夢と現の境も曖昧に 涙も笑いも歓喜も絶望も 皆さまそれぞれが心の奥底で 真に望み欲している情景を この身体を憑代(よりしろ)に 描き出してご覧にいれましょう 何の因果か 皆様は今宵この芝居小屋に住む魔物に 目をつけられ誘われた 哀れなお客さま そしてあたくしは この芝居小屋に住む魔物と契約し 魂を売っちまった 哀れな役者、"芝居犬"でございます この首輪は服従の証 そう 魔物はい

    • 85.年の瀬の小さな魔法

      あ、ほら 今年最後の太陽が海に落っこちた 今年もお疲れさまでした ねぇ、どうだった? わたしは、まぁまぁだったかな 出会いも別れも 幸せも痛みも、色々あったけど 年齢を重ねる度にね 色々なものが削がれていって 渦中にいると悩むこともあるけれど わたしはもっとわたしらしくていいんだって 自分の幼くて未熟な部分も 認めてあげようって思えるようになったんだ 明るく光る太陽に憧れても きっとわたしには真似事しかできないし さみしがりなくせして、人と繋がるのも苦手だけど それで

      • 84.ねぇ、もしもこの電車の行く先が世界の終焉だとしたら

        ねぇ、もしも この電車の行き先が世界の終焉だとしたら それでもあなた、わたしと一緒に 行ってくれる? 気がつくと乗り合わせてた電車には どうしてか君と僕しかいなくて 君の被る麦わら帽子の影が その表情をより曖昧に 大人びたものにする。 車窓から見える景色は いつの間にか夕焼けに変わっていて 橙色が海に眩しいくらい反射していた。 この美しい景色の果てには 本当に、世界の終焉があるのではいかと そんなような気さえした。 こないだまで一緒に影踏みをして遊んでた もうひとりは、

        • 83.さようならのブルース

          久々に空いた穴が辛い ぽっかり ぽかんと  まるでブラックホールみたいに 感情が吸い込まれていく ひどく冷徹な顔をして きっとわたしは 穴あけドリルをもった愛しい人を 簡単に切り刻むんだわ さようなら あなたが空けた穴、よく見えるかしら? 一度あけてしまった穴を 同じように塞ぐことが不可能なことくらい 分からなかったのかな。 わたしたちもう子どもじゃないの。 いい歳した大人なのよ。 ごめんなさいですべてがもとに戻るほど 単純じゃないの。 さようなら 悪いけどわたし、

        86.芝居犬

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          13本
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          9本
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          3本
        • 「モノカキ空想のおと」れとろ
          14本
        • 「時の貴婦人」 「特別列車の案内人」 コラボ企画
          4本

        記事

          82.雪の日の電話は空のあなたと。

          おじいちゃんが亡くなったのは 雪の降る晩のことでした。 せっかちなおじいちゃんのことだから 49日を待たずして、おばあちゃんも連れて行ってしまった。 おばあちゃんを送り出す時に 雪を降らせたのは、おじいちゃんでしょ。 雪雲に乗って、迎えに来たのでしょ。 だから、雪の日には、 きっとおじいちゃんがこちらに来ているのだと思う。 雪雲に乗って、会いに来ているのだと思う。 大好きなおばあちゃんもきっと一緒だ。 見えていますか、聞こえていますか。 どこかで。見えないけれど側で。

          82.雪の日の電話は空のあなたと。

          81.心を燃やすもの

          燃えるような夕空と 赤く染まった紅葉 大丈夫、大丈夫だと言い聞かせ続けてきたわたしは いつしか大人になっていて あの頃、自らの身体を燃やし 願いを叶えてくれようとした流れ星の魔法さえも 信じられなくなった どうせもうどう足掻いたって無理だよ 夕空は次第に闇に溶けて 燃え尽き茶になった紅葉には雪が落ちる ちびたちびた蝋燭の火が消えてしまわぬよう 大事に守ってきたつもりだったけど ついに燃え尽きる時が来るのかもしれない けぇるぞ、けぇるぞ 死神が言う 好きな落語の一場面

          81.心を燃やすもの

          80.鬼

          へぇ、鬼退治。結構なことですね。 心配しなくとも、うちのはどれもよく切れますよ。 最近どうも流行りのようですな。 何がって、鬼退治ですよ。先日もそういったお客が見えましてね。 しかしどうもわたしは異形としての鬼を 実際この目で見たことがないもんで… お客さんは、あるんで? 退治にはいったい、どちらまで行かれるんです? 鬼は人を食らうと言いますからね どうかお気をつけて。 ところで… わたしは色んなお客を見ておりますが、 貴方様はずいぶん綺麗な手をしていらっしゃる。 鬼

          79. 屋上にて

          焼きそばパンです。 もしよろしければいかがです? え?いらない?あぁ、そう。美味しいのに。 …提案ですが、その眼鏡を外してみるのはいかがです?せっかく視力がお悪いのでしたら。 そう背を丸めてないで、ほら、ご覧なさい! いい眺めですよ〜 一面の青! この世はとかく残酷で それでいて美しい いちいち心が痛まないように それでいて自身のいびつさがまぎれるように ぼんやり。ぼんやり。 ね、それくらいが丁度いいでしょう。 そう思いませんか? ただ目の前の小説の活字が見え

          79. 屋上にて

          78.流星管理研究棟案内

          研修生の皆さん、はじめまして。 ようこそ、流星管理研究棟へ。 まずは簡単に施設を案内するから、はぐれないよう、ついて来てね。 僕達の仕事は、君らも知ってのとおり星守(ほしもり)と呼ばれている。 星の位置や数などを日々観察・記録し、宇宙の平穏や均衡を保つのが主な仕事だ。日夜、星地図(せいちず)と望遠鏡とにらめっこさ。 惑星調査隊との連絡や、宇宙嵐に関する情報発信なども担っているよ。 そして、ここが僕の研究室。 星の欠片を用いて、培養実験を行ってるんだ。 その、試験管の中

          78.流星管理研究棟案内

          77.人形師の憂鬱

          愛しのセレナーデ トパーズの瞳 ブロンドの髪 艷やかな肌 薄紅色の唇 きみは愛されるために生まれたお人形だよ どうだい?純白のドレスは気に入ってくれたかな? なぁ、セレナーデ 何か返事をしておくれよ セレナーデ… セレナーデ… あぁ、きみは、こんなにも美しいのに 魂だけが空っぽだ 一方の僕は醜くて 誰からも愛されないというのに どうして神様は僕みたいな出来損ないに 魂を与えたのだろうか 捨てるくらいなら 生み出さなきゃいいんだ いっそ壊してくれて良かったのに……

          77.人形師の憂鬱

          76. Re スタート

          駄目だ ダメだ だめだ 書きかけては、何度も消してを繰り返していた。 何時間経っても、真っ白なままのワードの画面。 つまり、何時間経っても真っ白なままのわたしの脳内。 昔は、こんなんじゃなかったのにな。 ひとつの言葉から生まれる空想の世界は、 確かに色づいていたはずなのに・・・ 過去に囚われすぎなんじゃない? 分かっている。けれど。 求められているのは、あの時の空気。雰囲気。 好かれているのは・・・ 10年。 その時間はあまりにも長い。 空想好きの少女が大人になるには

          76. Re スタート

          75. あの日の遊園地

          「まるでタイムカプセルが開いたみたいだね。」 あの時、あの日のままの姿で保存されていた遊園地への 秘密の通路が突然開いて みんなでそこを歩きながら、もう動かなくなった乗り物を眺めて回った。 みんなで、と言っても、遊園地を歩くときは1人だ。 世界から切り離されたそこには、もうみんな一緒には入れない。 戻ってから、時間の止まったその場所を焼き付けた写真を見せあって、 懐かしいね、と笑った。 チカチカ光っていた虹色の電飾も 賑やかだった音楽も、芝居小屋も、もう過去という時間の

          75. あの日の遊園地

          74.超感覚

          暗い闇にぽちゃんと落ちた 目を見開いても 一面の黒 開けてるのか開けてないのか分からない 手足を動かしても 捉えられる地面はなくて 自由は不自由に変わる 進んでるのか進んでないのか分からない もしかしたら もがいているだけかもしれない 怖いなら目を瞑ればいい 目を瞑ったって何も見えないのは同じ もがいて苦しいならならやめてみればいい それでもそこに浮かんでいる僕自身は消えない 例えば未来に進むってそのようなもので 保証なんて何一つない中を 手探りで 何かを掴んだつもりに

          74.超感覚

          73.カレンダーの破り方

          おばあちゃんの部屋には おばあちゃんのカレンダーがあった。 絵を描くのが好きなわたしに おばあちゃんはいつも、役目を終えた月のカレンダーを破いてくれた。 自由帳よりも、チラシの裏よりも ずっと大きくて上質なカレンダーの裏面は 当時のわたしにとってとても貴重なものだった。 そして、絵ができたなら、1番におばあちゃんの部屋を訪ねて見てもらう。 そして2人だけであれこれおしゃべりをするのだ。 きっかけは、おばあちゃんが書き込んだ予定の中に 自分の名前を見つけたことだった。 そ

          73.カレンダーの破り方

          72. 泥棒ポケット

          やぁ少年、先程わたしのポケットから 財布をすったね。 随分手慣れているようじゃないか、 何件かやったね。 でも、わたしに目をつけたのが運のつきだ。 中身を確かめてごらん、 お金だけすっかり消えているはずだから 財布だけは取り上げずにおこうじゃないか きみの努力に免じてね。 え?中身がどこに消えたかって? 実はわたしのこのコートは少々特殊な品でね。 このポケットに手を入れれば 欲しいものが手に入る しかし、それは すでにどこかに存在しているものをポケットに移動させて

          72. 泥棒ポケット

          71. 金木犀の香る日、引っ越し

          あちゃ、ガムテープなくなっちゃった。 しょうがない、一時休戦。休憩といたしましょ。コーヒーでも入れようか。 やっぱり湯沸しポットをしまうのは最後ね。 ふぅ… おいしい。 … "きみとこうして当たり前に隣にいられる自分を しみじみと不思議に思う" 箱に入れるたびに思うの。 あ、去年の冬、これで一緒につついた鍋、おいしかったなぁ、とか、 誕生日にもらった花、この花瓶に生けたなぁ、とか はじめは何の変哲もなかったものなのに、 いつの間にかたくさんの思い出に上塗りされてた。

          71. 金木犀の香る日、引っ越し