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童貞、卒業する(第十二話)

 1月30日。
 六本木で知り合ったサンシャイン池崎からサシ飲みに誘われた。
 相変わらず暇なので、この日は飲むことに。
 夜20:00都内某所。
 居酒屋大衆店に入り、向かいで座る。

 この男、かなりのやり手らしい。合コンの誘いやら商業話など有力な話を振ってくるが、興味なし。それに、メリットを主張して話を持ちかけてくる人と長居はしたくない。最初はただ飲むだけで良い。初回で利害を会話に持ち出す人と、仲良くなれない気がしたのだ。急いでホルモン焼きを頬張って、22:00には引き上げた。
 さて、駅前で別れ、こちらは一人駅周辺を散歩することにした。
 その途中、壁にもたれかかりながらスマホをいじる女性を見つける。酔ってる様子だった。

 近くの自販機で水を買い、さっそく渡す。
 きっかけは
僕「これ、まずは飲みなよ」
 こちらもほどよく酔ってるためか、かなり自然な流れでいけた。自分はかなりの酔拳の使い手かもしれない。
👩「ふぇ?ありがとう。うっく!」
 突然のしゃっくり。彼女は出来上がっていた。
僕「鼻つまんでのむとしゃっくり止まるぞ。」
👩「こう?ん?」
僕「下手くそw水貸してみて。こうやって息止めて飲むの。」
👩「あーなるほど。」

 水を飲んで落ち着いたようだ。
僕「先輩に飲まされたの?」
👩「うん、飲めない人だから代わりに。」
僕「職場近くなの?」
👩「今日は展示会で、その打ち上げだったの、、」

 話してる間も僕は、彼女の背中をさすりながら水をのませる。
👩「優しいね。どこかでゆっくり話そう。」
 意外にも女性からの打診がきた。そのまま近くのプロントへ行くことに。
 道中、手を出したら向こうも乗り気で手を繋いできた。そのままお店へ。店内で女性の事情を聞いた。彼氏がいるが、遠距離。見た目は20後半かと思ったが実は30を過ぎ。若く見える女性だった。
 30分くらいしっぽり飲んでいると、彼女がトイレに行きたいと席を立ち上がる。

👩「トイレどこ?」
僕「待って、危ないからそこまで連れてく」

 トイレへ案内、ドアを開けてあげる。その瞬間彼女がこちらを向いた。
 行くしかない。そのまま抱き寄せて、トイレの前でキスをした。数秒、お互い探るようなキスだったが、店員にバレるので、早々に切り上げた。
 自分は席に戻る。
 女性が戻る前に会計を済ませる。

僕「行こうか。」
👩「うん。お会計は?」
僕「終わってるからこっち来て、ほら危ない。」

 手を繋いで外へ出た。5分くらい店の外で水を飲ませる。この間にLINEの交換をした。
 ふと、彼女がこちらを見つめた時、またキスをした。もうお互いそういう雰囲気になるかと思っていたが、彼女からにんにくwwにんにく臭いwwとの指摘が入った。
 池崎とのホルモン焼きがここに来てブローをかまして来た。目の前でブレスケアをがぶ飲みした。
 そこから2人、歩き出した。しかし、ニンニクで現実に戻ったのか、女性が「帰る」と言い出した。

僕「そのまま帰すと酔って帰れなくなるから。酔い覚ましに散歩しながら遠回りしよう」
と話し、駅まで遠回りして歩いた。
散歩中、キョロキョロとあたりを見回す彼女。やはり帰りたいのか。流石に帰るか。そう思った矢先、
👩「あ、そば食べたい!」
 突如、彼女が立ち食い蕎麦屋の前で止まった。
 終電を逃すことは確定した。
 終電を逃した後、向こうが「帰れなくなった!」と不安な顔をした。こんな場面で狼狽えてもお互い不幸なので
僕「暖かいところで泊まろう。朝は僕がちゃんと起こすから、安心して。」
 何度も本当?と確認して来たが、大丈夫だよ。と安心させてあげた。

 お店の以外の女の子とキスすることも泊まることも。全てが初めてのはずだったのに。何故だか強気に行けたのはお酒のためなのか。この日、何も迷いはなかった。

 このあたりはホテルがない。泊まるとしたらレンタルルーム(ボロい個室カプセルホテルみたいなところ)。不安もあったが、取れたルームは寝る分には悪くない作りだった。
 着いた後、彼女が早々に寝巻きになり、横になった。一緒に寝ることも、彼女を抱きしめることも、嫌がることなく、彼女から飛びついてきた。
👩「このために私をここまで誘ったの??」
 黙って首を横に振った。
 全てが終わると、シャワーを浴び、目覚ましをセットして寝た。これも、初めてのことだった。お店にはない何かを感じた。興奮と冷静さが一気に来ていた。賢者タイムか。

 寝たかったが、イビキで寝れない。かなり疲れていたんだろう。
 寝れない間、隣のルームから漏れ聞こえる声を聞いていた。どうやら風俗嬢と客の会話のようだった。

男「~ちゃん何才??」
嬢「22でぇす!」
男「わかーい!いぇーい!」
嬢「いぇーい!w」


 ノリが若い。そして壁が薄い。筒抜けじゃないか。
 途切れ途切れの声を聞きながら、ボーッと天井のシミを数えていた。
 しばらくすると、ルーム外へ嬢が出て、店長らしき人に電話をかけていた。

嬢「もしもし、今終わりました~。はーい!」
 元気の良い終了報告だった。
 これを聞いた瞬間、とても感慨深い夜になった。


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