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読書の感想 「フランス料理と批評の歴史―レストランの誕生から現在まで」

感動の名著だと思います。
高級な飲食店を考える時のよすが。
わたしが高価格のコーヒー店を訪問したときの物差しです。

2010年の刊行以前、辻調さんが秋葉原にインフォメーションセンターを設置している頃、定期的にセミナーが開催されていました。山田健氏の水と生きる講座もその催しで聴講したような記憶。おそらくそれらの講座の中に、「ALL ABOUT COFFEE コーヒーのすべて (角川ソフィア文庫)」の編訳者、山内秀文先生の「近代レストランの誕生」講座も。聴講したわたしは、後々その講座の内容と「フランス料理と批評の歴史」の内容に近似したところが多いのではと感じたものです。(講座内容はネット上に記録を見つけましたので下記参照)

2010年10月25日、手に取って自分史上最速で読了しました。
最近のフランス製刑事ドラマ「アストリッドとラファエル」に登場する犯罪資料局のような「辻静雄料理教育研究所」の当時主幹であった八木尚子先生の著書です。思えば八木先生はアストリッド風な雰囲気がありました。先生の周りには確かにラファエル風のひとたちもチラホラ。
さて本の内容、大変難しいテーマですが、八木先生の自ら検証できる限り力を尽くして、その結論として断定している書き方には頭が下がります。
一文一文から須賀敦子のような彫琢力を感じます。穿った言い方ですが、若桑みどり+岡田暁生+ピエール・バイヤールかな----難しいのに読み始めると止まらないサスペンスがあります。
客観的に評価すること、それを土台として主観的に批評することの違いや大切が身に沁みます。
インターネット時代の情報をどう読むか、どう利用するか、考えされられました。
まずこの本を読んで、適切な情報の取捨選択を学び、その上でネット上の情報や、怪しげなコーヒー本の情報を判断したいものです。

著者八木先生は特段コーヒーに関心を払っていませんでしたが、当時の上司、先述の山内先生は、ホテル・レストラン史が専門でしたが、それ以上にコーヒーの専門家でした。アストリッドの後見人だった犯罪資料局のガイヤール局長と監察医フルニエ先生、上役バシェール警視正をブレンドしたような人物です。

ちょうど始まったばかりの辻静雄食文化賞に推薦したような記憶もあります。素晴らしくても身内の本と遠慮されたのではなかったかしら。



https://icic.jp/seminar/event1735/ サイトより

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