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読書の感想 好きなマンガ「雨無村役場産業課兼観光係」一度訪ねてみたい

わたしにとっては、成田美名子が風土に根差した、最初に遭遇したマンガ家です。「あいつ」は1979年。第4話は「38億分の1の偶然」でした。
留学組ともいえる大先輩が連載している中で、民族組とでもいうのかしら。
有吉京子の「スワン」を読みながら、前半と後半のバレエの描かれ方がずいぶん違うものだと驚き、友人からこれ面白いよ、と大友克洋の短編集を見せられ、その友人から吉田秋生の「カリフォルニア物語」も薦められ、吉田の楽園シリーズからカリフォルニアへの移り変わりを辿っていた頃。
マンガのコマから花や星がどんどん失われていきました。「あいつ」は独立宣言とともに「星」を求めて歩みだし、カリフォルニアでエイリアンに遭遇し、いまは風姿花伝とともにあります。
成田の「東北サーガ」を想い出しながら、壁紙の花が、雨無村の大山桜に至ったのだと----この「雨無村役場産業課兼観光係」を楽しみました。2009年ころなので「68億分の1の偶然」というしだい。

現地で原画展

時間をかけてじっくりと描いている、感じです。
40年前女流マンガがここまで来るとはとても予想もできないことでした。こうした作品を描くことが素晴らしいのか?描かせる(2009年ころの)日本は危機なのか?----こんなに真剣に考えさせられる、そんなことがマンガに必要なのか?
日本のマンガ家さんたちのレベルが高いのは承知していましたが、正直衝撃を受けました。立派な詞華集のようでもあり、インディペンデントな若い映像作家の劇映画のようでもあり、NHKのドキュメントのようにも見えます。泣いたり笑ったりしながら、横溝正史のミステリが日本的独自性が高度なのと同様に、同じ日本の鄙の地を舞台に、なんという日本的に作品なのでしょう。猪と遭遇した村のじいさん連が、山芋の話を聞かれたので植えるのをあきらめるあたり、おどろおどろしい中に、合理性が潜んでいて。次の展開が楽しみな作品。
いつか、大山桜を花の季節でなくてよい、訪問してみようと思いました。
そして、狭い海を渡ればベネッセが観光化した黄金の島があります。


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