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やさしいてをめぐる旅。 windfall LAB あかいさん

やさしいてをめぐる旅、最後の対談は
「さをり織り」という手織りでアート作品を
つくられている windfall LABさん。
あの岡本太郎さんを支えた、岡本敏子さんも
さをり織りを愛用されていたのだとか。
「布を織るのではなく自分を織る」
「キズは織り手の個性」といった
哲学を持って織る作品たちは
なぜだか心に届くものがあるんです。
著者とも親しい仲である、windfall LABの
あかいさんにお話を伺いました。

あかいみちこ

衣食住とアート。暮らしを自分の手で彩り豊かに。Love&peaceな世界を。社)風のみち代表。windfall galleryオーナー。さをり作家・講師。自給農活動。MachiCafeボスママ。
https://kazenomichi.com/gallery/


白川:
あかいさん、よろしくお願いします。
さて、何からお聴きしようかな。


あかい:
よろしくお願いします。


白川:
『やさしいて』では、
あかいさんの「さをり織り」は絶対に
一緒にコラボしたかったんです。
ぼくもさをり織りが大好きですから。


あかい:
ありがとうございます。


白川:
今回はあかいさんのwindfall LABで
作ってもらったわけですけど、
やっぱり「さをり織り」について
聞かないと始まらないですね。


あかい:
さをり織りってね、
哲学のある織物だと思ってるんです。

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白川:
創始者の城みさをさんが書かれた
「さをり4つの願い」というのがまさに。

「キカイと人間の違いを考えよう」
「思い切って冒険しよう」
「キラ…と輝く目を持とう」
「グループのみんなで学ぼう」
ですよね。


あかい:
そうです。
伝承や文化ではなく、
あくまで「表現」としての織物なので。
そういう意味では、今までにない
織物だと思うんですね。


白川:
文化とか伝統のものって、
第一に技術の継承じゃないですか。
でもさをり織りは「自分を織る」ことが
理念にも入っているくらいだから
技術の継承が第一ではないですよね。


あかい:
そうですね。
むしろ技術は、私たちも
教えられないし教えないので。
自分で見つけていく織物だしね。
師匠を持たない織りだから。


白川:
継承があるとしたら、
その理念の部分だけ。


あかい:
形のないものを受け継ぐって、
こんなにむずかしいことはないです。


白川:
城みさをさんがね、さをり織りを始めたのは、
縦糸が1本抜けていたのがきっかけじゃないですか。
当時はそれだけで傷物だと言われる時代だけど、
ただその抜けた縦糸の部分に趣きを感じて
自分には模様に見えて気に入った。
それを呉服屋に持って行ったら評価されて
高値で引き取ってもらえた…みたいな話がありますよね。


あかい:
そうそう。


白川:
それがただ単に傷がデザインに見えて
素敵な織物だなぁで終わるんじゃなく、
「商品」になるって思ったのは、おもしろいですよね。


あかい:
売れる、って思ったのがね。
アートが売れるって発想はなかなかないし。

さをり織りってなんですか?って
聞かれたとき、いつもむずかしいんですよ。
アートでもあるし、暮らしの手仕事でもあるし
洋服や美術品でもあるし…

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白川:
切り取り方で、なんにでも
化けれるんでしょうね。

ぼく、城みさをさんの本を昨日読んでいて
「傷はデザイン」ってほんとに
心から思えるだろうか?って自問自答しましたよ。
なかなか本気で思うのはむずかしいぞ、と。


あかい:
私たちもね、織った瞬間に
「あれ?ここ何か違うな」って思うんです。
自分の中で分かるんですよ。


白川:
それ、織った瞬間に思うんですか?
出来上がってからじゃなくて?


あかい:
織った瞬間に分かるんです。
ちょっと気持ち悪いんだよね。
はっきり分かるときと、なんとなく感じてるときと
もちろん両方あるんだけど。
でね、さをり織りは引き戻らないから。
前に前に織っていくしかないんですよ。


白川:
ああー。


あかい:
だから、さっきの違うなってところが
ずっと気にかかってるんですよ。
上手く織れてるところじゃなく、そっちがね。
じゃあ、それをどうやったら
良さに変えれるだろう?って転換するんです。


白川:
前にしか織っていけないから。


あかい:
すると、そこは失敗じゃなくなるんですよ。
そこがあるから、生み出されるものを生み出していく。
いざ織り終わって見たら、そこがなかったら
このデザインにしていないよね、ってなるんです。


白川:
すごい腑に落ちました。
前にしか進めないって、なるほどー。
傷はデザインって、織り手のために
ある言葉なのかもしれませんね。


あかい:
結果を目的にすると窮屈になるし、
「こうしたい」がありすぎると、それに
合わせよう合わせようとして織っちゃうんです。
でも「自分を織る」のだから、この瞬間がすべてで
そう思うと広がろう広がろうとしていくんですね。
作品のスケールが違ってくるんです。


白川:
舞台の広さがぜんぜん違うわけですもんね。


あかい:
最初にイメージはもちろんあるけど、
織ってる瞬間の揺らぎを忘れない。

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白川:
それが「手織り」であり、
人が織ることなんでしょうね。

ぼくも何度かさをり織りを
体験させてもらいましたけど、
ほんとうに教えてくれないじゃないですか(笑)


あかい:
織り機の操作だけ教えて、
あとは「自由に織ってね」って(笑)


白川:
そこから3時間くらい織ってたわけですけど、
自由にやれって言われるとむずかしかったです。
すぐできる人もいるんでしょうけど。
ぼくなんかは、「自由っぽく見える」のを
やろうとしちゃうんですよ。


あかい:
こうしたら自由に見えるでしょ!みたいなね。


白川:
でもほんとは違うのが分かってるんですよ。
自分の中ではね。

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あかい:
めちゃくちゃ分かるよ。


白川:
でも今改めて話して、
それを無理に考え続けるよりは
そう思ってる自分も認めざるをえないんだな、と。
前にしか進めないんだから。


あかい:
そのとおりだよね。
そう思ってる自分は、
その瞬間にしかいないですから。


白川:
そりゃあ、織り手の個性が出るわけですよ。
で、それがうつくしいし、
ふしぎと愛着がありますね。


あかい:
それがふしぎなところだよねー。


白川:
これはぼくの領分の話なんですが、
ことばって、自分のちからだけで
出てくることって案外少ないと思ったんですよ。
好きな人やきらいな人、最近会えてない人や
もう会えない人、ときには自分のことを考えたり
思ったりして出てくることばがたしかにあるんです。
そう思うと、自分のちからだけで出る芽って
なかなか少ないんですよね。
それはさをり織りにも共通しますか?


あかい:
さをり織りは見本がない織物なので、
そのときの自分の頭や心にあるものが
映し出されるんですね。
それって、少なからず誰かの影響を受けてるよね。


白川:
そうですね。
思い出って、人がほとんど出てくる。


あかい:
ダイレクトにこの人って思うときもあれば
この前すれ違った人の服の色を思い出したりね。
あの人と行った山の葉っぱの色が綺麗だったなぁ、とか。
自分の中にあるものと対話をしていくから、
れっちゃんの言葉を紡ぐことと似ているかもね。


白川:
似ているのかもしれませんね。
今回、絵本と一緒に販売させてもらう
てぶくろもそうして作られてると思うと
うれしいです。伝わったらいいな。


あかい:
あ、サンプルを持ってきましょうか。
あと今回一緒に織ってくれたなみちゃんも。


白川:
わー!かわいい!

なみさん、ありがとうございます。
すっごくかわいいてぶくろを織っていただいて。


なみ:
いえいえ。とても楽しかったです。

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白川:
なみさんは織りを始めてどれくらいになるんですか?


なみ:
もう10年です。


白川:
10年!すごい。
あかいさんは?


あかい:
私は24年(笑)


白川:
ぼくの人生分くらい織ってる。
このポコポコしてるのが、絵本に出てくる
虫たちっぽくてとってもかわいいですね。


なみ:
今回は「からふる」「しっく」「なちゅらる」の
3パターンをイメージして作ってます。

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白川:
どれもいいですね。ぼくは「しっく」が好みだな。
そういえば今回「かわいいてぶくろ」って
勝手に名付けさせてもらったんですけど。


なみ:
かわいいです、かわいいてぶくろ。


白川:
ぼくのなかでマフラーや手袋は
装備する感覚なんですよ。
防寒具として使うというより、
ファッションのアクセントだったり
その日の気分で付けるんですね。
それがゲームでいう「装備する」感覚で。
だから、ゲームに出てきそうな名前で
「かわいいてぶくろ」って名付けちゃいました。


あかい:
防寒って意味だけじゃないよね、今回のは。
絵本の内容もあるし、さをり織りの良さもあるし。
なにより、指の部分ないから(笑)


白川:
ぼくが指部分のない手袋が好きなんです。
今はスマホも触るし、指先の感覚は
常に触れれるようにしておきたくって。

糸の素材は、これはウールですか?

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なみ:
8割くらいウールですね。
冬っぽさも出したかったので。
あとはストレッチ糸も入れて
できるだけ手にフィットするように。


あかい:
さをり織りは、なるべく縫わない、
なるべく切らないことも大事にしてるんです。
できるだけ織り手の個性が伝わって欲しいので。


白川:
いやー、ほんとかわいいです。
あ、ぼくも絵本をお渡ししますね。

どうぞどうぞ。

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あかい:
わー。ありがとうございます。
かわいい。ちょっと読みますね。

あかい:
ここで空白を入れるのが、
れっちゃんぽいね。


白川:
あはは。
確かに今回空白を作ろうと言ったのは
ぼくだったと思います。


あかい:
こういうのはデジタルじゃなく
紙の本だからできることだよね。
デジタルだったら、ミスだと思っちゃうし。


白川:
ああ、ほんとそうですね。


あかい:
私は先にデータで読ませてもらってたけど
やっぱり手に取るのがいいですね、この絵本は。


白川:
ありがとうございます。
紙質もサイズ感も込みで絵本なので。
さをり織りも、ぜひ実物も見て欲しいですね。

あかいさん、なみさん、
今日はありがとうございました。
かわいいてぶくろは注文があって
そこからひとつひとつ手織りだから、
これからが本番ですけど。


あかい:
ね。ぜひ実物も見て欲しいし
さをり織りにも触れてみて欲しいです。
こちらこそ、ありがとう。


白川:
いえいえ、よろしくお願いします。
ギャラリーの展示を見てから帰りますね。

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windfall LABさんの「かわいいてぶくろ」と絵本『やさしいて』のセットはこちら!


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