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#148 生殺与奪のSNS

 寝不足は状態であり、不眠症は睡眠障害である。この言葉の違いは案外、不眠に悩まされる当事者にしか伝わらないであろう。ここ最近、心療内科に通い始めた前後の頃以来の、きつめの不眠に悩まやされている。

 どれだけ入念に入眠準備しようが、疲労感があろうが、なんなら眠気まで感じていようが、それでも寝つけない。あるいは、何度も目が覚めてしまい(中途覚醒)ぐっすり寝られない、または、目覚まし時計のはるか前にぱっちりと目が覚めてしまう。当然、睡眠薬は処方されている。それでもなお、なのである。

(休職中の身だが、起床と就寝のパターンは維持したいと思って変えていない。なので、夜はいつも通りに布団に入るのだが、そんなこんなで、朝は予定時刻にスッキリ起きられた試しがない。これが仕事なら、毎日遅刻である)

 そうしたことから当然、日中は眠くて、だるくて、体も頭も冴えない状態で過ごすことになる。本人としても、不本意でならない。夜更かしとか、睡眠時間を削ってまで何かをしようとした訳ではなくて、寝ようとしていた結果がこれなのだから。

 いきなり話のスケールが大きくなるが、このような「当事者にしか分からない苦しみ」というのが、この世界にはたくさんあるのだろうなと思う。

 さらには、同じ悩みを持つ当事者同士でも、個々の事情まで同じというわけではないため、真の意味で「わかる」ということはありえない。しかしだからこそ、「寄り添う」とか「見守る」とか、そうした形で誰かと繋がっていることが大切なのだと思う。

 わたしはずっと孤独に強い人間だと思っていたが、最近になりそれが間違いだと理解した。わたしはあくまで「一人でも平気で行動できる」とか「むしろ一人の時間が好き」というだけで、誰からも寄り添われたり見守られたりすらしない、真の孤独に耐えられる訳ではなかったようだ。

 それを最初に気づかせてくれたのは、noteのみんなだ。ほんとうにありがとう。いま現在フォロー/フォロワーの関係にあるかどうかに関わらず、わたしの記事を一度でも読んでくれたひと、スキを押してくれたひと、コメントをくれたひと、みんなに感謝しています。

 一方で、わたしのnoteというよりは、世間のSNSにまつわる話題について、心配なことがある。芸能人やインフルエンサー、最近では漫画家さんが自殺したニュースもそうだ。

 追い詰められた経緯は人それぞれに個別の事情があるとしても、崖っぷちにある人の背中を押したのは、SNSではないだろうか。SNSのユーザーが、寄り添ったり見守ったりすることなく、善意も悪意もひっくるめた、様々な意見や感情を投げかけてくる。心配するメッセージなんかも、たくさん来ることだろう。

 しかしそれが、ただでさえ追い詰められた状態の本人にとっては、もはや処理しきれない情報の洪水であり、パニック、後悔、自己否定を起こし、逃れる方法が自殺以外になくなってしまうのではないだろうか。

 数千人、数万人という数のフォロワーがいるアカウントで話題になれば、フォロワー以外からも「いっちょ噛み」のリプライがあり、本人のスマホは通知の嵐となるだろう。

 一般人の匿名アカウントなら、最悪アカウントを消す(それでも、めちゃくちゃ辛いことだと思う。好意的に接してくれていた人の前からも、消えることになるのだ…)こともできるが、著名人ともなれば、それも簡単にはできないのだろう。むしろ、世間の生の声にしっかり向き合おうとして、熟読してしまうかもしれない。

 このnoteでSNSに救われた(生かされた)わたしだが、その逆の力もあることを肝に銘じておかねばならない。気軽にはじめたSNSが、生殺与奪を握っているとは、思いもしないことではあるのだが。

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