見出し画像

#167 【聴く読書&イヤホン】 鬱で読書ができないわたしが、Audible(オーディブル)を聞いたら本の世界に戻れた話&final E500で聴いたらどうなるのか問題

 以前からわたしのnoteを読んでくださっている方には毎度の話ですが、わたしはイヤホンが大好きです。とりわけ、finalというメーカーの製品が好みで、中でもEシリーズと呼ばれる一連の製品がお気に入りです。

 Eシリーズには「間違い無い定番と、長く呼ばれる事を目指した製品シリーズ」という、シンプルで明快なコンセプトがあります。そして実際に、リーズナブルで音の良い定番機種として、幅広い層から評価され続ける、ロングセラー商品となっています。わたしとしても、人にお勧めしやすい製品だと感じており、このnoteで何度も紹介記事を書いてきました。

 しかし実は、Eシリーズで唯一、スルーし続けてきた製品があります。最も廉価な、E500というモデルです。理由は簡単で、音楽鑑賞向けの製品ではないためです。

2chステレオ方式で制作された音源とバイノーラル技術で制作された音源の違いの研究から生まれた新たな「定番」イヤホンの誕生です。

従来のイヤホンやヘッドホンでバイノーラル制作されたゲームやVRなどの音源を聴くと、高音域に独特の違和感が生じることは広く知られていました。音響に携わる研究者達はこの原因について掴んではいましたが、その対策について十分な成功を収めた例はまだありませんでした。

今回、新たなアプローチでその問題への対策を講じた結果、バイノーラル制作されたゲームやVRなどの音源において、制作者の意図通りの音色と空間イメージや方向感を感じることのできるイヤホンを誕生させることができました。

final 公式サイトより
※読みやすさを考慮し、筆者にて改行のみ行った

 これは、ASMRをはじめとした、バイノーラル録音の音声コンテンツを、リアルに再生することに特化したイヤホンなのです。そうしたものとは縁遠い暮らしをしていますし、似たコンセプトのVR3000も(動画鑑賞用として)所有しています。

 内心、「後はE500を買えば、Eシリーズ全機種紹介の記事も書けるよなぁ」という考えもありましたが、本気で活用した後でなければ、感想もまともに書けませんし、単なるコレクションとして買うつもりはありませんでした。

Audibleを聴くために

 そんなこんなで無視し続けていたE500を、いよいよ買うぞと思った理由は、Amazonのオーディオブック、「Audible(オーディブル)」の契約を再開したためです。

 再開、というからにはもちろん、過去に使用した経験があります。心身ともにまだ健康を保っていた頃(はるか遠い昔の話…)通勤中の電車内や、ウォーキング中に聴く用途で使っていました。又吉直樹さんの『火花』を聴いた記憶があります。正確には思い出せませんが5、6年前でしょうか。

 最終的には、聞きたい本が無くなるとともに、ウォーキングにも飽きてしまい、Audibleは解約しました。そもそも「ながら」でないならば、朗読を聴くよりも、文字を読む方が好きだということもあります。

 さて、ここで話は現在に戻ります。心身の不調が進行するとともに、楽しめる趣味の幅がどんどん狭くなっていきました。ひきこもり状態になった時でも唯一わたしを助けてくれた、音楽鑑賞という趣味すら受け付けなくなり、イヤホンをはじめ、ポータブルオーディオに多額のお金を投じてきたにも関わらず、最終的に常用しているのは耳栓という、皮肉な状況に陥っているというのが、わたしの現状です。

 幸いなことに、休職して療養することができており、趣味を楽しめる時間も少しずつ増えてきました。そんな中で、取り戻したいと思っているのが「読書」の習慣でした。しかし、いざKindleを開いてみても、まったく頭に入ってこない。ほんの少し読んだだけで疲れてしまう。以前なら1日、2日あれば読み終えることができた分量の本が、もう何ヶ月も読みかけのままになっています。

 活字欲はあるのですが、noteの皆様の記事や、新聞(朝日新聞デジタルを契約しています)を読むくらいが精一杯。漫画も、『チェンソーマン』と『推しの子』の連載は毎話楽しみに読んでいますが、それもあくまで「読み続けていた連載作品の最新話」という短いものなので、なんとか可能になっているのです。

Audibleで読書を再開できました!

 前置きが長くなりました。最近、ずっと読んでみたいと思っていた『ハンチバック』を読みました。というより、Audibleのラインナップに入っていたので、再契約をして聴きました。読書ではすぐに疲れてしまうのに、すっと頭に入ってきました。

 『ハンチバック』を聴き終えたあと、読書はまだできないけれど、「聴く読書」ならできるんだ!と分かり、嬉しくなりました。能動的に「読む」必要がないという点が、今のわたしにとっては良かったのかもしれません。今は、そろそろ再読したいと思っていた、『サピエンス全史』を聴いています。

 Audibleのサービス自体も完全聴き放題になっていて、お得感が増していますね。朗読者として有名声優さんが参加していたり等、ずいぶん良くなったのだなと、ラインナップを眺めてワクワクしています。

 それでは、ここからが(もうひとつの)本題です。音声コンテンツを聴くためのイヤホンである、 final E500でAudibleの朗読を聴いた場合に、他のイヤホンと比べて有意な差を感じるのかどうか、というお話に移りましょう。

確かに(ちょっと)違う!

 聴き比べるとなるほど、やはりE500は声の帯域が明瞭で聴き取りやすいチューニングですね。手持ちのE1000、E2000、E3000、VR3000と比較しましたが、特に良かったのはE500、次点は(僅差で)VR3000ですね。ただし、どのイヤホンを使ってもAudibleは楽しめるし、音色に違いはあっても、コンテンツの体験として差が生じるほどの違いはないな、とも思いました。

E500本来のフィールドで比較する

 期待した通りの性能で満足しましたが、せっかくなのでASMRのコンテンツも聴いてみるかと思い、YouTubeで周防パトラさんのこちらのASMR動画と、星街すいせいさんのこちらの動画で改めて比較試聴を行いました。

すげえ!(語彙)

 あーこれ!凄いです!声の生々しさ、収録環境のその場にいるかのような臨場感が段違いです!アンダー2,000円のイヤホンでこんな体験ができるの?すごくない?テンション爆上がりで、ビビり散らしました。

 似たコンセプトのVR3000と比べると、距離感を含めた立体表現ならVR3000、配信者の声に集中したいならE500、という感じです。

 VR3000はマイクとの位置関係や距離まではっきりと描き分けることができており、「やっぱりすごいな!」とは思いましたが、この用途に限っては配信者の声がいかに艶かしく聴こえるか、という点の方が重要だと思います。その観点では、E500の方が良いと思いましたね。

※ちなみに、E500自体も立体表現には優れています。きわめて優秀です。上記はあくまで、抜群に優れている製品同士を比較した際の感想です。

 わたしはYouTubeを観る習慣が無いので、やはり今後もAudible用に使っていくとは思いますが、これまで所有していたものとは一味違う「声のイヤホン」という、面白いものに出会う楽しい機会となりました。AudibleもE500も、どちらもおすすめです。

 Audibleは無料体験もできるので、この記事で興味を持たれた方は、ぜひ一度使ってみてください。特に、わたしのように「読書ができなくなった」方、合うかどうかはわかりませんが、試してみる価値はあると思います。

おまけ:E500のイヤーピースについて

 他のfinal製品と同様、E500にも単品売りしているものと同じfinal TYPE Eが付属します。普段はこれか、TRN Tipsのどちらかで間に合うのですが、Audibleは朗読のため、無音の「間」になる部分も多く、音楽鑑賞と比べて外音が気になりやすいと感じました。

 そのため、イヤーピースは低反発素材で遮音性の高いものを使っています。Symbioのフォームタイプ(Symbio F)が価格と装着感のバランスがよく、おすすめです。

それでは皆様、良い(聴く)読書ライフを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?