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「エモい」の正体

日本語は言葉の種類が群を抜いて多いです。
特に若者言葉には目を見張るものがあります。

ここ数年で使われるようになった言葉に「エモい」という言葉があります。感情を表す英単語emotionから作られた言葉です。使う人が感情的になれば、この言葉は脊髄反射のごとく口から飛び出てきます。

若者である私が言うのも変ですが、こうした若者言葉は日常的に使いつつも、あまり意味が分からないことも多々あります。

ではこの「エモ」くなった人たちは具体的にどんな感情なのでしょうか。もっと言えば、自分の感情の実態を分かっているのでしょうか。

私はそうは思いません。なぜなら、私がこの言葉を使う時に自分の感情をあまり把握できていないからです。「エモい」のような言葉には「何か感想が言いたい」という欲求を解消する以上の意味がないように思います。

こうした現象に違和感を抱く人が、少なからずいます。「エモいってどういうこと?」と聞いたりすることもあります。
ですが、誰もこの回答を持っていません。使った本人でさえ「たった今感情が動いた」以外に理解できていないからです。

つまり、言葉に意味を持たせるにはある程度思考しなければならないのです。「エモい」はこの思考を省くことができるとも言い換えられるかもしれません。そして聞き手が勝手に「エモい」を解釈して、曖昧な空間を作り上げて、また新たな「エモさ」を生み出す循環が生まれていきます。

この言語化できない部分に気持ち悪さを感じるのは、ある意味正しい生理反応とも言えます。

ですが、この感情を特定する必要があるのでしょうか。

私は必要ないと考えています。正確に伝わるだけが言葉の効果だとは思わないからです。

言葉には自分の気持ちなどを誰かに伝える伝達機能と自分自身を落ち着かせる浄化効果の2つがあると考えています。浄化効果の例には、独り言などが含まれます。

独り言には自分の中に溜まった感情を吐き出してスッキリするという側面があります。ここで吐き出す言葉に意味を持たせる必要はあるでしょうか。おそらくないでしょう。

若者言葉が分からないのは、人とのコミュニケーションの中でその語源とは別の使われ方をしていくことで、いつの間にか浄化効果の側面が強くなるからだと思います。人に話しかけている独り言が若者言葉の正体のように思います。

つまり、若者言葉のような便利な言葉は言葉にならない感情を吐き出すために必要なのです。

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