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2015喜田純鈴&柴山瑠莉子

2月20日からのモスクワグランプリへの派遣が決まったジュニアの2人、喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中)と柴山瑠莉子(イオン)は、ほかのジュニア選手(強化選手)たちが2種目だけ演技する中、短時間での4種目に挑んだ。

ジュニア選手の中でけた違いの難易度の演技に挑戦する喜田純鈴

2013年の全日本選手権でいきなり2位となり、メディアからも注目されている喜田選手は、今回のコントロールで2種目、新しい作品を披露した。 2015シーズンから、リボンに代わって入ったロープ、そして、昨シーズンまでの作品が高く評価されていたクラブが新作演技だった。
1種目となったロープは、こなれ方こそもう一歩には見えたが、ほかのジュニア選手たちとは段違いの難しい内容の、挑戦的な演技。投げ方もひとひねり、それを難しい受け方でキャッチして、さらに次につなげる、といった巧緻性の要求される演技を、かなりこなしており、その能力の高さと志の高さは圧倒的なものがあった。

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昨シーズンと同じ作品を演じたフープになると、危なげなく、余裕すら見える演技で、難度や操作以外の動きの部分が、昨年までよりはっきり、大きく見えた。そして、表情からも音楽を表現しようとしていることが伝わってきて、まさに「踊りの中に難度や手具操作が組み込まれている」と思えるレベルに達しているように見えた。
後半種目のボール、クラブはミスが多く、表情にも陰りが見えたが、クラブは今までの作品とは雰囲気も大きく変えた「大人の演技」に挑戦していて、これからがますます楽しみになった。
2013全日本での衝撃デビュー当時も、「すごい!」と度肝を抜く選手ではあったが、今回のフープくらいやりこなしたときの演技を見ると、この選手のポテンシャルの高さがわかる。体も操作も難しいものに挑戦しているだけに、はたからは「すごい!」と思える演技でも、目指しているものにはまだ程遠いのだろう。喜田純鈴が、そして劉コーチが、「やりきれた!」と思える演技ができたとき、それはどんなものになるのだろう。

音楽を奏でるように演技する柴山瑠莉子

2013年、喜田純鈴が2位だった全日本選手権で柴山瑠莉子は20位だった。当時、中学1年生だったことを思えば、それでも十分素晴らしい成績だが、1つ年下の喜田には大きく差をつけられていた。それが1年3か月前の柴山だった。
しかし、今回のコントロールで、喜田にミスが多かったとはいえ、柴山は4種目総合で喜田を上回る得点を得た。 新しい作品だったロープでは、11.650と点数が伸びなかったにもかかわらず、だ。
おそらく、この選手は元来器用なタイプではないのかもしれない。 作品を自分のものにするのにはやや時間がかかる。が、「自分のもの」になってしまえば、作品への入り込み方は人一倍。 それだけに、観ている人に伝わるものが大きい。そんな選手であり、演技に思える。
なんと言ってもこの選手の音感のよさが、演技を心地よいものにしている。 フープは、すでにかなりやりこなしてきた「くるみわり人形」だが、このレベルで実施できるようになると、脚でフープを回しながらのステップでさえ、見事に音をとらえていて、すべての動きが音楽と連動して見える。

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とくに今回のコントロールでは、ボールが素晴らしかった。 昨年の全日本でも非常によい演技を見せ、13.800をマークした種目だが、今回はなんと14.450! その得点が出ても納得の演技だった。 ピアノを弾き始めるポーズから始まり、ピアノ曲にのせて流れるようにボールを転がし、ステップを踏むこの作品は、本当に彼女がピアノを奏でているように見える名作だが、今回はそれをほぼ完ぺきに演じきった。動きはもちろん、ちょっとした小走りから、投げ上げたボールの回転までもが音を感じているような。そんな珠玉の演技だった。

喜田純鈴。そして、柴山瑠莉子。
モスクワグランプリで、まずは思い切りのいい演技を見せてきてほしい。 目先の結果はどうであれ、彼女たちが大きな可能性をもった選手であることには間違いないのだから。

<「新体操研究所」Back  Number> PHOTO by 末永裕樹

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