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2010井原フェスティバル

井原フェスティバルは、招待選手が豪華! というのは、たしかにすごいのですが、でも、そんなすばらしい面々に負けないくらいすごいのが・・・そう! 井原名物ともいうべき、「おとなの新体操」(どことなく淫靡な感じがするこの字面・・・)! なんです。
数年前の井原フェスティバルのDVDを見たときに、いたく衝撃を受けたのですが、今年もしっかりやっていました。それも確実に進化している! 同行させてもらった岡山テレビの取材陣の方たちが、「うまくなりすぎて残念(笑いの要素が薄まってしまった)」と苦笑いされていましたが、たしかに。
最初にDVDで見たときは、「きゃー! 大丈夫?」と笑えたのですが、今回はもう普通にうまいというか。体操祭とかに出ればいいのにな、という感じでした。
みなさん、まじめ~にやるんですよ。このパラソル部隊とか、ほんとに女子の発表会ではよくある小道具ですが、パラソル使うのはたいてい幼児クラスとかそのへんですよね。大の大人がやってるんですから! そしてかわいいんですから! すごいことです。
この中には、指導陣も入っているので、長田京大監督もどこかにいらっしゃるはずなんですが・・・。さらに、女子新体操ファンなら覚える人も多いかと思う鈴木麻未さん(東京女子体育大学卒)も入っています。まだ現役さながらに動けていましたよ~!
この井原フェスティバルというイベントそのものが、本当に地域に根付いたイベントのようで、とにかく会場で目立つのは、お年寄りの姿。おそらく、「BLUE TOKYO」とか言われても、なんのことやら? なんだろうなあ、と思うようなお年寄りが、自分たちの地元で育って活躍している子ども達の晴れ姿を見に来て、熱い拍手をおくってくれている。そんな雰囲気なのです。

行ってみて初めて知りましたが、井原市は岡山駅からもかなり離れているし、決して大きな町ではありません。この環境では、毎日のように新体操の練習に通ってくるために、家庭のサポートは必須だと思います。そんな町で、これほど多くの優秀な選手が育ってきたこと(先日の全日本選手権には井原出身の選手が20人ほど出場していたそうです)のすごさをひしひしと感じました。
ただ、もしかしたら、それはこういう小さい町だからこそ発揮できた力なのかもしれないな、とも思いました。「男子新体操」は世間的にはマイナーかもしれないけれど、こと井原市ではメジャーでしょう。きっと、町中のたくさんの人たちから注目され、応援されてきたんだろうなと。そんな中で育ってきた選手たちだから、大学に進んでメジャーな選手になっても、嬉しそうにここに戻ってきて、楽しそうに演技しているんだろうなと、感慨深く思いました。

そんな「新体操の町・井原」を築きあげてきたたくさんの力の、大きな一部は間違いなく、この熱い保護者達であり、この人たちは、本当に新体操が好きなんだろうな、と思いました。「自分たちもやってみようか」と思ってしまうくらいに、そして年々上達してしまうくらいに。
こんな保護者たちに支えられて、ここまでやってこれたということは、素晴らしいことだし、うらやましいことだと思います。
おそらくここに、井原の強さの原点があるんだろうな、とそう思い知らされた気がしました。

さて、豪華な招待選手のなかでも、スペシャル感満載だったのが、BLUE TOKYOでした。
井原出身の大舌恭平選手を含む青森大学新体操部の面々(福士祐介・柴田翔平・椎野健人・亀井翔太・松田陽樹)がメンバー! 今回は、なんと2演目も披露してくれました。

最初は、NHKの「金曜バラエティー」でもおなじみのピンクタキシードで、かっこよくノリよく! このプログラムはほんとに華やかで、すてきです。しかし、ピンクのタキシードなんてとんでもない衣装なのに、なぜそんなに似合うんだ? 椎野選手、亀井選手、松田選手!(笑)この3人、踊りっぷりもすごくかっこよくて、新体操選手というよりもダンサーぽいな~と。
もちろん、大舌選手も似合ってますよ! もう、彼はなにをやっても、何を着てもサマになりますから。

井原フェスティバルのトリを飾ったのも、BLUE TOKYO! 国際フォーラムでのライブでやった幻想的なプログラムでしたが、国際フォーラムではかなり照明が暗く、その分、妖しい雰囲気だったのが、なんせ明るいわ、フロアマットだわで、やけに健康的な雰囲気に(笑)。衣装やメイクはステージのときと同じだったので、ちょっとミスマッチかな? と思ったんですが、十分雰囲気は伝わっていたと思います。というか、明るい分、国際フォーラムのときよりも動きはよく見えて、かえってよかった面もありました。演出効果という点では、そりゃあ照明おとして、スポットあたったほうがいいには違いないですが、タンブリングや手具の妙技を堪能するには明るいのもなかなか・・・よかったですよ。
とくに、この手のダンスの経験は浅いはず? の福士選手、思った以上にいい感じに動いていました! 国際フォーラムのときは、暗くて誰が誰だかよくわからなかったんですが、今回はバッチリ! 福士選手のダンスもすてきでしたが、柴田選手のリングぐるぐる回しも、すばらしかったし、ロープをもって飛び出してくるとき、ものすごくかっこよかった!!!

個人では、井原出身の谷本竜也選手が、リングとクラブを披露。どちらもすばらしかったですが、クラブはもうほんとに見納めかなあ、と思うと一瞬一瞬が見逃せないという感じで(だから、写真も撮りませんでした。この目でしっかり見たかったから)。今回もまたまたノーミスのすばらしい演技を見せてくれましたが、じつは投げなどすこし狂いがあったように見えました。それでも、なんなく反応して取れるんですよね。そういう危なげない調整の仕方などを見ていると、ほんとに彼はどれほどこの演技をやり込んできたんだろう・・・と涙が出そうになりました。
2008年のオールジャパンが初披露だったという「小さい秋みつけた」を、思えば私は最初から見ているわけで、ほんとになんて幸運だったんだろう、と思います。

大舌恭平選手は、個人ではスティックを披露。競技ではないので、鬼束ちひろの「月光」をボーカル入りで。終盤に惜しい落下場外があったのですが、それはもうどうでもいいや! と思えるくらいに、そこまでの演技は、競技のとき以上に、ドラマチックで、自分の世界に入り込んでいてすばらしかったです。競技でも、大舌選手の演技は、表現力で魅せてくれますが、それでも競技ではやはり緊張があったんだなあ、と改めて思うくらい、この日の演技は、のびのびと表現し尽くしていたように見えました。この演技には、ちょっと頭を抱えるような動き(苦悩?という感じ)や、うつむいて歩くところがあるんですが、この動きが、やはり競技のときよりも大きく、はっきり見えました。
やはり、大舌恭平は、すごい「新体操選手」ではあったけれど、それ以上に「表現者」というか「役者」なんだな、とこの演技を見て思いました。新体操というステージは降りても、これからがほんとに楽しみです。

北村将嗣選手(花園大学)も、スティック、ロープの2種目を披露。とくにロープは、「まさにZONE!」と思うようなすばらしい演技でした。いつも華麗なロープさばきですが、この日はまたいつも以上にすばらしくて軽やかで、魔法のようでした。思う通りのところにロープがすいっと来る、すぱっと端が取れる。なんの不安もない、のびやかな演技でそのあまりの自由さに、ほんとに涙が出ました。
そんなわけであまりにも素晴らしい演技に、カメラそっちのけで見てしまい、演技写真が撮れなかったので、フェスティバル終了後に撮らせていただいた写真です。北村選手、全日本チャンピオンだというのに、あまりにも腰が低く、いつ見ても、誰かに挨拶したりお礼を言ったりしているんですよ。ほんとに「いい子」です。

社会人選手として久々に全日本に復帰し、見事4位になった野田光太郎選手(花園大学監督)も、スティックの演技を披露してくれました。これはもう最初から写真撮る気なし!(笑)今回は、フロアマットにものすごく近い位置で見ることができたので、彼の動きの隅から隅までをじっくり見させてもらいました。何回見てもすごいのが、自ら回転しながら、投げ上げたスティックを背面でキャッチする技。それもほんとにふわあっとしたキャッチなんですよね。こんな風に手具を扱えるようになるまで、いったいこの人はどれほど練習してきたんだろうなあ、と。
フロアからおりると、普通の、華奢なおにいさんなんですけどね。フロアに立って、曲がかかるとスイッチが入るんですよね~、全日本、そして今回といいものを見せてもらいました。ありがとうございました。

なんせ写真が撮れないもので、井原ジュニア新体操クラブと井原高校の団体演技の写真がないんです~(泣)。どちらも、地元のみなさんの前で、すばらしい演技を見せてくれましたよ。
きっと親御さんやおじいちゃん、おばあちゃん、お友達もたくさん見に来ていたんでしょうね。「試合に勝つぞ!」というのはまた違う、はりきり方がとてもほほえましかったです。今年度、全日本チャンピオンの井原ジュニアには中3が4人もいて、みんな井原高校に進学予定だそうです。
今回のフェスティバルを最後に、高3が抜けて、春の選抜大会は5人編成チームで戦わざるを得ない井原高校ですが、春になって新入生が入れば、熾烈なレギュラー争いが繰り広げられることになりそうです。

念願の井原フェスティバルは、それはそれは温かくて、見ごたえのあるすばらしいイベントでした。どうか末永く続けて、井原から巣立ったみんなにとっての「帰る場所」であり続けることを祈らずにはいられません。
<「新体操研究所」Back Number> 2010.12.14~15掲載


20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。