忘れられない言葉

「私は60才になるころには死んでいます。父はある菌が原因で亡くなっており、私も同じ菌を持っていることは検査でわかっています。」

小5の時、途中から担任になったN先生に言われた言葉だ。その時、私たちが20才になる頃には先生はこの世にいないのかと瞬間的に計算したことを覚えているので、N先生は51才くらいだったのだろう。

当時の私のクラスは色々と問題があり先生が2回変わった。そのあと、3人目の担任としてやってきたのがその先生だった。

学校での役職が校長・教頭に次ぐ3番目のベテランの先生で、適度な距離感とゆるさでそれなりに過ごしやすかったことを覚えている。

何の時間に言われたのかも覚えていないし、その後に先生がどんな言葉を続けたのかも全く記憶にない。ただ時々この言葉を思い出しては、もうこの世に先生はいないのかと思う。

私はぼんやりと長生きはしたくないと思っている。が、60才という現代では若い寿命を受け入れ、それを11才の子どもたちに伝える先生はどんな気持ちだったのだろうか。

これから一生会えない人たちのなかでも、先生とその話を同時に聞いたクラスメイトのことは、とても気になっている。これは本当に正しい記憶なのか、確かめたい気もするし、こわいとも思っている。



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