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#映画にまつわる思い出 父との時間

映画の思い出といえば、私の最初の洋画との出会いは小学校高学年くらいで父に連れられて観に行った『007 オクトパシー』だ。余り多くは覚えていないが、007シリーズが好きだった父が子守ついでに私を連れていったのだと思う。

かつての映画館には劇場の外に手書きの大看板があり、私は入口からワクワクした。売店で買ってもらえるジュースとお菓子が子供にとって大の楽しみだった。映画はとびきりの異世界へ連れていってくれた。子供には刺激の強いシーンもあったが(笑)世界にはこんなところがあるのかと驚き、迫力満点のアクションやオシャレな大人の世界に憧れた。お正月には大作映画を家族で観に行ったものだ。映画は魔法の世界に2時間連れて行ってくれる私たちのお楽しみだ。

父とはそれ以降何本も『007』シリーズを観に行ったが、高校生くらいになると思春期のせいか親とは出掛けなくなった。でも社会人になってから、時間ができると再び父と映画館に行くようになった。チケットもドリンクも買ってくれるし、レイトショウを観て帰りが遅くなっても母に小言を言われることもないのだから、娘としてはとても都合が良かった。

父はアクションものの映画が好きだったので、2人で観に行ったのは大抵はアクションものの大作だった。もちろん007シリーズは続けて観に行っていたと思う。

父はその後5年ほどで胃がんを患い、短い闘病生活ののち他界した。映画がなかったら、父とこんなに多くの時間を共有し、楽しむことはなかっただろうと思う。父と映画館で過ごした沢山の時間は、今となっては大切な思い出だ。

2022年にスピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』が公開されたので、母を誘って久しぶりに劇場に出掛けた。以前、母から父との初デートでこの映画のオリジナル版を観たという話を聞いていたので、母にとっても懐かしいのではと思ったのだ。

母にとっては大昔の記憶を辿る時間になったのだろうか、後で感想を訊くと「あんな風だったねぇ」と目を細めていた。その日は映画好きの父に思いを馳せたおだやかな日になった。


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