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めざせ女山伏!?神社修行編(後編)

DAY2
「滝行」→「山駆け(大祓・鎮魂)」→「宝物殿見学」→「終了奉告祭」→「修了証書授与」
※修行中は写真撮影禁止なので写真があまりない

朝、4時半起床。急いで身支度して、乾燥室に白衣と鉢巻を取りに行く。完全に乾いていてうれしい。
昨日と同様に神社で着替え、かと思ったら直接滝へ行くとのことで、同室のみんな大慌て!はからずも乾燥室で着替えることに。お待たせしました~と玄関へ。5時ごろ滝に向けて出発。

夜明け前。山中に街灯などあるはずもなく、水たまりを踏まないよう注意しつつの40分。途中からようやく空が白んできた。昨日は一日、折り畳み傘が手放せなかったが、今日は晴れそうだ。

滝行の内容は昨日の繰り返しなので省略。ただ、昨日より足の裏がやたら痛い。昨日は一日の後半に滝行だったので、足の裏が固くなっていたのだろう。今日は起きてすぐなので柔らかい足裏に岩がささる。鳥船をするのにしっかりと踏ん張れる場所がなくて困った。この日の修行の終わりに、左足の裏に青あざができているのに気づいたほどだ。

この早朝の滝行の帰り道で、これから滝行に行く白装束の一団とすれ違った。我々は神社主催の修行体験会だが、宿坊が主催する滝行体験会もあるらしい。

滝から帰ってきて、8時ごろ朝食にありつく。
例によって食事の前後に和歌を唱和。そしてやはりお粥。今日はお箸ですくえる程度の固さ。おかみさん、学習したらしい。おかずはみそ汁、冷奴、小松菜とこんぶの炊き合わせ、ほうれん草と山芋の酢の物、ひじき。あとは梅干しとかつお節、漬物。

9時、修行に必要ない荷物を神社の車に預ける。これらは神社に運ばれ、最後に神社で受け取る。もう宿舎には帰ってこない。
玄関先でお弁当(大きなおにぎり3個)とペットボトルの水をもらい、干しておいてくれた折り畳み傘を受け取って、いざ、山駆けに出発。

まずは奥の院を目指す。途中までは「綾広の滝」へ行くルートと同じ。あの「天狗の腰掛け杉」の横に、いつもは前を通り過ぎていた鳥居があり、それをくぐって「神苑の森」の中へ。
ここからがすごかった!木の根っこがからみあう急傾斜の難所が続き、根っこにつかまりながら四つ足でよじ登ったり、かと思うと岩に手をついて飛び降りたりしながら進む。
うわあ、やばい、ガチなやつだ、最後まで体力がもつかな…と、にわかに不安になる。途中「鎖場」(くさりば)まである。崖に打ち込まれた鎖に手でつかまりつつ、体を垂直の壁にこすりつけながら進む。足場は50センチほどしかない。

そういえば山駆け前に脱落した女性がいた。朝の滝行から戻ったあと始発のケーブルカーで帰ったらしい。ちょっとぽっちゃりさん(←失礼!)で、滝の行き来の平坦な道でも、いつも列の最後になっていたので、山駆けは無理と判断したのだろう。

根っこ登り大会は続く。子供の時にフィールドアスレチックが好きだったので、なんだか楽しくなってきた。不思議とあまり疲れを感じない。むしろ面白い。
途中で神職の一人が一本の木を指して何やら説明していたので、近寄って耳を傾けると、鹿が木の皮をかじったあとだという。そのために木が枯れてしまって困るそうだ。しかし鹿にとっては大切な食糧だろうから仕方がない。それより周辺の山のところどころでナラ枯れがおきている方が気になった。

この辺りは熊もたまに出るらしい。しかしこれだけ大人数で行動していれば熊が近寄ってくることはないのでは。ただ、熊の住処に足を踏み入れているとしたら襲われても仕方がない。動物には何の罪もない。地球と自然にとって、人間ほどの害獣はいない。
そういえば密教系の山で修行したとき、つねに山伏とともに「慙愧懺悔(さんぎさんげ)、六根清浄!」と唱えながら山駆けしていた。もしかしたら、あのような掛け念仏や、ときに吹き鳴らす法螺貝は、熊を避ける効果もあったのでは、と思う。

水分補給のための休憩を数回はさみつつ、宿を出て1時間ほどの山駆けの末、奥の院「男具那社」に到着。普段はカギがかかっている朱色の扉を神職が開け、みんな中に入り、中央の小さな社を取り囲むようにして並ぶ。
「神拝詞」を取り出して、全員で大祓を1巻奉唱。
終わってからちゃんとお賽銭をあげてお参りしている人もいて、賽銭用の5円玉くらい何枚か持っておけばよかったと思った。

その後、ひときわ急な根っこの傾斜をあがり、ついに山頂にたどり着く。標高1077メートル。ここにも小さな祠があり、背後に山の峰が連なるのが見える。祠の前は少し開けていて、ここで「鎮魂」。神の御魂(みたま)を自身に招き入れ、また遊離する魂を身体の中に鎮める呼吸法である。

めいめい適当な所に腰を下ろす。姿勢は比較的自由で(本式の行法と異なる)、低い岩に腰かけたり、胡坐を組んだり。手は膝に置き、半眼で20分間ほどの瞑想を行う。
はじめの数分は、足を這い上がってくるアリが気になったり、腕にとまる虫を追い払ったりして集中できず、また20人以上の人間が微動だにせず座っているこの状態を他の人が見たらちょっと異様だろうな、などと考えてこっそり笑ったりしていたが、徐々に風の音や鳥の声が心地よくなってきた。体に虫がとまっても気にならない。

ようやく何も考えないことに慣れてきたところで終了。
先日、ある寺で初めて「阿字観」(密教の呼吸法)をしたときも思ったが、やはり瞑想は、理想的な境地にすぐさま達することができるものではない。場数を踏むのが重要だ。

ここから、隣りの鍋割山へ。標高1084メートル。鍋割山を過ぎて少し下り、途中、むかし進駐軍の米兵が滑落して救助が大変だった、などという場所を過ぎて、芥場(アクバ)峠まで降りる。
この辺りでは前から走ってくる人と時々すれ違った。神職いわく、もうすぐこの御岳山周辺の山を舞台にした山岳マラソン大会があるらしい。普通に歩くだけでも大変な山道を走るとは!?まさに天狗!

さて、アクバ峠から次に上高岩山へ。標高1011メートル。その山頂の近くの展望台でやっと昼食。宿が用意してくれたおにぎりを頬ばる。
この1時間ほどのランチタイムは私語禁止ではなく、みんなおしゃべりしながら眺望を楽しんだ。横浜みなとみらいやスカイツリーまでもが見え、昨日と打って変わっていい天気に恵まれたことを神様に感謝した。
展望台の左手には形の良い山が見えていて、道彦さんが、「あそこがさっきいた奥の院ですよ」とおしえてくれた。

同室の人以外とはほとんど話す機会がなかったため、ここで他の部屋の人とも少し話すことができた。すると、私と同じく法螺貝を吹くという女性が!私はマイ法螺貝(↑マイ仏具の写真)を持っているが師匠につかず自己流。彼女はちゃんと習っていて、法螺貝は教室で借りていると言っていた。どこで習っているのか、聞いておけばよかった。

昼食後はもう帰るだけ。アクバ峠まで来た道を引き返し、そこからは初めての道を通り「綾広の滝」に向って下る。歩きだしたらまた私語は禁止。そうしていつのまにか、滝行の帰り道を歩いている事に気づく。
途中で、空のペットボトルに湧き水をくむ。道彦さんが、この水でコーヒーを淹れるとおいしいと言っていた。私はコーヒーを飲まないが、自宅まで持って帰ってお茶をいれた。

ついに参道の石段まで戻ってきた(↑写真は前日のもの)。が、石段を上がらず、それを横切って奥にある女坂を上がる。この最後の長い長いのぼりスロープが、石段より根っこの山道よりきつかった。あまりにしんどくて、もう笑うしかない。私語禁止なのを忘れて同室の仲間と笑いながら上った。

14時ごろ神社に到着。朝、車に預けた荷物を引き取る。神楽殿に荷物を置き、ひと休みしたあとは宝物殿の見学。しかし私は昨日の午前中に入っている。そう、昨日の朝、オリエンテーションで日程表を見て愕然としたのだ。だって入館料が…まあお賽銭ということで。

宝物殿前の広場に集まると、神職が、今日はたまたま鎧に詳しい人がいるから、と案内を一人の男性に託す。この宝物殿には畠山重忠が奉納した「赤糸威大鎧」があり、国宝にも指定されている。
その男性は鎧好きが高じてボランティアでガイドをしているそうで、鎧の話ができるのが嬉しくて仕方がない様子。テンションの高さがティモンディの高岸を思い出させる。

だがあいにく、今回の修行者の中には鎧に特に興味のある人はおらず、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ていたのも1,2人だった。彼はかなりがっかりしながらも、まず宝物殿の前にある畠山重忠の騎馬像について解説し始めた。これは私が好きな北村西望さん(長崎の「平和祈念像」が代表作)の作品だったので、その説明だけは聞いたものの、いよいよ宝物殿2階にある鎧の説明にうつる段になって離団(笑)。ごめんね、興味なくて。

1階のオオカミをもう一度ざっと見て、ふらっとひとり宝物館を出た。
そこで今回世話になっている若い神職の方に会ったので、「昨日ここ見ちゃったんですよねー、修行中に入れると思ってなかったので・・・」とつぶやき、「初めて来たので、鎧より、神社そのものや、おいぬさま信仰の方が気になるんですけど・・・」と言うと、「じゃあ神主さんに神社を案内してもらいましょう」と驚きの申し出。
ええー!?いいんですか?
そんなわけで意外とヒマだったのか、開講奉告祭でお言葉をくださった神主さんが、境内を案内してくださり、おいぬさま信仰や神仏習合の時代のことなど、色んな質問に答えてくださった。

宝物殿の見学が終わり、わらわらとみんなが出てきた。しばらく、境内で自由参拝時間があり、最後の奉告祭の時間がきて神楽殿に再集合した。
この前後の時間に、神職に頼んで御朱印をもらっている人もいた。あららー。昨日、もらっておいたんだけどなあ。これまたお賽銭。
ここで、携帯電話を預けなかった同室の人に、今日は何歩歩いたか聞いてみた。すると約2万7000歩。距離にして17.5㎞。消費カロリーは1000キロカロリー以上だった。できれば高低差も測ってみたいみたいところだ。

さて一同拝殿に上がり、終了奉告祭に臨む。やはり3人の代表者(立候補者)による玉串の奉納が行われ、無事に修行を終えられたことを神様に報告、感謝する。
続いて「修了証書授与式」。一人ずつ名前を呼ばれ、証書を受け取った。最後に貴重品を返却してもらい、16時過ぎ、一泊二日の修行が終了した。

山駆けが始まったときは、あまりの悪路にもう二度と来るまいと思ったが、すべてが終わると、また来ようという気になるのが不思議である。来年も日程が合えば参加したい。

おしまい


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