約束の未来~Re:set~①
あらすじ
史上最年少で地方裁判官裁判長となった一ノ瀬 紅二十五歳。
世間が注目した華々しいデビューの日、時間が止まった。
気が付けば異界の法廷、紅自身が被告人の立場となっていた。
弁護人は幼馴染の蓮城 碧。
「主文 被告人の人生をリセットする」
碧から告げられたのは、彼は紅の幼馴染みでありながら監視役を命じられていること。
時をかける魔力を封じられた紅はどう生きていくのか!?
―――約束の未来に向かって
プロローグ
なぜ、こんなことになった?
私が一体何をしたというの?
「主文、被告人 一ノ瀬 紅、現在より人生十年のリセット、及び時間操作能力の一切の禁止を命ずる」
このバカみたいな主文に、鼻から息がふっと漏れ、嘲笑が浮かぶ。
どうしたって、目の前で起きている出来事を現実として認めるなど、できるわけがない。
けれど、先ほど私の弁護人としてついたこの無能の碧のことだけは、今ここにいる誰よりも信用するしかなかった。
碧だけは、私の現実だったから、一縷の望みをかけて視線を向けた。
それなのに、無情にも彼は酷く悲しい色を湛えた瞳で、私を見据えるだけ。
しばらくそうしてから、呆れているとも哀れんでいるともとれる声色で告げられた。
「何度も忠告はしてきたつもりだ。自業自得だよ、紅」
忠告!? いつ、誰が何を忠告したっていうの!?
もしも、碧から私にだというならば、そんな覚えはない。
だって、私は罰せられるような悪いことをしてきたつもりがないんだもの。
怒りに震える私を、碧は蔑んでいるのか、ため息をついて裁判官の主文に対し、何も異論などないかのように机上の書類を片付けだす。
待って、ちょっと待ってよ!!
「異議あり!!」
何も言わない弁護人に代わって、震える拳を握りしめたまま自分自身を弁護するつもりで異議を唱えた。
「被告人の異議は認めません、以上を持って判決を終了いたします」
感情を持たない無機質な声と黄金のガヴェルが鳴り響き、法廷内に終了を告げた。
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