白血病児への普通小学校の洗礼〜5年生編〜

5年生になる前に新しい担任の先生とお会いすると「病気のことに詳しくなくて」と言われたので病院に一緒に行って、主治医の先生から学校での注意事項(体育は団体競技は絶対だめとか骨が弱いので強くぶつかると骨が折れるかもとか)を説明してもらいました。担任の先生は一生懸命ノートにメモを取っていました。

そうして学校が始まってしばらくは楽しそうに学校に通っていました。新しいお友達もでき、学校から帰ったら公園に遊びに行ったりして。

バレーボール…

でも少し経つと「学校に行きたくない」って言い始めました。学校に行く時間になると「お腹が痛い」って言い出します。よくよく話を聞いてみると「体育の授業が嫌だ」とのこと。バレーボールをやっていて、班に分かれて全員がアタック出来たらプラス10ポイントみたいな。出来なくてもたもたしているとスポーツが得意な子に怒られます。「なんで出来んが!そうじゃない!下手くそ!」

いや、でも出来なくて当たり前ですよね。5歳で入院したからボール投げもしたことない、縄跳びの飛び方も分からないのに。バレーボールのアタックなんか出来るはずありません。

すぐに先生に連絡すると「すみません。私がちょっと欲張ってしまいました。これからは気をつけます」って言われて。

100歩譲ってバレーボールをやるところまでは許したとしても「全員が…」のところは要らなかったですよね。「2回決めた人はプラス何点」とかにしてくれてたら。
もう少し先生に想像力があって5歳から入院してたから運動をやったことがないっていうことを考えてくれてたら息子もお友達に「下手くそ!」とか言われて嫌な思いをしなくてもよかったのに。

いじめの問題

それから前に「全部自分で受け容れる」でも書いたいじめの問題がありました。

後日談になりますけど、その時息子に嫌がらせをしていた生徒さんの1人が中学生になった頃突然尋ねて来て「ごめんで。あの時は本当に悪いことした」って謝ってくれました。
自分が中学に上がって学校でいじめに遭ったらしく、やっと息子の気持ちが分かったと。その時お父さんに小学校の時のことがばれて、さらに相手は白血病が治ったばかりの子どもだったことが分かって「お前、なんてことしたがな!人として最低!」ってものすごく怒られたって言ってました。

謝られた息子は「…うん。」と答えてはいましたが、なんだか納得がいかないように見えます。帰ったあとに聞いてみると「今さら謝られても…。そりゃあ、◯◯君は気持ちが楽になるろうけど…」って言ってました。

確かに時が戻るわけではないし、あの時身体の具合が悪くなるほどしんどかったことがなくなるわけではないので。

今度はバスケって…

そのことが解決したあとは元気に学校に通っていたのですが、しばらくするとまた行きたくないと。「今度はなに?」って聞くと「体育の授業でバスケのボールを顔面で受けてる」とのこと。…え?バスケのボールってけっこう硬いよね…?

…唖然としました。
5年生が始まる前にわざわざ病院に行って主治医に会って話しを聞いてもらっていたはずなのに。特に体育の団体競技は絶対ダメって言われてしっかりとメモまで取ってたのに。なんにも聞いてなかったってこと?

次は運動会…

運動会の時にも参加するよう説得されてたのですが、息子は「100メートル走、断トツで最下位、半周遅れになるかもしれんし絶対出たくない!」って言ってました。そしたら先生が「それだったらスタートの位置をみんなより20メートル、いや30メートルぐらい前にしたらいい」とか言って。…いやいやいや、そういうことではないですよね。それは断固拒否しましたけど。

みんながみんなと言うわけではないでしょうけど、学校の先生って体育をすごくやらせたがります。体育が出来ないとダメ!…みたいな。
最初は「できる範囲で」とか言ってましたけど、やっぱり見た目が元気そうっていうのもあったと思います。そうすると先生の中で「よし、もうちょっと、もうちょっと出来るでしょ」っていうスイッチが入るみたいなんですよね。そうなったらなかなかストップが効かなくなります。誰も先生の言うことに異を唱える人(生徒)はいないので…。

4年生の時に心配していたことが現実に起こってしまいました。お友達にとってはお客さんではなくなったから、やっぱり遠慮や気遣いはなくなっていったみたいで。先生に至ってはもっと酷くて。やっぱり元気な子どもさん35人のなかの1人なので、病気に対する配慮っていうのは難しかったのかなと。

学校という囲いの中に入ってしまうと全く中の様子が見えなくて、本人の訴えがなければ助けてあげることも出来なくて。自分の無力さを痛感するばかりでした。

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