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「海をあげる」上間陽子【読書感想文】※ネタバレあり

著者の上間陽子さんは沖縄の普天間に住んで娘を育てながら、若年出産をした女性の調査をしている。ラジオで聞いた彼女の声と言葉がすごく優しかったのが読むきっかけになった。

基地、家庭環境の複雑な未成年、戦争の爪痕、ハンガーストライキをする男性、いろんな問題が出てきて、それが生活の言葉で出てくるのがすごい。そこで生きる人の言葉って説得力がある。

困難な状況に沈黙しがちな人の声を「あげる」。
正直、重い。受け取った私も沈黙するしかないというか、彼らが声を上げない理由が分かる。大切な話をして相手がスルーしたり無神経だったり、それで傷つくなら話さないほうがいいから。
でも問題が重すぎる。

戦争が起こるのは基本的に外交の失敗なんだから、軍拡は政府の甘えだと私は思う。緊張が高まって戦闘機屋さんが儲かるだけで、なんもいいことないでしょ?


=ここからネタバレかも=


冒頭の「美味しいごはん」で夫と不倫をした女性(友人)と話し合いをするとき、「わたし」が不倫した女性の切なさを想像するシーンがある。自分が被害者なのに、卑怯者の女性に共感したり気遣ったりできてしまうって、本来そんなこと一切必要ないのにって思う。でもその優しさに惹かれて、いざというとき駆けつけてくれる友人がいるんだと思った。そういうのが、つらい人の話を引き出す能力になるんだと思う。

「ひとりで生きる」のホストへのインタビューで、話が時系列に並んでいなくて好き。会話って筋立てて進むものじゃないから、こっちのほうが本当だって感じがする。

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