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小湊鐵道 ⇆  いすみ鉄道

 内房線五井から終点上総中野までを結ぶ小湊鐵道、その上総中野から外房線大原を結ぶいすみ鉄道は、いずれも非電化の単線で、ディーゼル列車が走るローカル線だ。かつては国鉄で、今は私鉄。

 「乗り鉄」「撮り鉄」から「ちょっと懐かしいディーゼル列車に乗ってみるか派=私」まで、幅広い層に人気の路線のようだ。特に菜の花が咲き乱れる春は、線路脇にカメラの砲列もにぎやかだ。桜のシーズンには、沿線の無人駅にも人が来る。両線の終点上総中野が近づくと山の中に入り、四季折々の風景も楽しめる。

 小湊鐵道は、駅名も興味深い。海士有木あまありき馬立うまたて飯給いたぶなどは、その代表格の難読駅名だろう。無人駅は、古い駅舎で、往年の面影がある。

 撮ったはずの途中駅の写真が見つからず、ご紹介できないのが誠に残念だ。

 小湊鐵道の始発駅五井には車庫があり、国鉄時代から引き継がれた年代物のディーゼルカーの勇姿を拝める。北海道でよく乗ったキハ40系や20系が現役保存されていて、思わず感動した。キハ40系なんか、「新型」扱いだ。

五井駅構内の列車入れ替え。このキハは特に古い。
単線運行なので途中駅で対向列車を待つ。4種類のキハが壮観。

 休祝日など観光シーズンには、蒸気機関車が牽引するトロッコ列車や、お座敷列車などの臨時観光列車も運行される。「房総横断切符」を買うと、五井・大原間が一日乗り放題となる。ただ、列車数が少ないので、時刻表とにらめっこする必要がある。

 孫を連れて、トロッコ列車に乗り、上総中野で一両編成の菜の花列車用ディーゼルカーに乗り継いで、その横断切符を試してみた。新幹線・「普通の」電車と地下鉄に、たいてい親の用事でしか乗ったことのない孫は、車窓を流れるのどかな田園風景に興味津々で、列車を見て手を振ってくれる沿線の人に、手を振りかえす。小さな橋から見下ろす小川、ヒンヤリするトンネル、上り勾配のエンジン音、さらに途中駅で売られる饅頭や特製のおやつに、大喜びで、「楽しい。また来たい」と、今度はおじいちゃんを喜ばせる。

3両の客車の真ん中がトロッコ風、可愛い蒸気機関車が引っ張る
ゆっくり進むし、駅では列車交換で、長い停車
途中駅では、弁当・飲み物・地元産産品を売る店が開く

 車窓を流れるのどかな田園風景、小さな橋、上総牛久から先は山の中に分け入っていく。切り通しやトンネルが続く。

トンネルに入るとひんやりする。孫も初めての体験。

 途中、養老渓谷駅で下車し、次のディーセル列車を待つ間に、駅前のベンチで持参の弁当を広げ、駅のそばを散歩した。空気が良いので、少食の孫も弁当完食。

養老渓谷駅で昼食のため途中下車

 上総中野駅は、小湊鐵道といすみ鉄道の接続駅で、小湊鐵道を降りると、向こう側にいすみ鉄道の列車が待っている。

上総中野駅のいすみ鉄道ホーム

 休日の観光列車でなく、平日の普通列車に乗ると、乗車率は大変低い。

平日昼間の大原行き車内

 いすみ鉄道途中の大多喜は、古い城下町で、再建された大多喜城、古い商家が並ぶ旧街道街など、観光名所が徒歩圏内にある。

いすみ鉄道途中の大多喜駅には、小さい車庫もある

 東京からさほど遠くない日帰り圏で、変化に富んだ沿線風景。「ここはどこだ?」のような、林間鉄道のような雰囲気も味わえるし、海が観たければ、終点大原駅から漁港までも遠くない。

 これから、菜の花や桜の季節がやってくるので、ぜひ一度、鉄道旅に出かけてほしい。実は、小湊鉄道もいすみ鉄道も、前回あげた銚子電鉄同様、採算が取れず、存続が常に危ぶまれる路線なのである。私もこの春には、なくしてしまったらしい駅の写真を撮るのを兼ねて、また行こうと思っている。

(了)


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