79 耐え忍ぶという正道

 この世で生きてみると、さまざまな出来事に遭遇しなくてはいけないのです。気に入る出来事も起きますが、気に入らない出来事のほうが多いのです。出来事が自分の気に入ったら、舞い上がって喜ぶ。気に入らないと、落ち込んで悩む。犯人はいずれも、おのれの自我という錯覚なのです。この自我の錯覚をなくすために、人は耐え忍ぶという修行をするのです。修行はけっして簡単ではありません。自我という錯覚と闘うことになります。でも、せっかく生まれたのだから、人は自己開発して進化しなくてはいけないのです。自然の流れに身を任せていたら、進化はありません。自然の流れに逆らうこともできないのです。そこで、耐え忍ぶという正道が現れてきます。心の中から来るトラブルは忍耐する。周りから来るトラブルに対して堪忍する。そこで自我の錯覚がじわじわ消えてゆくのです。自我の錯覚がない人は覚りに達しているのだ、と言うのです。ですから、本物の修行とは、忍耐と堪忍なのです。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第2章 仏教の教えを理解する《修行》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【月刊「武道」 2015年9月号】

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