100 今の原因なら正確にわかる

 私たちは因果法則を探るときに、勘違いするところがあります。それは過去をさかのぼってみることです。それが必要な場合も、関係ない場合もあります。過去の原因を探すと、当然すべてを発見できないのです。発見しても、いまさらどうすることもできない場合もあります。過去にさかのぼらないで、いま起きた現象のいま現在の原因は何なのかと調べるならば、より正確に原因を見いだすことができます。たとえば、なぜ蛍光灯が光っているのかというと、電気が流れているからという答えが見えます。エジソンが電気を発明したからではないのです。なぜこの人は糖尿病なのかと医者が調べる場合は、その人は二十年間にわたって生活習慣が悪かったからだと発見しても治療はできません。いま現在の原因のみを見ると治療が成り立ちます。因果法則は物事の過去現在未来の流れを解明するものにしなくても結構です。それは正しく知り得ないし、観念的な、形而上学的な、非実践的な話になってしまう恐れがあります。お釈迦様と同じく私たちも因果法則をさまざまな問題において解決策を見いだす目的で、いま現在の因縁を調べて利用したほうがよいと思います。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第2章 仏教の教えを理解する《カルマ》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの実践心理学 第六巻 縁起の分析p297】

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