写真嫌い

ブスな私は当然、写真を撮られるのが嫌いである。

「嫌だ」って言っているのに無理矢理撮ろうとする人が稀ではあるが存在する。

以前、バッグを作る工房で働いていた事があった。完全手作りバッグは、一つ4,5万で売っていた。

工程はたくさんあり、完全分業制で作られていたのだが、私は才能があったようで、織り以外の工程を覚えるのが早かった。本当は織りもやりたかったのであったが、勤務時間の関係でさせてもらえなかった。フルタイムパートで働いている人だけが織り作業を許されていた。

入職してまもなく、一点物の作成を任された。

最初の一点物は、通常の織地に、自由なデザインで刺繍して良いとのことだった。

色々考えて、自分でいうのも何だが、オリジナリティに溢れる刺繍ができた。
せっかくなので、その生地の縫製までやらせてもらった。

完成した後、恒例の写真撮影があった。作品を持った写真を撮られるのである。私に取っては初めてで、他の人がいつも撮られていたのは知っていたが、自分も撮られるとは思いたくなかった。私は撮られたくないので「嫌だ」と言ったのであるが、作品を持たされ、チェキのレンズを向けられた。

作品を撮られるのは構わない。作品を顔の前に抱えた。しかしいつまで経ってもシャッターの音がしないのでカメラの方を見た途端に写真を撮られてしまった。私としては騙し討ちにあった気しかしない。しかし私が非常に不愉快であった事体無視されていた。その事は、自分の中だけであるが、大きなしこりとなって残っている。

一点物は全部で3作品作成した。どれも人気で、すぐに商品として売れたので、自分の手元にも工房にも残っていない。

私は美しくないが、私の手は美しいものを作り出せる。それだけは自信がある。

だから、作品を撮られるのは嬉しいが、自分には決してカメラを向けないでほしい。騙し討ちのように撮るなんてもってのほかである。

作品を作るのはとても楽しかったのであるが、他にも色々あり、そこは一年ちょっとで退社したのであった。

バッグ作りそのものはとても楽しかっただけに、とても残念であった。



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