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コトヴィア〜いつかあのウィナーズサークルで〜3

レース出走予定3日前、木曜日

(もうすぐだな)

そう思いながら仕事の片付けをして帰宅の準備をする。コトヴィアは前走3着。未勝利戦で5着以内に入った馬は1ヶ月以内に次のレースに出走する場合は優先的に出走する事が出来る。コトヴィアはその条件を満たしていたので今週のレースに登録した時点で出走はほぼ確定していた。

 職場を出て車を運転して帰宅、その前に広尾のホームページを開く。口取り参加のページをクリックし口取りに応募する。3つ目の関門をクリア出来るか···あとは運を天に任せるのみだ。


金曜日

この日は休みでいつもの休日を過ごしていた。正午頃、真平からLINEが来る。ちょうど昼休みのようだ。

「日曜日、阪神競馬場の指定席取れたから会社の人と行ってくるわ」

なんというタイミング。自分も出資馬コトヴィアの応援に行く事を送ろうとした時、Gmailの着信の通知がくる。

口取りの結果のお知らせだ。どきどきしながら受信BOXを開き件名を見る。

"口取り参加当選メール"

当たった!3つ目の関門、口取り参加の抽選も突破!2月に続いて2度目の当選。運がいいのか、それとも申し込んでる人が少ないのか?まあそんな事はどうでもいい。真平に自分も日曜日に出資馬コトヴィアの応援に阪神競馬場へ行く事、口取りが当たった事をLINEで返信する。

「まじか!タイミングええな!ほなコトヴィアのレースの時は下に降りるわ。ゴール前で待ち合わせしよか!」

楽しみが一つ増えた。後はスーツの用意をして、当日に向けて体調を整えよう。変なウイルスにかかるのだけは御免だ。

 レース当日朝6時。普段より1時間くらい早く目が覚める。仕事の日だとなかなか起きる事が出来ず、起きた後もしばらくボーっとしている。それなのに今日はスッキリとした目覚めだ。毎日好きな事をしていたら健康的な生活を送れるのではないかと思ってしまう。

 ベッドから起きてリビングへ向かう。まだ誰も起きていないだろうと思ったがリビングには既に妻と娘がいる。

「おはよう。起きるの早くないか?」

「お父さんおはよう。早く大きい滑り台行こうよ!」

私より娘の方が気合が入っている。どういう事だ?ちなみに娘も普段は保育所に行きたくないと言いながらグズグズしているが今日は全く違う。変な所で父娘似てるなあと思う。

 そんな娘に私と妻は急かされながら7時半頃に自宅の淡路島を出発。西宮市まで車で向かう。バスと電車を乗り継いで行くのもアリだが、今日はコトヴィアのレースを見終えた後は箕面の日帰り温泉に行く予定なので車で行く事にした。車だと時間をそれほど気にしなくてもいいから楽だ。運転手以外は。

 約1時間半かけて西宮市にある西宮北口駅に到着。駅に隣接するコナミスポーツクラブにあるタイムズの駐車場に車を停める。消防団の人達と競馬場へ行った時にこの駐車場を教えてもらった。駅に近いのに料金は1日最大1,200円、穴場だ。

「いつもの駐車場、今日も空いてるね」

妻と娘を連れてここに来るのは3回目。連れていってもらう側の妻も覚えてるようだ。

 車を降りて娘の手を引いて駅へ向かう。歩道を歩いて左側にファミリーマートがある交差点を左に曲がると西宮北口駅が見えてくる。ロータリーにあるエスカレーターを昇ると南改札口。券売機でIC切符にお金をチャージし改札へ向かう。

「ピッてしたいー」

そう言う娘にIC切符を渡して抱っこして改札を通る。娘を下ろした瞬間、彼女は宝塚方面へ向かう電車のホームへ走り出す。もうすぐ大きい滑り台がある所(競馬場)に着くのが分かってるのかな。ワクワクしてるみたいだ。私も友との再会、それと念願の口取りが叶うかも知れないと思うとワクワクする。

「ちょっと待ちなさい!走らないの!」

そういう妻の声もいつもより柔らかい。妻は競馬場の後の温泉が楽しみのようだ。三者三様それぞれの楽しみを持って一つの目的地へ向かう。阪神競馬場まであと少しだ。


続く


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