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ゴールドブレス〜蘇る名馬の記憶〜4

ゴールドブレスのデビュー当日。土日は基本仕事の私はこの日も普段通り仕事へ向かう。

(土日が仕事って一口馬主にとっては痛いなぁ。でも仕事をしないと家族を養えないし、もちろん一口馬主も出来ない。だから仕事をするんだ!)

出資馬が走る時はいつもそう思う。もう何千回同じ事を考えた事か。そんな事を思って仕事のモチベーションを保っている。

 小倉競馬の6レース12時30分過ぎの出走、もうすぐだ。小倉は天気が悪いようで馬場状態は重馬場。初めてのレースだから出来ればきれいな良馬場で走ってほしかったが···そんな事を思いつつ仕事をする。休憩に入れるのはレース後1時間くらい経ってからになりそうだな。それまでは仕事だ。


 休憩に入ったのは14時頃。早速スマホを見る。

LINEが2件来てる。真平からのLINE

「おいおいおい!すごいやん!強いぞこの馬」

···勝ったのか??と思う。

俊からのLINEを見る

「惜しい!!!」

···勝ってないんかい!そしてレース結果の確認。


2着


最終的には単勝は5番人気だったよう。人気を上回る走りだったようだ。レース経験馬が相手だったけどよく頑張った!

 その夜、自宅でゴールドブレスのレース動画をじっくり観る。

12頭立てのレース、ゴールドブレスは3番枠から発走。「スタートが優秀」と評価していた調教師の言う通り、スタートを無難に決める。スタート後はうまなりで内ラチ沿いの5〜6番手を追走。道中は頭を上げたりしてる時もあり、あまり集中して走っていないように見える。

レースは3コーナーへ。ゴールドブレスは依然内側の5〜6番手。ここで鞍上の藤岡康太がゴーサインを出す。それに反応したゴールドブレスは内側の空いたスペースに進路を見出すとグングンと伸びて直線に入った時は2番手まで上がってくる。最後は先頭の馬を捉えるまでは行かず2着。

少々荒削りなレースだったが、3コーナーからは見応え充分のレースだった。この先が楽しみな馬だ。

(それにしても3コーナーから直線入り口までのあの走り、似てるな)

そう思いYouTubeを開く。

(このレースや!)


それは父ゴールドシップの皐月賞。


 2012年4月15日皐月賞。単勝4番人気のゴールドシップは後方から2頭目、17番手からレースを進める。この日の馬場は内側が荒れており、たとえ距離ロスをなくして内側を走っても必要以上にパワーを使い、最後はバテてしまう。だから他の騎手はみんな馬場状態の良い外側に自分の馬のポジションをとって走っていく。

ところが3コーナーでゴールドシップの内田博幸騎手だけは誰も走っていない内側に進路を取ると、荒れた馬場をもろともせず力強い走りで直線に向いた所で後続を離して逃げていた2頭の馬の後ろ、3〜4番手まで上がってくる。"内からゴボウ抜き" なかなか見れないレース展開。ファンの間ではこの走りを「ゴルシワープ」と呼んでいるらしい。本当にワープしたような、あっという間の出来事だった。

勝負所で勢いが付いたゴールドシップはそのまま直線で突き抜けて完勝。荒れた馬場でも走れるとその適性を見抜き、馬の能力を信じて乗った内田騎手のファインプレーでもあった。


 ゴールドブレスは父ゴールドシップのような力強い走りにはまだまだ及ばない。でも初戦の走りに父の現役時代の記憶が蘇る。そして私が大好きだったコスモバルクの姿が過る。なんとも不思議馬。ひょっとしたら自分が出資してるから身内贔屓でそう思うのかも知れない。でもいつの日か父のように大舞台で力強い走りをしてほしい。

一口馬主の想いは無限だ。
                終わり


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