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笑う君へ 第八話 「再会」

私、齋藤飛鳥は今絶賛緊張しています

楽屋で準備がほとんど終わったのですが、

初対面の人に自分から話しかけないといけません

ふう、落ち着け飛鳥、私はやればできる子


コンコン



飛:は、はい、どうぞ

○:失礼します、挨拶に参りました

  大野○○です。チャコールという名前で活動しています。

  本日は撮影、よろしくお願いいたします。

飛:はいよろしくお願いします

  乃木坂46の齋藤飛鳥です

○:それではあと10分ほどですかね

  ではまた後で

  お待ちしてます



ガチャ



そういって部屋を出ていく大野さん


飛:(ミスった~、今チャンスだったじゃん、急に来ないでよ~)

マ:どうかしたの?



顔に出ていたのか、マネージャーさんに声を掛けられる




飛:大野さんに聞きたいことがあったんですが、忘れてて

  撮影後に聞きに行きます

マ:あら、そうなのね

  それにしても顔も髪型もかっこよかったね

飛:そうですね~


整った顔をした人が多い業界だが、

その中でも少し違った系統の良さがある顔

挨拶も含め、彼自身に興味を抱きつつある自分がいた


〜〜〜〜〜


撮影の最初の7割は彼は一緒に撮られる側として一緒だった

基本的に私にフォーカスを当て、彼がそれを引き立てる

身長が180近くあり、しっかりした体つきの彼は後ろでも存在感があった

それでいて、目立ちすぎず、ポージングで視線誘導までする

今まででもトップレベルにテンポよく撮影が進んだ


続いて彼が撮影側に移動し、私一人を撮る

10枚も撮らないうちに彼が私に近づいてくる



○:何か悩み事か考え事でもありますか?

飛:え?

○:あぁ、本当にあるんですか笑

  ちょっとさっきまでのコラボの感じで雰囲気硬くなりすぎてたから

  雑談でもと思ったんですが...

  なんか今話しておきたいことあります?

飛:あ、その、大野さんに聞きたいことがあって...

○:はい

飛:でも、撮影の後でもいいですか?

○:もちろんいいですよ

  少しはすっきりしましたか?

飛:はい...

○:う~ん、ちょっと目を見てもらっていいですか

飛;え、は、はい


ジー


飛:(何これほかの人も見ている前で...)



グシャ ニッ

飛:ぷふっふふふ


急な変顔に思わず吹き出してしまう


○:いい笑顔ですよ

  そのぐらいの日常感ある笑顔が欲しいです



パシャ


飛:え、今のも?

○:どんどん行きますよ~



その後の撮影は少しのドキドキ感と楽しさが時間を感じさせなかった


〜〜〜〜〜

撮影が終了すると時刻は17時、予定より1時間早く終わった

すぐに彼が駆け寄ってねぎらいの言葉をかけてくれる



○:この後、楽屋に伺えばいいですかね?

飛:私から行きますよ

○:いやいや、そういうわけにはいかないでしょう

  支度はすぐ終わるんで、入ってよかったら扉開けてください

男:何話してるの~?



二人の会話はすぐ周りの人の興味の的となる

私はアイドルで彼はモデル

ゴシップ好きの業界の人には格好のターゲットだ




○:いや、さっきの撮影で何枚かオフショットも撮ったんで、

  それを渡そうかと思いまして

  じゃあ、自分荷物まとめてきます



そういってすぐその場を離れる彼



男:なんだ、それだけか



そういった声がちらほら聞こえるが、

私も無視してマネージャーさんのもとへ



飛:お疲れさまでした~



10年で培われたスマイルでその場から楽屋へと向かう


〜〜〜〜〜

私も着替えが終わり、彼を迎える

マネージャーさんがいなければ悪い噂がたちそうだと思った

質問はバスケのことですか?

先に口を開いたのは彼だった


○:聞きたいのはバスケのことですか?

  それ以外思い当たることがないんですけど...

飛:あ、はい、そうなんですけど、ちょっと違くて

  でも、元日本代表の大野選手で間違いないんですね

○:U-15ですけどね

飛:それで質問なんですが、アメリカで電話番号をもらいませんでしたか?

  病院で渡されているのかなと思うんですが

○:電話番号....

  あぁ、すぐに帰られた方かな?

  病院の記憶はあんまりないんですけど、電話番号のメモは残ってますね

  なんでそれを知ってるんですか

飛:その電話の人の知り合いなんです

  できれば電話をかけてみて欲しくて....

○:写真が入ってるはずなのでいいですけど...

  一応聞きますが電話かけても問題ないですよね

飛:大丈夫ですよ笑

○:それじゃあ



電話は思ったよりすぐに終わった

なんでも、この後ご飯を一緒に食べるらしい


○:一緒に行きませんか?

  無理にとは言えませんが、二人だと気まずいですし

  齋藤さんとももう少し話してみたいので

飛:う~ん



突然の提案

私も彼の話を聞いてみたい気持ちはあるし、もう仕事はない


飛:マネージャーも一緒でいいですか?

○:全然いいですよ、お店だけ決めてそこ集合にしますか



数時間後、お店でしっかり話した私たち

奈々未は泣きながら大野君を溺愛

彼も涙目になりながらいろいろ話してくれた

奈々未がつぶれると彼は今日の仕事について話し始めた

緊張していたが、楽しかったし、飛鳥さんがすごいんだとべた褒め

私もお酒が入り、つい話し込んでしまった


〜〜〜〜〜


気が付くと朝、知らない部屋

服は昨日のままで隣には奈々未とマネージャー

痛い頭と眠い目をこすりながら体を起こすと、

サイドデスクにメモを見つける



「みなさん、お疲れのようでしたのでホテルに泊まっていただきました

撮影もご飯もご一緒出来てよかったです

またいい笑顔撮らせてください

大野○○

p.s. 電話番号です

マネージャーさん経由でもいいので登録していただけると嬉しいです」



わざわざ3人別々のメモを律儀に残して、彼は帰ったみたい

重い体とは裏腹に心軽やかな朝を迎えられた



〜〜〜〜〜

その後、雑誌の好評もあって、彼と一緒の仕事は増えた

彼はなんでもできて、心からすごいと思うが、全くいやらしさがない

珍しく心を許せる年の近い男性ということもあり、時々話すこともあった

年が変わり、内々で私の活動が年内一杯であることを知ると特別チームが組まれる

そこには奈々未の姿もあった

卒業写真集の手助けで○○もメンバーになり

一時的にではあるが社員登録されたらしい

いい締めくくりになりそうだと実感していた


飛:いつの間にか写真が撮れるようになってるなんてね

○:見られ方の勉強ですけどね、楽しいですよ、きれいなのが撮れると

マ:はーい、みんな静かにー

  まずは、飛鳥
  
  要望に合わせたカットデザインとか衣装、用意しているから見てくれ

飛:はーい

マ:大野はまず、大学の報告を

○:初日に遅刻してきたので、特別なことはないですけど...

  それでも、あの3人は目立ちすぎますね

  同級生も色めき立ってましたから

マ:そんなにか

○:男子が多い学年なんでなおさらかもしれないですけど、

  僕が恨まれるのは確実ですね

マ:それはすまない

○:大丈夫ですよ

マ:格闘技、少しやってたんだろ

  いざとなったらそれで逃げてくれ笑

○:善処します笑

マ:他、特に報告なければ、飛鳥の衣装見といてくれ

○:了解です

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