蚊帳

日記とてがみ。

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爆心地から一番近いラブホテル

田舎の高校生の頃。塾の先生の息子が帰郷して、教室に顔を出しにきたことがある。膝までのズボンの下からふくらはぎ、左脚のタトゥーが欲情を誘う。初めて見た!憧れていたのは都会にだったろう。あの頃からも、子供の時からも、ずっと男にサカっていたなあ。 タトゥーの男と寝たのはあれから何年も経った頃、駅の栄えていない側で待ち合わせた。 細い身体中にどこかの先住民族の絵、車がやたらと大きかった。公園の横をすぐ曲がった所にあるホテル、もう行くことはないだろうな。複雑な気持ちになったか、時をと

    • 散文まる

      何も浮かばない。煙草の火を消そうとしてまだ吸えると引き返す。下半身は下着から羽が生えている。あの人のことを思い出す。あの人も、あの人も、早く私に触れてほしい。ふたりでひとつの百均のサンダルみたいなやつが寄り添ってたてかかっている。3本の指でトイレットペーパーの芯を三つつまむ。使い物にならない乾いた柔らかい紙がはためいている。埃まみれの蓋を開けて磨いてない歯に不快になる。味わった後に冷静になり捨てる。無くした指輪をみつける。見つけてからの方が不安になる。腕の傷をみてみぬふりした

      • ないけど、(羅列)

        夜は物騒な繁華街のなかに蔦と植木に埋め込まれたような花屋があったのを思い出してメッセージください 彼をくん付けで呼ぶ人がまだいるか怖くてきけないこともある意味ではない 誰かと話したいと思って思ったが今流れてたようなの忘れてて無理矢理剥がした ま赤な服の上下を着てた頃の身体には戻れないもの音である意味は無い

        • 気象と自転

          濡れた空気は雨水のなかにまだいるといっていた 太陽の光があると月がしらせてくれるに雲がなん度も自分の方がお前の近くにいるぞとうるさかった

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        爆心地から一番近いラブホテル

          浴槽

          一年前のわたし、かわったかたちをしているのか、ゆれる輪郭が上野で行き来することすらままならない。 死なないでおやすみ。そうしてほしい。 濡れた耳の中が待ち遠しく、凍えながら風呂が沸くのを待ち、煙の中で生き延びていた延びた前髪がじじっと焼けた。

          車掌が見つけるその頃

          都心に向かう車両のなか、十代の、赤くうすく四角い宝石は 座席の下に闇を吸って反射光を吸ってひかりを吸っておさまって、本当のことを隠すための仕事を終えた顔をしている。 冊子のあいだに挟まっては、傷がつく事もないだろう。

          車掌が見つけるその頃

          はらわたの宝石

          かがやいている ひとみは濁っても、胆嚢はとうめいのみどりで指輪にしたいくらいだ。破けば苦いエメラルド。うろこたち かつては整えられたマジョーラの根源のかがやきは、刃でそがれ泥のようだった。 一番小さいのから絞めるとはなした。不慣れな捌きでいちばん苦しませてころした。絞めるじゃなくて、ころすだろう、ごまかすことば。きみはしめころされたいんだっけ。 さかなにはされたくないことをしてきみにはされたいことができないきょうの両手の先はどうも冷え切っているこおったみずと変わらないほとつめ

          はらわたの宝石

          はだしのまよいご

          幽霊として駆け回るこどもは母親を探し出しているころだろうか 部屋の外の話だから別にいい わたしはひとりでましになりたくてただこの柔らかい肌に記憶を残したことを悔いていた 空のスプレーのもたげたくびはうなだれて中身のなさを訴えている 籠のプラスチックは規則正しく並んでいるのに二重にした途端に規律が乱れる きみはたくさんのたくさんの線の記憶をひと舐めして 束にしてのみこんだ 革の詰まる音は壁にぶつかり弾けた 道化として割れたつまさきを知らぬふりして何度もまわる 角まで、空気がぐち

          はだしのまよいご

          白を背に

          日を背に車両にのれば 積み木のようなのの、外壁の白が目に刺さる 白はいちばんきれいでいちばんいたみを受け取る色 右上がりの字はでんちゅうがすきなのか?噛んじゃった。 一つの窓から沢山の頁のかけらを題した文字が右へ右へうなぎのぼりか。 N先生の板書は右下がりで美しかった そして一番後ろの席だと読めなかった 当てられて わかりません いたみをうけとる それも白の粉の字。

          白を背に

          話の話

          私の話をしよう。きみは私よりも細いゆびできめの細かい肌だった。間を持たせようと言葉を並べ立てた。硬い皮膚をさらに硬くするかのようだった。沈黙は回遊魚の死のようにこわいかのようだった。皮膚は白く薄くてほおのほくろが大きいのとちいさいのと中くらいので反転した夜の空の写真のように見立てることとした。冬の寒さを身体が思い出していた。 私の話をしよう。布団の中にある親指と人を指さない人差し指のあいだは綿の室内履きに食い込まれた違和感で居心地悪くしていた。はだかのあしではもう歩けないよう

          欲しがるます 忘れがるます

          私はあなたの名前をしらないし、きっとあなたも私にはずっとおしえてくれないんだろう 何者でもないからこそほんとうのこころが剥き出しにできる、そういう相手であることを信じていくしかないみたいで、形なき信仰はタブを閉じれば消えうせる オ母サン。 草野心平の詩 ヘビノ眼ヒカッタ。 草野心平の、詩 わたしも忘れることできるのかね 青い花を燃やしたならきっと炎は血のように真っ赤だろう 忘れたのならばきっと 青も花も、炎も血も 赤も全て名前のないものになるかね 言葉を持たぬ方がいいか

          欲しがるます 忘れがるます

          カーネーションの嫌いは母譲り

          ああ私誰が好きだったんだっけって工場に挟まれた道で脳が曲がって、正しく家に着き、しなければならない電話を。する気にならない。 義務として苦しい話をして、閉じる。 もう、私は…泣きそうだ。 鴎を今年は見ないね。 小さな花束  好きではない花といろ  ばかりなのに寄せ集まるとうつくしいものだ。 わたしを現実に繋ぎ止めてくれた新しいかぞくと、わたしを送り出すかぞくと…わたしはかぞくになれない人を心の真中に携え、紙のようなありがとうを述べる

          カーネーションの嫌いは母譲り

          重苦のころ

          みっつの電球は目を刺すだけで、それでも羽虫は太陽だと信じて頭突きを繰り返しいずれ明日の朝にはしんでいる。 木曜に髪を切りもう一度髪を切る間に、会える予感のないしらせ。それの代わりとして読むことにした。 覗き込んだ何年も前の、黒い廃油のような詩はこらさずともマーブルの虹いろに渦巻く。光り輝くことの逆のように土に染みいる言葉の重さがある。そちらの方が身体に影響を及ぼせる。何度も染み込ませるように目玉を転がす。 わたしそのころ19だった。それだけの感想でも刺してしまうだろうかな。

          重苦のころ

          洗礼のあとさき

          平たい四角のかたちをした自分の分身のことをおもうと、存在が危うく、ふるえる こわくて、とてもこわい。 まだ夕日に変わる前の午後の日が、アームカバーをしていない二の腕にやわらかくふれる あたたかいか、冷房の風に守られているからだが。 たすけてほしいとみな、鳴く赤子の真似をしている。へたくそなので、拳を使ったり、性器を使ったり、言葉を使ったり、思い思いにとんちんかんなモノマネもどきだ。おそろしいよ、額に水をかけられたことのない我々も、私を見ろとほんとうの赤子のようにふるまうのは

          洗礼のあとさき

          運転見合わせ

          駅の構内ではひとしにのしらせ、かもしれないものが流れていて、新しくできたホームドアは給料泥棒のように顔を伏せたがっている。 あのひとの好きな詩集は図書館にはないことがわかり、仕方なくしらない人たちの詩作にめをすべらせ、自分のあたまがいかに空かを覗き込む。 難しそうな顔をして老人たちはただ皮脂の匂いを乾かしに来ているだけだろう。 美術書の背をみる。重たくて汗がもったいなくやめる卑しい心持ち。昔は両腕で抱えて持ち帰っていたようなもう古くなった記憶も、この暑さに押し流されていく

          運転見合わせ

          からだだから

          お医者になっても辛そうな人、自分ひとりで心は治せないからだ。 嘘をついてまで会う理由はあなたよりわたしなのだ、わたしの中がすべて、汚れた肉体を涎と性液で流したがっているのだ。 前より十キロ増した言うのにわたしよりよほどしなやかなからだ。 次の女は私より優しくて誠実だといいね。私は身体を差し出しても、死ぬまで添い遂げられることはないからだ。

          からだだから