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わしの日常(2022年8月)

8月△日
NHK「グレートトラバース」の田中陽希を見てふと思った。
宮島弥山に登り、そのまま走って帰宅したらどうだろう。
宮島弥山には何度も登っているが、宮島口までの往復はいつも車だ。
今回はJRで行って、フェリーを降りたら標高535mを上って下って島内を約9㎞。宮島口から自宅までロードを約30㎞。
ちょうどいいじゃないか。

いつもならフェリーを降りてノンビリ海を眺めながら登山口まで歩くのだが、今日は違う。
いきなりダッシュだ。観光客がギョッとした顔で見ている。
宮島桟橋前広場から町屋通りを抜け、紅葉谷公園を突っ切り一気に登山道入口到着。
ここまで10分。
苦しい。
もう息が切れているが急ぐには理由がある。田中陽希みたいに登山コースタイムの半分の時間で登ってみたいのだ。

宮島観光協会のホームページによると、紅葉谷ルートのコースタイムは、1時間30分から2時間とある。
ならば、僕は1時間を目標にしよう。

弥山原始林の荘厳な空気に、荒い息遣いが響く。
途中一切休憩することなく、霊火堂まで来た。
三鬼堂下の階段を駆け上る。
あとちょっとだ。

そして・・弥山頂上到着!

山頂には誰もいなかった

ぴったり1時間、目標達成だ。
でも待てよ、下山したら30㎞のロードを走らなければいけない。
それを思うと・・ああ、喜びがどんどん薄れていく。

8月○日
この店に入る時は一度ドアの前で気合を入れる必要がある。
安易な気持ちで入店してしまうと、女将さんのペースにはまってしまうからだ。

先日、「天津麺定食」のご飯抜きを注文したところ「ご飯を食べないでどうするの!」と言われ、気づいたら満腹になっていた。
また別の日、「麻婆豆腐定食」を注文したら「麻婆豆腐はいつでも食べれる。今週の週替わりメニューは冷麺だから冷麺にしなさい」と言われ、気づいたら麺を啜っていた。
あれ以来、ずっと心の中にマーボーの火がメラメラと燃えていた。
あたかも、弥山霊火堂の「消えずの火」のように。

そこで今日は、注文を聞かれる前に、席に着くなり間髪を入れず麻婆豆腐定食を注文する。
先手必勝だ。

僕の熱意に圧倒されたのだろうか、すんなり注文を受けてくれた。
「辛いけど、大丈夫?」汗だくの僕を見て気遣ってくれる。

すみません、辛みが足りないので、唐辛子ください、ウソです

やがて皿が運ばれてくる。粉山椒の香りが漂ってきた。「熱いから気をつけてね」女将さん、お気遣いありがとう。まずはスープから。とろみのある中華スープは意外に熱いので注意が必要だ。フウフウしたのに、まだ熱っ!そして、いよいよ麻婆豆腐だ。これは単体で食べるよりも、ご飯に乗せて食べた方が絶対に美味いのだ。

レンゲですくって茶碗に乗せて・・・あっちょっと乗せすぎたかな。
まぁいい。まず一口・・辛っ!熱っ!
ああこれこれ、これこそが麻婆豆腐だ!

8月×日
7月に参加した「やまぐち萩往還マラニック&ウォーク大会」は、往還道の一部、萩から山口までしか歩いていない。

街道自体は、防府の三田尻まで続いており、完踏したとはいえない。
中途半端は嫌なので、山口から防府まで約35㎞を歩くことにした。

夏真っ盛り、尋常でないくらい汗をかくだろう。
汗が目に入って前が見えなくなり、つまづいて転んだら大変だ。
そこで今回は、新兵器「汗止めヘアバンド」を着用した。

ヘアバンドといえば世良公則だ、「あんたのバラード」だ。
あの歌を初めて聞いたのは高校生のときだ。
何だこの歌?演歌のような、ロックのような。歌う際の身体の動きも奇妙だった。

歌詞も変わっている。「・・あんたの歌うあの歌を 今夜はあたいが歌ってあげる・・」
あたいって?今までの人生経験の中で、自分のことを「あたい」と呼ぶ女性に出会ったことがあるだろうか?
これから先にあるだろうか?いや、ない!

あたいはついに萩往還の始点(終点)に立った

今日帰宅したら、妻が「今晩のおかずはあたいの得意料理の麻婆豆腐よ」と言ったらどうする
あたい?! 疲れが一瞬でぶっ飛ぶほど驚くに違いない。

それにしても、幕末の志士に想いを馳せることなく、「あたい」についてひたすら考えながらこの街道を歩く奴がかつていただろうか?

いや、いない!


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