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たった3ヶ月、されど3ヶ月


私は夜間大学に通っているとき、合唱部に入ったが、その前に3ヶ月だけ、ブラスバンドに入部した。食堂で、ご飯食べていたら、ブラスバンドの先輩に声かけられて、高校の時は楽器したことないけど、それでもいいか聞いたら、それでも入ってほしいと言われ、少しやってみたい気がして思いきって入部した。入ってみて驚いたことに、女性部員が二人しかいなかった。フルートとクラリネット。私はフルートを女性先輩から教わることにした。

夜間大学では、クラブは講義のあいた時間に練習などするが、終わった後も練習してかなり帰りがおそくなる。私は家から大学まで1時間半位かかった。

ある時、かなり遅くなって、同期の一人が家まで送ってやると言ってくれた。それもオートバイで。オートバイなんて初めて乗るので考えただけでも怖い😂
いったんお断りしたが、自分の家も途中にあるからと言って、否応なしに乗せられた。
ひぇ~🤐
どれ位乗っただろうか。途中で止まり、ちょっと待ってて、と言われ、彼はおそらく自分の家であろう家に寄った。

窓にほんのり灯りがともり、なんだかその灯りが幻想的に見え、思わず、体が温かさに包まれた。
気がついたら怖さがふっとんでいた。
その時、彼は強面でいかつい感じだけど、ほんとは心の温かい人なんだなと思ったことを覚えている。

その後、家が遠すぎて、通うのに、疲れたこともあって、私は下宿を探した。そして見つけたところは大学に近く、家賃も8000円と安かった。3畳位の部屋に、半畳もない炊事場。トイレは共同、そして小さな窓から隣の家の壁まで10~20cm位の幅。何とか洗濯物が干せるくらいだ。お昼でも真っ暗だった。とても寂しかった。

そこに引っ越してからしばらくのこと。同じクラブの同期の彼と、同じ駅なので、たまに一緒に帰った。そして下宿の話をすると、彼はホテルでアルバイトしてたから、余った古いテレビがあるので、処分に困ってる。持って行こうか?と言ってくれた。
もちろん、私はテレビがあれば寂しくないと思って喜んだが…
いや、待てよ。女の子の一人住まいに、まずいのではないか、とちょっと躊躇したが、テレビが欲しい欲に勝てず、持ってきて貰うことにした。
そして、来て貰ったときに、お茶位は出したが、なんだか落ち着かず、すぐに帰ってもらった。
昔の、うしろにブラウン管が入ってるテレビなので、かなり重かったと思う。彼がどうやって、運んできたか、どうやって帰ったのか全く覚えてないのだ。私は相当上がってたと思う。

私は結局、合唱部に引かれ、ブラスバンドを辞めることになったが、オートバイの彼、テレビの彼に、クラブを辞める時にお礼を言っただろうか。
ブラスバンドはその時ポール・モーリアの、エーゲ海の真珠、オリーブの首飾りの曲を合奏していた。その曲を聞くたびに彼ら二人からいただいた親切を思いだして何とも言えない気持ちになるのだ。たった3ヶ月の出来事だったけど、今から思えば、貴重な思い出の3ヶ月になった。

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