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ハイパーミュージックシアター

音楽が嫌いな人っているのだろうか。いたとしてもかなり少ないと思う。

さまざまなジャンルの音楽が飛び交う社会で、私たちの生活と音楽は、いつのまにか切っても切り離せない関係になっていた。

人と人を結びつけたり、誰かを勇気づけ、時に励ましたり、ムードを作り上げたりと、音楽の意味について今さら考える必要もないほど、我々のすぐそばに音楽は存在し、鳴り響く。


私は去年の2学期あたりから、学校への道中に音楽を聴くようになった。それまでなんで聴いていなかったのかと言われても特に理由はない。シンプルに聴いてみようかな…と思っただけ。

すると、ちょっと気分が重い日でも(ましてや朝だからより一層)、音楽を聴くとかなり元気になってきて、「今日一日も頑張りますかー」という気分になってくる。

しかし、ある日イヤホンが壊れて音楽が聴けない日があった。ある程度音楽を聴きながら学校に行くということが習慣付いた日のことである。

すると、何となく落ち着かない気持ちになり、学校までの道も遠く感じるし、なんか疲れるし、気分は晴れないし、かなりよくない状態になってしまった。

何が言いたいのかというと、私たちは「音楽がある」ということに慣れすぎて、その素晴らしさを忘れかけていないだろうか。そしてその素晴らしさは、「音楽を失う」ことで初めて気づくことができる、相対的なものなのだ。

となると、音楽にはある危険性も孕んでいるということになる。それは、我々がその素晴らしさに気づく前に音楽を失ってしまったときのことである。

もしこの瞬間、あなたが全く音楽を聴けなかったらどうだろう。「そんなのへっちゃらだい」と思う方もいるかもしれないが、それはおそらくほんのひとときであろう。

徐々に生活は乱れていく。通勤通学中に聴いていたものも、YouTubeで流れてきたものも、テレビから自然に聞こえてきたものも、全てが絶たれた環境を耐えることができるのか、いや、できない(ストレート反語)。

それほどに、音楽は昔から生活の一部分をなしてきたのである。


ドラえもんの映画を観た。地球交響楽(シンフォニー)。3月はどうしても忙しくてなかなか土日とかに友達と観に行くのが難しいと判断したため、公開初日に学校が終わったあとすぐに観に行った。たまにはこういうのもアリよね。

じゃあまず感想からいいですか。


良すぎるよ〜。


去年の空の理想郷もかなり良かったが、すいません、上回ったわ。てか思い返してみても、もしかしたらここ数年で1番だった可能性もある。まあまだ記憶が新しいっていうのもあるけど、とにかくかなりの傑作、そして挑戦作でした。

映画の内容としては、さっきまでの話で言ったようなことです。いかに音楽が素晴らしいものなのか、「もういいもういい!」と思ってしまうほど全力で音楽の世界をぶつけてきた。

まあ端的に言うなら、お馴染みのび太たち一行が、音楽(ファーレ)をエネルギーとしている世界で音楽を奏で、その世界を救うという物語。とてもシンプルである。

そう、このシンプルさが引っかかっている人もいた。何件かレビュー的なものを覗いてみたが、「中盤の展開がつまらなかった」という意見がそこそこあった。

(以下、微ネタバレゾーン(すぐ終わる))



確かに、中盤は音楽を奏でながらマップをアンロックしていくみたいな展開で、強い敵が出てくるとか、でかい転換点があるとか、そういうのは控えめではある。

しかし、私はこの中盤はかなり大事だと思う。それは、これがのび太たちの「成長」の描写だからである。

だって、予告で見たことがある人は知ってると思うけどジャイアンの担当チューバよ?ジャイアンが一発でチューバを吹けるわけない。そんな面白設定があったら漫画に反映されているはずだ。

つまり、この中盤のマップをアンロックしながら世界の謎に迫っていくところは、のび太たちがその世界を通して、楽器と向き合っていくという大事な過程なのだ。それをスキップして盛り上がる展開だけ盛り込んでも仕方がない。



(ゾーン終わり)

そして何より特筆すべきは、やはりクライマックス。もうここをマイナスに言う人がいたら、多分その人は感性がバグりすぎてると思う。道端のマンホールとかを見つめてブチギレてそうだ。

中盤ののび太たちの楽器との向き合い方、そしてそれまでの練習の成果が、圧巻のクライマックスで解き放たれる。忘れてはならない、この映画は「地球交響楽」。そのクライマックスでそのことをハッと思い出させ、そして私も映画館ではいまだに体験したことがなかった大迫力の音楽。おいおい、これは本当にドラえもんなのか?コンサートホールから間違えて中継しちゃってないか?と心配になるほど、ただただ圧倒されてしまいろくにコーラも飲めなかった。

これは多分、映画館で観て初めて成立するパフォーマンスなんだと思う。だから、どれだけ言葉を並べても伝えられている気がしない。

じゃあ私が何を言いたいか分かるね?

観ようよ。

それだけ。

安いっす。映画って。1000でこの満足感、おかしいと思う。この季節多分みなさん結構時間あると思うんで、1日くらい、この世界に浸ってみませんか。


最後に1つ。やっぱり今作も、「物語の繋がり方」がすごすぎる。俗にいう伏線みたいなことなんだけど、なんかそんなチープな言葉で片付けていいのかわからないくらいの見事な構成。物語の序盤から中盤にかけて点つなぎの点だけを打っていって、ラストでそれを一気に繋げていきながら壮大な絵を完成させるような、そんな感動がある。

のび太の一本のリコーダーから始まるこの凄まじい規模の物語の旅を、是非一度劇場で。

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