統一地方選2023(西日本編)

○和歌山県

○県議選和歌山市(定数15)
県都・和歌山市では激戦が見込まれます。岸本周平さんの後任として国民民主党県連代表に就いた浦口こうてんさんは、前回最下位当選です。今回は、前回選で候補者を1人に絞った維新が3人、参政党も1人、共産も現職1人に加え新人を立てるなど、混戦の様相。当選ラインは6000票超になる見込みです。
加えて、前回は浦口さんを全面支援できた「国民民主党県連代表」の岸本さんも、立場は保守王国の県知事に。1区補選で自民に協力する意向を伝達しています。浦口さんの決起集会に駆けつけた玉木代表も「浦口さんは知事ともパイプがある」と訴えましたが、「ただ選挙は厳しい」と危機感を示していました(国民民主党公式HPより)。
他党の動きを見ると、自民と公明は堅調に5議席と3議席をそれぞれ守りたい考え。前回の結果を見ても、定数の上位は自民と公明で占めていることから、両党の8議席はまず固いでしょう。
維新は、現有の1議席から3議席へ伸ばしたい考え。県議選の投開票後に、今度は公認候補を立てて戦う1区(=和歌山市)の補選が控えています。デイリー新潮によると、維新の候補は自民元職に既に2ポイント差まで迫っているとのこと。その前哨戦である県議選は落とせない戦いと言えるでしょう。ただ、前回選で維新の候補が獲得した票は7400票の10位。3人通すには厳しいと見る向きもあります。
共産は前回も2人立て、現職は手堅く当選したものの、新人が浦口さんの一つ下の順位、つまり次点で落選しました。浦口さんとの票差は約700票。今回も、現職と新人の票割りを完璧に行えれば、2人当選も無理な話ではありません。
そして参政。昨年の参院選では、和歌山市内で選挙区候補の得票率が7%、1万票を超え、また比例でもNHK党やれいわを上回る数字を叩き出しています。
また、無所属の現職3人も立候補を予定していますが、いずれも旧民主系です。「岸本王国」を支えてきた3人が、今回も存在感を発揮できるか鍵になります。
そして国民の浦口さん。県連唯一の県議として議席を守れるか否か。激戦で当選ラインが引き上がることも予想される中、この後に続く和歌山市議選と連動させたい戦いができるかも焦点になりそうです。

○和歌山市議選(定数38)
候補者説明会には42陣営が参加。少数ながらも激戦の見通し。
自民や公明は、現有前後の議席数を維持したい構え。維新は昨年補選で当選したばかりの市議が一区補選(市議選の同日の投開票日)に出馬することになり、後任の候補が発表されていないことから、市議会での勢力は3議席から2議席に縮小する可能性があります。
国民民主党は、岸本さんの元秘書で前回トップ当選の山中さんと、県連幹事長を務める永野さんを公認で擁立。2議席維持なるかが注目です。


○兵庫県

○県議選神戸市北区(定数3)
前回選は、1位が自民、2位が国民民主党の向山好一さん、3位が公明、次点の共産が落選、という形で決着がつきました。
しかし今回は構図が一変。維新が新人を擁立し、一気に勝負の行方がわからなくなりました。昨年夏の参院選で各党が獲得した比例票を県議選の選挙区ごとに当てはめた神戸新聞の試算によると、維新がトップ当選、ついで自民、3位で向山さん、という結果になりました。しかし、公明が議席を落とすことは考えにくく、実際は向山さんと公明、そして共産の三つ巴で最後の1議席を争う構図とみられます。
公明新聞は連日、北区の情勢を取り上げ、公明候補の危機的状況を強調。自民と維新が優勢で、最後の1議席を国民と争っている、という書かれ方がされています。
向山さんは選挙区中に、玉木代表、そして衆議院議員時代の同僚である泉・明石市長との2連ポスターを張り巡らせて混戦を抜け出したい考え。榛葉幹事長も北区入りし、向山さんは党大会も出席を見送り地元に張りつきました。国民公認の唯一の県議として、負けられない戦いになりそう。

○県議選神戸市灘区(定数2)
現有の自民と国民に加え、前回擁立を見送った維新が立て、激戦の様相です。国民民主党は元県連幹事長で、現在の西宮市長の兄、石井健一郎さんを告示ギリギリで推薦しました。
前回は共産が擁立して選挙戦になりましたが、自民と石井さんが、それぞれ共産にダブルスコアをつけて圧勝。自民が1位、石井さんが2位という結果ではありましたが、両者16000票台で、その差は300票弱とほぼ互角でした。
維新、自民、石井さんの三つ巴で2議席を争う構図と見られますが、石井さんもすでに5期務めていることから強い地盤を持っています。石井さんのHPを選挙前にリニューアルし、「党派を超えて」などの文言が目立つことから、国民民主党色を押し出さず、兵庫では協力関係にある立憲など幅広い層から支援を受けたいものと見られます。
今回、兵庫県議選は旧民主系に取って各地で厳しい戦いになっていることから、ベテランである石井さんの当落は、国民民主党県連のみならず、県議会民主系会派「県民連合」にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

○神戸市議選垂水区(定数10)
当選ラインは4000票。国民民主党は現職の川内さんと新人の永野さんの2人を擁立。前回選でも2人立てましたが、川内さんが8000票超を獲得し、圧倒的な1位当選を決めた一方、新人候補が3000票ほどの得票に留まっていました。
川内さんも永野さんも基幹労連を支持母体とすると見られますが、維新などが前回選から擁立数を増やす中で、2人当選なるかに注目が集まります。


○山口県

○県議選周南市(定数5)
自民が現職3人、公明と立憲が現職1人、そして自民党所属の元周南市議の無所属新人、国民民主党は大内一也さんを擁立しました。2人落選する選挙区ですが、混戦とみられ、誰が勝っても誰が負けてもおかしくない戦いになりそうです。
立憲の女性現職は、旧国民出身。前回選は参院選直前の県議選であったため、旧国民公認で参院山口選挙区から立候補を予定していた大内さんと共同で活動。選挙期間中には玉木代表も駆けつけ、見事当選を果たしました。翌年8月の立憲と国民の合流騒動では、大内さんと共に新立憲に参加。2021年の衆院選で1区から立憲公認で出馬した大内さんを応援していました。
が、大内さんは衆院選後の2022年春に立憲を離党。国民民主党山口県連を立ち上げ、代表に就任。同時に参院選山口選挙区に党公認で立候補することを発表しました。玉木代表も「welcome back!」(Twitter)と大内さんの復党を歓迎しmていました。対して立憲も、安倍晋三・元総理の秘書を務めた経験のある人物の擁立を決め、1人区の山口で両党が全面対決の様相に結果は自民の圧勝でした。大内さんは3位で敗北しましたが、周南市での得票は1万票に迫り、得票率も18%超と、立憲候補の8.8%にダブルスコアをつけました。その後、大内さんはUAゼンセンの純組織内候補として、県議選に周南市から立候補する考えを表明。これまで活動を共にしてきた立憲候補とぶつかる状況については「県政を変えるために共に戦いたい」(日刊新周南)とあくまで協力する関係であることを強調しました。
もう1人、無所属新人は市議選でトップ当選だった若手の女性。これまで自民党で活動してきたことから、自民支持層を大きく取っていく可能性もあります。


○香川県

○県議選高松市(定数15)
前回、現職の山本悟史さんに候補者を絞った国民民主党。今回選は、新人で昨年夏の補選に挑戦した金藤ゆかりさんも立候補し、2議席獲得を目指します!
多党乱立の県都決戦となる見込みで、自民、公明、維新、立憲と、初の議席獲得を目指す勢力もあれば、複数議席を狙う勢力もあり。
国民民主党は、昨年の参院選で、香川県選挙区に三谷祥子さんを擁立。玉木代表の地盤であるさぬき市や坂出市では、他の野党候補を大幅にリードしていましたが、立憲の小川さんの地元である高松でリードをつけられ、中盤戦までは情勢調査で立憲候補がいい数字を出していました。ただ、後半戦、三谷さんは高松市に張りつき、結果として高松の票差を最小限に抑え込み。選挙区全体としては(三谷さんの当選は叶いませんでしたが)、2位となりました(四国新聞の参院選振り返り記事より)。また、高松の比例では国民民主党が野党第一党に。その勢いに乗って、今回も2議席確保を目指します。
公明新聞は高松市区の情勢記事で、国民民主党の2議席確保を「堅調」と評しましたが、前回の山本さんの得票は約7000票の10位ですから、余裕の戦いというわけでもありません。
また、玉木代表も榛葉幹事長も、記者会見で次期衆院選について問われ、共通で話題に上げたのが比例四国ブロックでの議席獲得でした。そして代表のお膝元である香川は、その要となる場所です。しかし、高松選挙区に含まれる直島町(瀬戸内海に浮かぶ島です)では国民民主党の比例得票率は4%ほど。そのほかの島嶼部でも国民民主党の比例得票は低くなっています。このような地域でも得票率を上げていくことが四国ブロックの議席獲得の鍵になってくるため、高松市選挙区で2議席獲得が実現し、より基盤を強化させられるかどうか。要注目!

○県議選さぬき市(定数2)
前回選は自民現新2人、国民現職の木村さんの3人で2議席を争う構図でした。玉木代表の地元ですが、前回選は党首として初めて迎えた統一選ということもあり、それまでのような連日の香川入りは叶わず、激戦に。結果は自民現職と木村さんがそれぞれ当選する現状維持でした。
そして翌年夏の野党再編を経て、木村さんは新国民に参加せず、無所属で立憲会派へ。会派の団長も務め、参院選ではさぬき市内で立憲候補の挨拶回りに同行する(立憲候補の選挙ドットコム記事より)、無所属になって以降の国民民主党との関係は近くはなかったと言えます。
そして木村さんは今期での勇退を表明。後継としては、完全無所属の女性を擁立しました。自民は今回、候補者が現職1人と見られます。このような事態を受け、国民民主党は新人の三木由美子さんを擁立。三つ巴で2議席を争う混戦です。
保守王国香川で自民党が議席を落とすとは考えにくいですし、国民民主党の比例得票率が30%を超えるさぬき市で通せないということがあるのか、そして木村さんが支援に回る無所属の候補はうどん屋経営の女性。誰が議席をとっても誰が落ちてもおかしくないため、激戦は必至です。

○県議選観音寺市(定数3)
自民2人、無所属2人、そして市議選でトップ当選を続ける五味のぶあきさんが国民民主党公認で出馬を表明し、5人の争いとなる見込み。
無所属の中には自民系の候補も含まれています。観音寺は、衆院の選挙区でいうと香川3区にあたり、自民党の強い地域。前回選は無投票かつ自民独占でした。野党系として議席獲得できるかが焦点です。


○愛媛県

○県議選松山市(定数16)
自民が現有の7議席の維持を狙い、前回2人に絞り込み1位と2位で当選させた公明は3人を擁立し拡大を目指します。野党は立憲、維新、共産がそれぞれ1人ずつたてました。国民民主は新人の浅岡しまさんが公認候補として内定。参政は、前回選で立憲から立候補していた現職を公認で擁立しました。他に現職の3人も無所属で立候補する予定です。
前回選では、旧国民の現職が次点で落選。最下位で当選したのは、現1区総支部長の石井ともえさん(当時は無所属)でした。石井さんはその後、新国民に入党、衆院選に挑戦するため、県議を辞職。結果は落選でしたが、その後は国民民主党愛媛県連を立ち上げ副代表に就任していました。次回の衆院選では、前回の旧愛媛2区に比べて、より県議時代の地盤である松山と重なる新愛媛1区から出馬することにしています。
そして去年春の松山市議選では、「四国初のLGBTQの当事者議員」となられた、わたなべひろゆきさんが当選。愛媛2区総支部推薦の支援でしたが、選挙後に追加公認、現在は県連幹事長です。
そんな松山に、今回愛媛県連が送り込んだのが、学習塾を経営している浅岡しまさん。石井さんとの2連ポスターも作成し、当選を狙います。
松山では、すでに比例票で立憲と維新が逆転。維新の方が強い数字を出しています。また国民民主党は、衆院選後も石井さんが県内での活動を継続されていました。選挙区で候補を立てなかった参院選でも比例票は衆院選より増えているのです。
自公は堅調として、問題は参政の出方です。前回選で得た票をどこまで維持できるのか、新しい票をどこまで引っ張って来れるのか、注目が必要。
構図として、立候補者数もそれほど多くならない見通しであることから(19人前後?)、少数激戦になりそうですが、各党乱立の結果はどうなるのでしょうか。


○高知県

○県議選高知市(定数15)
自民が5人、公明が3人、共産が(さすが高知)4人、立憲と社民がそれぞれ現職を1人、参政が新人を1人、そして国民民主党が元職の前田強さんを擁立しました。無所属も6人出馬予定、そのうち1人が現職です。
注目ポイントは、やはり共産が4議席を死守できるか否かです。高知は、京都に次ぐ共産の牙城ですが、前回選でもその順位は、8位、11位、13位、15位(最下位)でした。去年の参院選以降、なかなか党の勢いも伸び悩む中で、再び4議席を確保できるか、落としていくのか、それとも総崩れか。ギリギリの戦いになりそうです。
国民の前田さんは、前回選で次点落選。県内では「政界引退」の見方も強かったそうですが、昨年の参院選の高知徳島合区で、協力していた国民民主党の擁立作業が断念しかけた時、出馬を決意。「第3の選択肢」と銘打ち、高知徳島の全市町村を回りました。結果は落選だったものの、2019年の参院選、知事選と、全県選挙で続いていた「自民党の対抗馬が共産だけ」という状況にストップをかけました。(エピソードは高知新聞より)
そして今回は県議選に再チャレンジ。当選を目指します。玉木代表も事務所開きに高知入りし、支持を呼びかけました。高知は、今回の統一地方選で国民民主党が解消を目指している「議員ゼロ」県の一つ。初の議員誕生なるかも焦点です。

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