国民民主党・統一地方選(前半戦)

道府県議選、政令指定都市議選、統一地方選の前半戦が終わりました。新・国民民主党になって初めて迎える統一地方選。4年前の前回選の旧国民時代は、都市部を中心に苦戦。特に前半戦は、現職含めて全滅する県もあるなど、厳しい結果となっていました。
今回は、地方議員倍増を掲げ、積極的な擁立で党勢拡大を図る一方、維新の躍進や立憲の刺客擁立など、前回選よりコンディションが悪くなった地域も。玉木代表が参院選直後から宣言していた「議員倍増」は「どのレベルで」達成されるのか。後半戦に向け、見ていきます。


○選挙結果

今回、国民民主党は、都道府県議選で、党籍のある公認推薦候補を56人、政令指定都市議選では32人を擁立しました。今回の統一地方選に併せて改選を迎える現職の議席、すなわち現有議席が、都道府県議選で38人、政令指定都市議選で16人。大幅な議席増を図る方針でした。

この他にも、国民を支持する4産別出身で党籍を持っていない候補、党所属でありながら党本部の公認推薦を受けなかった候補、党の地方組織で全面支援を受けた国民系の無所属候補など、様々なパターンがありました。今回のnoteでは、多くの政党が選挙結果の分析の指標にしている「党籍を有する候補」に限定して見ていきます

今回の統一地方選、結果として、都道府県議選では39議席(現有+1)、政令指定都市議選では19議席(現有+3)を獲得。双方で、改選前より議席を増やす結果となりました。
ただ投開票日翌日、会見に臨んだ榛葉幹事長の顔は硬く、「勝ったと言い切れるような戦いではない。もっと伸ばしたかった」。議席を増やしたのにもかかわらず、結果に対して喜びの受け止め、感想はみられませんでした。


○後継候補の新人の結果

なぜなのか。詳しくみていきます。

今回、都道府県議選での現職の当選率は85%(29/33)、政令指定都市議選は100%(15/15)でした。現職に限れば、その多くが、旧国民が大きく議席を減らした前回選を党公認で乗り越えており、今回も固い戦いぶりが見られました。

苦戦を強いられたのは、現職から上積みを目指す新人候補でした。

まず、勇退する現職の後継として立候補した新人3人について見ていきます。
現職の後継として立候補する新人候補とは、「新人」ではあるものの、「現有」である議席を「維持」しなければならない、やや特殊な戦い方です。
その3人が、静岡県議選清水区の中山さん、神奈川県議選戸塚区の後藤田さん、宮崎県議選延岡市の下田さん。清水区、戸塚区、延岡市のすべてで、市議会にも国民民主党所属の議員がいる、党の地盤と言える地域です。

しかし、当選を果たせたのは清水区の中山さんのみという結果に。戸塚区の後藤田さん、延岡市の下田さんはそれぞれ次点で惜敗されました。

中山さんが当選した清水区は、榛葉幹事長、そして党所属の田中健衆議院議員の地元。田中さんの選挙区・静岡4区の大票田が清水区であり、活動強化の観点からも、議席死守は絶対でした。田中さんは党大会も欠席し中山さんの応援に張りつき。玉木代表も第一声から応援に入り、3位に滑り込みました。

次に、神奈川県議会・副議長の曽我部久美子さんから後継指名を受けた後藤田弥生さんが立候補した戸塚区。神奈川県議会と横浜市会でそれぞれ4産別系の候補者が当選を続けてきており、国民民主党の票も強く出ている地域。県連事務所も位置する、まさに「牙城」でした。
昨年11月、曽我部さんが引退を表明し、元県議秘書の後藤田さんが後継候補として立候補を表明。
潮目が変わったのは、前回擁立を見送った立憲、維新が擁立を発表し、多党乱立の構図が出来上がった時
県議選戸塚区の定数は3。現職2人は固い地盤を築いており、実質残りは1議席。この1議席をめぐり、国民、立憲、維新、共産の4党が奪い合う構図になったのです。
投開票日、混戦を抜け出し、勝利したのは立憲でした。社民やネットからも支援を受け、次点の後藤田さんに1000票差をつけ、議席を獲得しました。
これにより国民民主党神奈川県連は、(他の選挙区の新人も惜敗となり)神奈川県議会での議席を失いました。
横浜市議選で当選した小粥康弘・県連代表は、投開票日翌日、会見を開き、県議選の結果について、「極めて残念」とした上で、「どのように県政にアプローチしていくかが課題」という認識を示しました。

最後です。労働組合が強い力を誇り、一昨年の衆院選では長友慎治さんを衆議院に送る原動力となった延岡。宮崎県連所属の延岡市議は7人と全国最多レベルです。
引退を決めた前・宮崎県連代表の田口雄二さんの後継として出馬を決めたのが、元延岡市議の下田英樹さんでした。前回選では、田口さんが定数5の最後の1議席を自民候補と争い、約100票という僅差で最下位当選を果たしていました。
今回選、延岡では維新や参政などの参入もなく、前回選と同じ政党の顔ぶれでの戦いに(全員が現職か、現職の後継候補でした)。結果は、田口さんに敗れていた自民元職が上位に食い込んで返り咲きを果たし、下田さんが落選しました。また、下田さんは、前回で田口さんが得た票よりも1500票以上減らしました。
逆に、立憲は後継の新人公認候補を通し、議席を維持しました。
長友さんの選挙区・宮崎2区の票田であり、地盤である延岡で、公認候補を通せず、宮崎県議会で国民民主党が議席を失ったのは、県連にとっても長友さんにとっても大きな痛手と言えます。長友さんも宮崎放送の取材に「正直ショック」と厳しい表情で語りました。
ただ、延岡には後半戦、市議選もあります。労組系の現職に加え、長友さんが「スカウト」したという新人候補も多数立候補予定です。「次の市議選にこの影響が悪い方に出ないように、むしろ糧に変えて臨んでいく」と長友さんが述べたように、次の戦いはもう始まっています。


○現職の結果

現職の候補者の方も、落選の結果になられた方がいました。

まず、山形県議選の村山市選挙区。定数は1で、国民民主党県連幹事長の菊池さんが議席を有していました。村山市は、野党で議席を独占する参議院山形選挙区でも、過去2回、芳賀さんと舟山さんは自民候補に及んでいない、自民の地盤です。
2回前の県議選に初めて立候補した菊池さん。その時は次点で敗退。その後、村山市議選で初当選を果たしました。そして4年後、市議を一期務めきった菊池さんは、再度、県議選に再挑戦、当時の自民の現職を13票差で破る激的勝利で当選しました。それが前回選です。
そして今回。自民は議席奪還を果たそうと、菊池さんに敗れた元職を再度公認。自民所属の県議や、村山市長までもがバックアップし、組織戦を展開しました。
対して菊池さんは「世代交代」を主張の軸に据え、参議院議員の舟山康江さん、芳賀道也さんが応援に村山入りました。
結果は、自民元職が450票差で返り咲き。菊池さんは惜敗しました。
「よく不徳の致すところと言うけど、これ以上何が出来たか分からないくらい精いっぱいやらせてもらったので、まったくもって一片の悔いもないです」「私も村山の人間として続いていくわけですからぜひ仲間でいてほしいです」(山形テレビ)と語った菊池さん。
一騎打ちの激戦は、厳しい結果になりました。

2人の現職が惜敗したのは、維新が大躍進した兵庫です。
県議選唯一の党公認候補として立候補した、県連代表、神戸市北区の向山好一さん。北区は定数3。自民の現職、公明の新人、維新の新人、そして向山さん。主要候補としてこの4人が手を挙げました。
保守王国の兵庫で負けるはずがない自民、地方選挙では候補者を絶対に落とさない公明、県内では国政選挙比例第一党だった維新、衆院議員や神戸市議など北区で積み上げてきた向山さん。誰が負けてもおかしくない、まさに激戦でした。立憲県連は向山さんを全面支援。神戸市議選に北区から立候補している立憲の現職は向山さんと連携して選挙戦を展開。立憲の兵庫2区総支部長も連日支持を訴えました。
開票は長引き、4人の候補がそれぞれ当落線上を行ったり来たり。最終的に出た結果は、1位が維新、2位が自民、3位が公明。向山さんは3000票差での次点落選となりました。今回の兵庫県議選では、自公が議席を守り、維新が伸ばす中、全体的に旧民主系には厳しい結果になり、北区でもそれを反映する形になったといえます。そしてもう1人、国民民主党の党籍を有したまま無所属で立候補した神戸市灘区の石井健一郎さん。定数2を自民、維新と争いました。石井さんは、灘区で衆議院議員を擁する立憲、そして公明からも推薦を受け、議席死守を図りました。が、維新の候補に1000票差で及ばず、惜敗されました。
今回の結果で、国民民主党は兵庫県議会で議席を失いました。県会で会派を組む立憲は、なんとか現有議席を維持したものの、旧民主系の勢力は後退し、県議会でどう存在感を出すかは大きな課題になりそうです。
兵庫県連は参院選で、全国の3人区以上の選挙区で唯一、独自候補の擁立を断念していて、自民も維新も強い兵庫は、党勢拡大の厳しい地域です。県政でどう存在感を出すかが、今後の焦点になります。

もう一つ、徳島県議会の鳴門市選挙区です。定数は3で、自民の現職2人、国民民主の徳島県連代表も務める黒崎章さん、無所属の新人1人、諸派1人の計5人が争いました。現職が有利に戦いを進めていると見られていましたが、蓋を開けてみれば、最後の1議席に無所属の新人候補が滑り込み、現職である黒崎さんは議席を失いました。最下位の諸派の新人も、得票率は10%を超えていて、存在感を発揮。事前の予想以上に、選挙戦が混戦であったことがわかります。
県連代表の黒崎さんは、県連所属の仁木県議(阿南市選出で今回選は無所属で当選)と、参院選の徳島高知の合区で、公認候補擁立に奔走。ただ徳島県連の設立は、参院選のたった4ヶ月前でした。組織も「急ごしらえ」とされ、厳しいとみられていましたが、最終的には擁立に漕ぎ着けました。当選こそならなかったものの、前回の参院選、知事選と、自共一騎打ちが続いていた高知徳島で、「第三の選択肢」を提示する役割を果たしました。
阿南市で当選した仁木さんが、今後も県連所属で活動すると思われるものの、県連代表の議席を失ったことは大きいものがあります。国民民主党の県連立ち上げ後、それまで所属していた会派を退会し、黒崎さんが立ち上げた会派の名前は「若者の未来」。1人会派だったため、今回の選挙の結果を持って消滅することになります。


○注目の当落結果

まず、北海道議選の札幌市中央区。自民と立憲の二大政党制のようなところがある北海道。国民民主党の党勢拡大は厳しいのが現状です。中央区の定数は3で、自民が2人、立憲が1人、国民民主が小川さん、共産が1人立てました。結果は自民と立憲が議席を分け合う形になり、小川さんの次点落選となりました。が、共産候補も票数で上回り、1万票を超える得票の結果になりました。
自民や立憲に割って入る党の地力は、まだ厳しいものがあるかもしれませんが、北海道の後半戦では新人2名が立候補予定。現職2名からの倍増を目指す、党勢拡大の準備を着々と進んでいます。

次にも新潟県議選中央区。定数は3です。前回選で、公明候補を落選危機に追い込んだ候補が、今回維新からの再挑戦を決めたことで、再度激戦になりました。国民民主党県連代表でもある上杉さんは、前回2位当選でしたが、3議席目でもつれ出すと、自身にも影響が及ぶ可能性があるとして危機感を強めていました(新潟日報より)。
しかし結果は開票率14%でNHKが当確を出す勝利。県連代表の議席を守りました。

続いて千葉県議選の成田市。定数の2議席は、長く自民による独占、そして無投票が続いていました。そこに割って入ったのが、国民民主党所属の橋本さん。16年ぶりの選挙戦に持ち込みました。
橋本さんは国民民主党の党籍を持ったまま無所属で立候補し、立憲民主党からの推薦も得ることに。現在、両党の関係がうまくいっているとは言えない中、全国的にも珍しいケースといえます。選挙中には、国民民主党から玉木代表、前原誠司代表代行、立憲からは地元の谷田川議員、そして野田佳彦・元総理が入る力の入れよう。議席奪取を狙いました。
結果は、激戦の末、自民の2人が当選。橋本さんと2位の候補との差は約5000票。投票率は37%でした。
今回も、全国各地で低投票率が見られましたが、無党派層に支持拡大を狙う候補には厳しい条件になったかもしれません。

一番の激戦県は神奈川でした。無党派層が多い横浜や川崎、相模原などの各選挙区では、自民から参政まで候補が乱立。立憲のパワハラ問題などで、選挙戦の構図が変わったところもあり、また、国民民主党の票が全国の中でも比較的強く出ていることから、約20人の候補が出馬を決め、選挙戦を戦いました。一つずつ見ていきます。
神奈川県議選では4人が立候補。戸塚区の前述の結果により、県政での議席は失う結果になりました。
まず横浜市泉区。これまでは定数2を自民と立憲で議席を分け合う無風区でしたが、党公認の西岡さんの参戦で情勢が変わりました。期間中には榛葉幹事長も駆けつけました。結果として、自民と立憲の候補がそれぞれ獲得した約2万票に、西岡さんの獲得票数(8000票)は届きませんでしたが、西岡さんの得票率である17%は、当然ですが県内での国民民主党の支持率を大きく上回る数字。自民でもない、立憲でもない、新しい選択肢を求める有権者の受け皿になったと考えられます。
次は、3月に始まる神奈川県議選で、3月に入ってから公認発表された中区の佐々木さん。定数2を占める自民と立憲の現職のうち、立憲の候補がパワハラ問題で離党勧告が出るほどまでに党内でこじれ、無所属で出馬。新人として議席獲得を狙い立候補したのが維新と、そして佐々木さんでした。3月8日に公認が発表され、31日に選挙が告示される日程でしたが、23日には神奈川県知事選が告示され、その日から政治活動が法律上できなくなるという非常に厳しいスケジュールの中での戦いに。当選ラインの13000票に対して、佐々木さんの得票は6300票、落選という結果にはなりましたが、13.9%の得票率は県議選中区で大きな存在感を示すことになりました。
新人の宮原さんが立候補した県議選港南区。ここも立憲のパワハラ問題で、定数2で現職の自民、元立憲に対し、維新、宮原さんが出馬する、政党の顔ぶれという意味では中区と同じ構図になりました。激戦が繰り広げられ、迎えた投票日。結果は現職が2人とも当選する現状維持でした。ただ、2位当選の元立憲の候補の各得票数、15671票に対し、維新が14929票、宮原さんが14836票。当選ライン(=元立憲候補の獲得票数)に対して得票の差は、維新候補と宮原さんの双方1000票を切っていて、得票率にして約1%の差。パワハラ問題に問題意識を持った立憲支持層や無党派層の受け皿になったことが要因なのか、分析は必要ですが、定数2で国民民主党の新人候補が、現職の当選を脅かすほど接戦に持ち込んだことは異例と言えると思います。

次に、横浜市議選。立候補したのは全部で7人の公認推薦候補です。
元職の足立さんが立候補した鶴見区は、当選ラインの8700票に対し、獲得票数が3377票と厳しい結果に。立候補表明が1月中旬となり、やや遅れたこともあったかもしれません。また、前回選で旧国民が鶴見区で擁立した女性候補が獲得した3421票と、ほとんど変わっていないのも興味深いです。旧国民時代は、横浜市内にも今以上に党所属議員・候補がおり、基盤がしっかりしていました。昨年参院選での深作ヘスス候補の得票が、2019年の参院選の旧国民の公認候補の得票を大きく超えたこともあった通り、旧国民とは違うブランドを今の国民民主党は神奈川で売り出すことができているのかもしれません。
神奈川区の見矢木さんは約2300票差の次点。期間中は榛葉幹事長や矢田顧問らも駆けつけていました。(見矢木さんは、ご自身が中国にルーツを持たれていることを理由に、他の候補者からヘイトスピーチや選挙妨害を受けていたことを明らかにされました。)
旭区は県連代表の小粥さんの1議席です。維新の女性候補や参政党の参入で今回も激戦になりました。玉木代表も初日から応援に入り、前回同様、定数5の最後の1議席を守り抜きました。次点落選は共産の現職でした。
磯子区では、国民民主党所属・推薦の二井くみよさんが12000票を獲得、2位に4000票の差をつけて、圧倒的なトップ当選。前回選は旧国民で立候補し、次点で落選していましたが、一昨年の補選で無所属で当選。その後は、立憲会派と分離した国民系会派で活動していました。自民、立憲、維新も軒並み落選する中で、二井さんが強さを見せた結果です。
定数6の戸塚区では坂本さんが4選。前回選は旧国民から2人立ち、坂本さんだけが当選する結果になっていましたが、今回は候補が坂本さんで一本化。前回から4000票以上伸ばし12000票で5位当選。最後の1議席は、現職の後継として立候補した共産の新人と、維新の新人が競り合う展開でしたが、共産が350票差で滑り込み、全国的に勢力が後退した共産にとって貴重な勝利を収めました。
前回、現職としての議席を失った石渡さんが捲土重来を期した栄区は、厳しい結果に。無所属候補や、維新、共産に押され、前回の4800票(4位)から減らし、3100票(7位)。当選ラインが前回選に比べ5400票から7300票と、大きく跳ね上がっていることも、今回選が激戦であったことを物語っています。
最後は、新人で唯一当選を果たした横浜市都筑区の深作ゆいさん。1万票近い得票で、定数5の都筑区選挙区で3位当選を果たしました。深作さんの議席獲得に伴い、他党では、維新が最下位に滑り込み、立憲の現職2人が共倒れという結果に。横浜市会での獲得議席数は、深作さんの当選で4議席と1議席増え、焦点となっていた交渉会派(5議席)入りは叶わなかったものの、勢力自体は増えることになりました!

川崎市議選は15票差で落とす悔しい結果になりました。
衆院の選挙区改変で新たに鈴木敦・衆議院議員の選挙区に加わった川崎市高津区。新人の鈴木明伸さんが党の公認を受け、立候補しました。期間中は玉木代表、鈴木衆議院議員も応援に高津区入り。が、最後の1議席を共産の現職に15票差で振り切られての敗北に。3900票台での争い、まさに大激戦でした。
川崎区で、選挙戦直前で党推薦から公認に切り替えて立候補した、現職の林さんは当選を果たしました。

相模原市議選は、高津区を超え、8票差でした。
相模原市南区は、定数が18と多く、各政党、政治団体がこぞって候補者を立てる乱立選挙区になっていました。党公認で立候補した新人の松田さんの獲得票数は3332票。最下位当選した81歳の自民の現職に8票及びませんでした。
中央区では、党籍を持たないものの、玉木代表も応援に入った、2人の推薦候補が再選を果たしています。今後、相模原市政での存在感の出し方が課題になります。

そして神戸市議選垂水区。今回、全国の政令指定都市議選の中で唯一、公認候補を2人擁立した選挙区です。現職の川内さん、新人の永野さんがそれぞれ立候補しました。前回の旧国民時代にも2人を立てていましたが、川内さんがトップ当選、新人の候補との票割りがうまくいかず、2人当選はなりませんでした。今回は、前回選より定数が1減って9に、また勢いを増して参戦してきた維新の存在もあり、激戦が見込まれました。ただ、県連所属の神戸市議(西区選出)が勇退を決め、神戸市議会での党の議席を維持するためにも、垂水区の2議席獲得は重要だったのです(須磨区選出で県連所属だった神戸市議は『少数会派での苦労』を理由に国民民主党を離党し、維新に入党していました)。期間中唯一の日曜日には玉木代表も垂水区に駆けつけ、総力戦を展開しました。そして迎えた投開票日。川内さんには早々に当確が出たものの、永野さんは当落線上のまま開票が推移。維新や立憲の候補も含めて、当落線を行ったり来たりの激戦が続きましたが、結果は、最下位当選の候補と252票差の次点惜敗でした。立憲の現職、そして何と維新の新人まで落選したことからも、垂水区の激戦っぷりがよくわかります。
今後、川内さんが神戸市議会での会派をどうされるかが注目点です。神戸市議会では国民民主党の勢力の会派が二手に分かれていました。一つは、前述の西区の県連所属の市議と、無所属の市議の2人で構成されていた「共創・国民民主」。もう一つは、川内さんの1人会派、「国民民主党・友愛」です。元々この会派には灘区選出の市議も所属していましたが、維新への入党と同時に会派も脱会。所属議員が川内さん1人になったため、「無所属(国民民主党・友愛」と通称として用いられているようです。今回の選挙を経て、西区の市議が引退したものの、無所属の市議と川内さんはそれぞれ当選しています。「会派」というまとまりは、様々な議論で武器になります。国民民主党系の勢力がどのように神戸市議会で会派を構成し、議論に臨むのか。注目が必要です。

お次は、玉木代表のお膝元、香川県議選さぬき市です。定数2を巡り、自民現職、無所属新人、国民民主の新人の三木さんの3人が争いました。さぬき市は玉木代表の得票率が70%を超え、比例での国民民主党の得票率が30%を超えている地域です。
自民現職は町議、市議、県議を積み上げてきた大ベテランの81歳。さぬき市で今回勇退を決めた立憲系県議から支援を受けた無所属新人は、34歳という年齢を押し出しました。
玉木代表も全国を応援に飛び回る中、期間中のさぬき市入りは限られましたが、三木さんは、統一地方選の後半戦で党公認で立候補する、3人のさぬき市議候補予定者らとも連携して選挙戦を展開しました。
結果は三木さんが7416票、得票率43.9%のトップ当選。2位に自民現職がつけて、無所属候補は惜敗されました。
いくら玉木代表のお膝元と言えど、元は自民王国だったさぬき市。自民が、2人の擁立を久々に見送り、候補を一本化したことが、自民にとって有利に働いたのか、それとも気の緩みを生んだのかは分析が必要ですが、玉木代表の応援入りも限られる中で三木さんがトップ当選したことは少し驚きと言えるかもしれません。この嬉しい結果は、現新合わせて3人を立てる、後半戦のさぬき市議選に繋がれることになります。
県議選では他に、高松市で現新2人が当選、観音寺市で新人が当選、東かがわ市で現職が当選し、計5名に。県議会野党第一党となり、代表質問などの権利が与えられる「交渉会派」入りしました。今後、香川県政の課題の解決に、より参画しやすい環境が整う、そんな県議選の結果になったと言えそうです。

ただ、四国の県議選の結果は、全体的に厳しいものになりました。
愛媛では、県連所属の現職、塩出さんが党推薦を受け、定数4の西条市で立憲との接戦を制し、議席を守り抜いたものの、松山市の浅岡さんは落選。現在、衆院愛媛1区での出馬に向け活動している石井さんが、前回選で初当選したのが松山市選挙区。石井さんや、昨年の松山市議選で上位当選を果たしたわたなべ市議も応援に入りましたが、議席を失った形です。他に、維新の新人、元立憲で今回は参政から立候補した現職も議席を落としました。

高知県議選の高知市選挙区では、元職で、昨年参院選に立候補した前田強さんが再挑戦を決めていました。前回選には、現職として臨んだ前田さん。定数の15に対し、16人が立候補した少数激戦で落選していました。
政界引退とみられていましたが、過去のnoteでも紹介した通り、昨年、参院選徳島高知の合区で、断念しかけていた国民民主党の候補者擁立に応じて、告示日直前に立候補を表明。高知と徳島すべての市町村をまわる勢力的な活動を展開して、自共対決が恒例になっていた高徳島に、「第3の選択肢」を示しました。
残念ながら参院選では自民の現職が当選を決め、前田さんは落選。昨年12月、高知県議選への出馬を決断しました。
が、今回の県議選は前回から情勢が一変。定数を大幅に上回る、22人が参戦したのです。大激戦の様相を呈し、事務所開きには玉木代表が、選挙戦最終日には高知県連で代表を務める大塚耕平参議院議員が駆けつけ、支持拡大を図りました。結果として、全国的に苦戦した共産も(高知県内では強い地盤を持っています)、候補者全員を通し切り、自民公明も堅調に現有維持に。前田さんは、最下位当選候補と500票差の次々点で、惜敗されました。高知県内での国民民主党「議員ゼロ」の解消はなりませんでした。

山口県議選では、周南市で胸熱な戦いが繰り広げられました。
定数5の周南市では、自民の現職3人、公明の現職1人、自民の党籍を持つ無所属の女性の新人、立憲の現職、そして国民民主の大内さん、7人で争う構図になりました。
大内さんは、昨年2月、それまで所属していた立憲民主党を離党し、国民民主党山口県連を立ち上げ、県連代表に就任。その夏の参院選には党公認で立候補したものの、惜敗。直後に県議選への挑戦を決めました。
ただ、圧倒的な保守王国である山口。周南市ではそんな中でも立憲の女性県議が、県議会の議席を守り続けていました。この女性県議、旧国民出身で、大内さんの3回の国政選挙への立候補を支えてきた関係性でした。
しかし、今回は、下手をすれば自公系での独占もありうる激戦に。大内さんと立憲県議も、全面対決にならざるを得ない構図が出来上がりつつありました。
これを受け、連合山口は両方ともに推薦を出したものの、多くの労働組合は大内さんの側につきました。選挙戦の初日には榛葉幹事長、決起集会には玉木代表も入り、「大内一也にそろそろ働くチャンスを与えていただきたいんです」と訴えました。
投開票日。自民や公明の現職、無所属の新人には、ひと足先にNHKが当確を出しましたが、最後の1議席をめぐり、大内さんと立憲県議が争う展開に。開票率99%になってもどちらにも当確が出ず、日付が変わる直前、ようやく大内さんの当選確実が報じられました。その差、たったの26票。まさに「五度目の正直」(日刊新周南)でした。ただ、自身の当選で、立憲県議が議席を失ったことについては「自公の現職を破ったのならともかく、戸倉氏の落選には申し訳ない」と複雑な心境も明かしました。
今回、立憲は周南市で落としたことで、山口県議会での議席を失う結果になっていました。
いずれにせよ、26票差での勝利で、山口県連初の県議会の議席を獲得した大内さん。活動には注目が集まりそうです。

九州、福岡は、多数の公認推薦候補が立候補し、国民民主党の重点地域の一つでした。
昨年夏、参院選福岡選挙区に立候補し、落選していた大田京子さんが返り咲きを目指して立候補した福岡県議選南区。実は、国民民主党福岡県連は、立憲県連と、候補者がぶつかっていない選挙区では互いの候補を「相互推薦する」旨の覚書を結んでいました。しかし、定数4の南区には立憲が新人を擁立。自公の3議席は固いとみられていたことから、立憲の新人と国民の大田さんのガチンコ勝負になりかねない情勢でした。
公明新聞では立憲の新人が先行と報じられ、また大田さん自身にも政務活動費をめぐる問題が浮上。当選が危ぶまれました。
県連代表の議席を再度獲得するため、大田さんの出陣式には榛葉幹事長、マイク納めには玉木代表が南区入り。玉木代表は「最終日の最後の時間、私は迷うことなく大田京子の応援に来ると決めた。なんとしても大田京子に勝ってもらいたい」と檄を飛ばしました。
そして迎えた投開票日の9日。10日に日付が変わる1分前。NHKが大田さんに当確を出したのです。2期連続のトップ当選でした。立憲の新人は次点で落選しました。

福岡市議選では、定数9の早良区で新人の前野さんが6000票を超える得票で5位当選。現新2人を立てた立憲が共倒れしました。
西区では約300票、中央区では約250票、最下位当選の候補に届かず、惜敗する結果になり、福岡市議会での全員当選は叶いませんでした。
ただ、前野さんの当選により、国民民主党として福岡市議会で初めて議席を獲得したことになります。会派をどうするか、県政との連携をどうするかなど、注視が必要です。

長崎県議選では、西岡秀子・衆議院議員のお膝元、長崎市で2議席を獲得し、諫早市でも現職が当選、現有議席を維持したものの、佐世保で佐世保重工労組の新人が落選しました。前回選では同労組が支援した候補が(元衆議院議員とは言え)トップ当選。今回選は、その県議が市長選に転出を決めたのです。労組は後継として、国民民主党から新人の古川さんを擁立することを決めました。定数9に対し、立候補したのは11人と、決して組織戦にも不利ではない情勢であったはず。しかし、5963票もの得票をしながら、約800票届かずの落選となりました。後半戦では佐世保市議選に、労組系の4人が党公認として立候補予定です。今回の県議選での敗北が、最近指摘される労働組合の組織の弱体化によるものかどうかは、分析が必要ですが、佐世保市議選で全員当選を目指すことが、その前のミッションとして、今、立ちはだかっています。

大分県議選では、大分市で、電力総連系の現職から地盤を引き継いだ、元大分市議の福崎さんが初当選。新国民民主党の結党当時は、足立信也・参議院議員(現・大分市長)だけだった県連所属の議員が、2021年に2名の新人の市議候補が当選、昨年に1名の市議が入党し、そして今回初めての県議会での議席獲得で、所属議員は4名に。福崎さんは「地方から国民民主党の勢力を拡大するために頑張りたい」と意気込みました。
足立さんは、昨年の参院選で落選し、党籍を離れたものの、大分市長に当選。大分市政を担うことになり増田。そしてその大分市で、初めて県連所属の県議が誕生しました。大分県連の勢力は、少しずつかもしれませんが、でも確実に拡大しています。


ここまで、注目区の結果を見てきました。
ここからは、後半戦での注目点、玉木代表が宣言した「議員倍増」は「どのレベル」で「いつまでに」達成されるのか、を見ていきます。
参院選直後、参院選で2議席減らした要因の一つを、「地方組織が弱いこと」と総括し、会見を開いた玉木代表は、初めて「来年の統一地方選で」所属議員を倍増を目指す方針を発表しました。つまり、党所属の議員の約200名を、400名に増やすと明言したのです。
そして8月下旬の会見では、400人の当選に向け、500人規模での擁立を目指すと発表しました。各都道府県連に、擁立計画の提出を求めることを公表したのもこの時です。
また、「無所属で活動する現職議員の入党も併せて倍増」すると、議員倍増目標に補足を加えました。これは、国民民主党を支持する4産別出身の議員でありながら、何らかの理由で無所属での活動となっている現職に入党を呼びかけるという方針。「国民系」で活動する議員を「国民所属」にする、それを含めて倍増なのだ、という趣旨です。

ただ今年2月の党大会では、この目標がややトーンダウンし、党所属の200名のうち、今回の統一地方選で改選を迎える150名からの倍増を目指す方針であることを、玉木代表が説明しました。また、「入党も併せて倍増」についても、「国民民主党を何らかの形で応援してくれる無所属議員も併せて倍増」と「議員倍増」の条件の「議員」の党籍の有無の言及も避けました。加えて、岩手や宮城など、東北では、東日本大震災の影響で、統一地方選からずらして、県議選や政令指定都市議選が行われることから、そこまで見据えての「倍増」方針であるという認識も示しました。

統一地方選の後半戦では、約150人の公認推薦候補が立候補を予定しています。何人が当選するのか、「議員倍増」のレベル感やスケジュール感の観点から選挙結果をながめてみるのも面白いかもしれません。

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