見出し画像

【国民民主党】衆院選情勢予測〈東日本編〉

岸田政権の支持率下落の傾向が顕著です。広島サミットやウクライナ訪問など、「岸田外交」には定評があるものの、本来はあるべき強力な「政権の看板」が見えにくく、「増税」のイメージが先行。他にも、マイナ問題や維新の台頭などの外的要因に加え、公明党との関係悪化に代表される、いわば「内紛」によって、立川市長選、都議補選、衆参補選などと、重要選挙での敗北が続いています。
また、一部「税収増の国民への還元」を盛り込んだ補正予算を、「臨時国会中に成立」する、と岸田総理が明言しています。
支持率が低調であること、成立までの時間と、年末にかけての総理の外遊日程、12月中の皇族の方々の誕生日の多さ。諸々を踏まえて、年内解散は見送られるのではないか、というのが大勢の見方です。他の時期としては、来年の年明け解散、来年度予算成立後の解散、会期末解散、あるいはこれまで絶対視されてきた総裁選までの解散をしないのではないか、などの説も飛び出していて、そうなれば選択肢は実に豊富でどうなるかは分かりません。
ただ、「サプライズ好き」とされる岸田総理のこと。するにしろ、しないにしろ、年内解散についてギリギリまで焦らすのはほぼ間違いありません。場合によっては、(非常にタイトな日程にはなりますが)年内解散に踏み切る可能性もゼロではないでしょう。

ゼロではない以上、国民民主党としても年内の戦いに備えることは必須です。
今回は、年内解散があった場合の国民民主党の獲得議席数を予測してみました。ですので獲得議席数も、現在も擁立数のまま、総選挙に突入したと仮定しています。(本当に解散となれば比例単独も含めて擁立数が増えることは確実ですが)
それではみてきましょう。



○比例北海道ブロック

小選挙区獲得議席数 0〜0〜0
比例獲得議席数 0〜0〜0

北海道は、全国の地域の中で、最も党勢が厳しいブロックです。広大な北海道で所属議員は市議2名。春の統一地方選では、新人が挑んだ道議選、北広島市議選、岩見沢市議選ではいずれも敗北。道議選では定数3のところを共産を上回り4位、北広島市議選は次点と、それぞれ善戦しましたが、あと一歩及ばずの結果になりました。また、擁立を目指した札幌市議選では労組との調整の関係で、決まりかけた擁立を断念しました。
北海道新聞からはこの結果を「党勢拡大の足場を築けなかった」と評されていて、道内支持率も低迷していることも合わせて考えれば、衆院の議席への道のりは相当厳しいものがあります。

具体的にみていきましょう。

まず小選挙区。
実は、全12ある道内の小選挙区は、全て立憲の総支部長で埋まっています。北海道は全国有数の「立憲王国」で、小選挙区で勝ち上がった現職が4人、比例復活が3人と多くの国会議員を擁しています。比例復活組も、立憲の比例枠内での争いはかなり熾烈。復活した3人全員が惜敗率85%超で、99%を超える人も。先述の通り、北海道では自民と立憲の勢力が拮抗していることから、多くの選挙区が「接戦区」となります。よって、立憲に、擁立する力、選挙戦を展開する力が生まれ、12ある小選挙区全てが擁立済みという状況になっています。
この状況下で、国民民主党が割って入って、小選挙区で擁立する、小選挙区で当選する、というのは簡単なことではありません。知事選を見てもわかるように、北海道では、国民道連と立憲道連で一定の協力関係があります。立憲との調整、連合北海道との調整、小選挙区擁立→勝利までのステップはかなり厳しいでしょう。
また、札幌市などは、国民民主党としての候補者が見つかる可能性がありますが、そういった都市部の選挙区は道内でも特に「自民と立憲の競っている地域」になっていて、立憲道連や連合は、票割れの懸念から、国民民主党の擁立に難色を示すことは間違いありません。逆に、北海道北部は、道内でも比較的自民が厚く、立憲の力が弱い地域になりますが、今度は国民民主党として、自前の候補を用意できる可能性が低くなるでしょう。
このような理由から、北海道の小選挙区での擁立や勝利はかなり厳しいのが実情です。次に比例を見ていきます。

「比例単独で1人擁立」は衆院選での道連の最低目標として、8月に決定され、先日、新人の小西さんを擁立することが明らかになりました。前回衆院選でも、小選挙区への擁立は見送り、比例単独で1人を立てました。
しかし、比例も情勢が厳しいことに変わりはありません。
前回衆院選で比例「国民民主党」の得票は7万3000票。
前回参院選で国民民主党公認の選挙区候補の得票は9万1000票。比例「国民民主党」の得票は9万票。
これに対し、前回衆院選での比例ブロックでの1議席獲得に必要な最低票数は30万票弱。票数を最低でも3倍させないとならない計算です。鈴木宗男議員が所属していた維新ですら20万票ほどで、議席を獲得できていませんから、その厳しさがわかります。

小選挙区も比例も、現時点での議席獲得は厳しいのが実情です。が、国民民主党として未来永劫不可能のままで良いわけはありません。次回の参院選、統一地方選と段階を踏みながら、着実な党勢拡大の上、いつかの段階で、衆院選での議席獲得も見えてきます。
その中で、今回は、(まず比例単独で決まりましたが)小選挙区への擁立は見送り比例に一本化するのか、小選挙区に立てるのか。ここは立憲や連合との関係や調整、あるいは様々なデータや数字、お金。色々なことを含めた高度な政治判断が必要です。
「比例単独での擁立」は既に決まっていますので、小選挙区への擁立があるか、という点に、当面は注目が集まります。


○東北ブロック

小選挙区獲得議席数 0〜0〜1
比例獲得議席数 0〜0〜1

東北は、次の解散総選挙において、間違いなく国民民主党の最重点ブロックになると思われます。国民民主党が、衆院選での議席増という目標を達成するにあたり、現実的なのが比例議席の獲得を増やすことだからです。濃厚とされる東京での1議席に比べ、比例東北は取れるかどうかまさに五分五分です。
実は、昨年の参院選における東北全体での国民民主党の比例票の数字(22万票ほどでした)を見る限り、22万〜24万票が獲得ラインの比例東北での議席は十分見込める位置にいます。が、参院選と衆院選は、選挙の仕組みが少々違います。

まず、参院選の選挙区は全県。衆院のように県1区、県2区、県3区、などと別れておらず、「〇〇県選挙区」という括りです。昨年の参院選では、山形でこれが上手くハマりました。現職の舟山康江さんが党公認で立候補した、それはすなわち山形県全域の公営掲示板に国民民主党公認候補のポスターが貼られ、投票所に記載されている「選挙区候補一覧」の候補の名前の隣に「国民民主党」と書かれたわけです。これにより、山形での国民民主党の比例票は、衆院選より大幅に伸びた一面があります。
ただ衆院選では、山形1区〜3区の全ての選挙区に国民民主党公認候補を立てることはあり得ません。山形では国民県連と立憲県連の連携が機能しています。参院選でも、予算案に賛成した舟山さんを心配する声もあったものの、立憲県連の代表は「信じる」として全面支援にあたりました。既に立憲の新人が決まっている1区で、国民県連が刺客を立てる可能性は、現時点で極めて低いと言えるのではないでしょうか。
現在、国民民主党は山形県内では、前回と同じ県2区に擁立を目指す方針です。全県選挙から小選挙区選挙に制度が変わる中で、県全域に党公認候補がいるという状況が叶わないことは、比例票掘り起こしにマイナスである可能性は高いと言えます。

加えて、衆院選の比例代表制は「政党名」で投票しなければなりません。参院選は「政党名」でも「個人名」では構わない、という若干わかりにくい選挙制度を採用しています。労働組合の組織内候補を抱える国民民主党にとって、有利なのは、「個人名」で投票できる参院選の比例制度です。参院選では、労働組合は、自分たちの代表である組織内候補を当選させるために、「個人名」を書く人を増やそうと必死になって応援します。「個人名」はそのまま党の票になりますから、昨年の参院選の国民民主党の比例票として紹介される数字の中には、「竹詰ひとし」と記されたものも、「かわいたかのり」と記されたものも含まれます。対して衆院選は、「政党名」の投票。労働組合としても「我々の職場の代表」である人を「個人名」として書けるわけではないので、どうしても票数としては下がる傾向にあります。例えば自動車の組合が強い豊田市では、国民民主党の比例票が、衆院選では得票率にして7%ほどでしたが、参院選では19%と大きな伸びを見せています。衆院選では豊田市を含む愛知11区に、国民民主党の候補は立っていなかったのに対し、参院選では伊藤孝恵さんが全県選挙で立っていましたから、先述の「小選挙区か、全県選挙か」というのも、この伸びには多少影響しているでしょうが、最大の要因は、やはり労働組合の動き方でしょう。おそらく参院選では、豊田市の「国民民主党」票として数えられている票の多くには、個人名で「浜口誠」と記されていたはずです。
同じことは東北でもありました。青森の六ヶ所村です。ここは電力の労働組合が強く、国民民主党の得票率は。衆院選では4.1%、参院選では21%と脅威の伸び率。繰り返しますが、参院選での「国民民主党」票の多くは、政党名で投じられたのではなく、電力総連組織内候補である「竹詰ひとし」の個人名が記されていた可能性が高いです。
では、次期衆院選ではどうでしょうか。残念ながら、こういった自治体では、選挙区に公認候補を立てたとしても、比例票は参院選に比べ、減る公算が大きいです。
そもそもの制度が、参院選の方が、国民民主党の特性に合った制度と言えるでしょう。

また比例東北ブロックは、次の衆院選から、定数が1減ります。ギリギリ獲得するか否かの国民民主党にとっては手痛い事実です。

このような理由から、比例東北での議席獲得を、参院選の得票を見て、「いけるっしょ」とたかをくくれるコンディションではありません。
また、現在の比例東北での小選挙区擁立数は2人。玉木代表や榛葉幹事長が、これらに加えて山形2区や福島4区で擁立を目指すとしていますから、今後増えてくるものと思われますが、仮に現在の擁立状況のままで総選挙に突っ込めば、比例東北で議席を獲得できる可能性は極めて低くなります。「選挙区を立てれば比例も増える」は国政選挙の鉄則。選挙区でどれだけ立てられるかも、一つのポイントになるでしょう。これは後ほど詳しく書きます。

よって現時点では、小選挙区の擁立次第、というのが大勢の見方です。小選挙区で1人しか立てなかった前回の衆院選でも19万票を獲得していることから、あと2、3万票の上積みが必要なだけだからです。特に、人口が多いものの、党の基盤がない宮城で擁立できるかにも注目です。

次は個々の小選挙区の情勢です。

〈青森2区〉
自民現職 ◎
立憲新人? △
国民新人 ▲
共産新人 ▲
いわゆる自民王国。八戸や十和田を含む選挙区です。
ここから国民民主党公認で立候補されるのが、金濱あきらさん。春の青森県議選に八戸市から立候補され、「やぐら」(看板)のない選挙カーを使うなどして選挙戦を展開しましたが落選。この時は国民民主党推薦でしたが、今回は入党→公認の流れです。
青森2区は前回衆院選で、自民、立憲、共産の三つ巴の争いとなりましたが、自民が12万6000票を得て圧勝。立憲候補は6万5000票ほどで惜敗率は50%ほどと、野党にとっては厳しい選挙区です。
まず大きなポイントになるのは、立憲が擁立するかどうかです。実は立憲は、青森2区に、女性候補の擁立方針を固めていましたが、この女性が春の県議選に立候補することになり、公認を辞退。その後、空白となっているのです。地元紙報道では、立憲の田名部県連代表が、2区でも候補者の具体名が「複数あがっている」と発言したと報じられており、田名部代表の地元である2区での擁立の姿勢は崩していないようです。
また維新も2区での擁立を「可及的速やかに」としています。そもそも維新は全選挙区擁立の方針ですから、この発言は目処が立っていてのものではない可能性が高いですが、立憲、維新、国民、共産、と野党系で4つに割れれば、ただでさえ厳しい保守王国で、さらに苦しい戦いになります。
ただ、金濱さんは、こまめな街頭活動を展開、先日は集会も行い50人ほどが集まったとのこと。他党の動向に加え、伸び悩む青森県内での党勢拡大なるかにも注目です。

〈秋田3区〉
自民現職 △+
国民元職 △
前回は自共対決の選挙区でしたが、今回は前々回と同じ構図に。国民民主党が元職の村岡敏英さんの擁立を決めました。
村岡さんは秋田3区で立候補→比例復活で議員を2期務めたあと、2017年の衆院選で希望の党の逆風もあり落選。その後は秋田県知事選や参院選に立候補し、いずれもかなり善戦したもの落選していました。
元官房長官を父に持つ村岡さんは、小選挙区当選の経験こそないものの、選挙の強さは凄まじいものがあります。2021年の県知事選では、自公に加え社民が支援した現職に対し、およそ4万票まで迫り、得票率41%を獲得しました。地盤の秋田3区にあたる地域ではより肉薄。与党が推す現職知事に対し、数百票差に追い詰めています。村岡さんの地元で、事務所を構える由利本荘市に至っては、得票率68%とダブルスコア以上の数字を叩き出しています。
2022年の参院選では、自民の現職に対し、国民が推す村岡さん、立憲が推す女性新人、共産の公認候補と野党で3つに分かれましたが、ここでも他の野党候補を引き離し、2位につけました。秋田3区にあたる地域では軒並み自民を上まりました。

参院選秋田選挙区

ここまで選挙に強いわけは自民支持層にも食い込める点。自民党所属だったお父さんの地盤も引き継いでいることも大きいと思われます。
ただ、懸念要素も。2019年の参院選では野党共闘が整い、野党系無所属の寺田静さんが当選しました。この共闘には当然のことながら共産も参画していました。村岡さんは「基本的姿勢が違うところと国政は一緒にできない」として、自民の現職を支援。選挙後には、村岡さんが提出していた「連合秋田議員懇談会」の退会届が受理され、連合秋田との関係も解消されました。これが現在まで続いているかは不明ですが、2022年の参院選で、立憲が推した女性候補は寺田さんが擁立を主導した方。秋田3区で立憲や寺田さんとの協力関係が築けるのか、それが推薦など積極的支援である必要はないかもしれませんが、立憲の独自候補擁立に至らないかどうか。注目です。
また、県知事選や参院選で、相手候補はいずれも、県3区にあたる地域が地盤ではない人たちです。村岡さんが今回挑む相手である、3区の自民党の現職は、当然3区に根を張っています。全県選挙において「他地域出身のよく知らない自民候補と、地元出身で保守系の村岡さんなら、村岡さんを選ぶ」けど、3区の選挙になったら「地元出身で保守系の村岡さんではなく、地元出身の自民候補を選ぶ」自民支持層も多いでしょう。政策も大切ですが、会ったことがあるかどうかを重視するのもまた、日本の選挙の姿です。
過去の全県選挙で、村岡さんが自民候補に、秋田3区内の得票で上回っているのは事実です。でもそのことと、秋田3区の選挙で上回れるかどうかとは、また別物なのです。

このほかにも、東北ブロックでは、山形2区、福島4区で擁立を目指す方針です。
山形2区は舟山康江参議院議員の地盤で、基盤の強い山形での比例票を考えても、前回選に引き続き擁立をしたいところ。福島4区は電力系の労組が強く、擁立が検討されています。


○北関東ブロック

小選挙区獲得議席 0〜1〜1
比例獲得議席数 1〜1〜1

北関東は前回衆院選で比例1議席、小選挙区1議席を獲得しました。比例では埼玉14区の鈴木義弘さん、小選挙区では茨城5区の浅野哲さんがそれぞれ当選しました。

まず、比例では基本的に、1議席の維持に留まると思われます。群馬では、前回参院選での比例票の伸びが見られましたが、これは群馬県内は自動車の労働組合が強いため。そのほかは埼玉で若干伸ばしたものの、茨城、栃木はほぼ現有維持となる数字でした。保守王国にあたり地域が多く、比例2議席目への壁は高そうです。

次は個々の小選挙区です。

〈茨城5区〉
国民現職△
自民現職▲
前回選は本当に激戦でした。序盤情勢は、どの情勢報道でも「自民前職先行」。当初、国民民主党は比例北関東で議席を獲得できないとされていたため、浅野さんは小選挙区で負ければ、比例復活の枠がないと思われていました。
そもそも、茨城5区は労働組合が非常に強く、2017年まで、浅野さんの前任にあたる大畠さんが小選挙区で議席を守り続けていました。が、大畠さんが引退した2017年の衆院選では、自民が久々に勝利、後任で新人の浅野さんが比例復活、という結果でした。「小選挙区議員VS比例復活議員」の構図からして有利とはいえませんでした。
また、選挙戦直前で共産に独自候補を立てられ、当初想定された「野党共闘」の形が整いませんでした。浅野さんと共産党では原発政策をめぐり大きな違いがあり、原発の当事者でもある5区で両党がぶつかるのは自然なことかもしれませんが、2021年の「共産までまとまれば勝てる」という野党全体の雰囲気も踏まえれば、浅野さんにとっても(選挙区当選だけ考えれば)手痛い擁立だったのは間違いありません。
そんな後のない状況で、党は幹部を次々に投入。第一声には榛葉幹事長や矢田副代表(当時)、選挙期間中には玉木代表、連合の芳野会長がテコ入れに5区入りし、最終日は玉木代表が終日張り付き。その結果、浅野さんが8000票差で競り勝っていました。
今回の選挙は、小選挙区現職ということもあり、現時点で、浅野さんが若干有利であると思われます。昨今の労組の集票力低下が指摘されているとはいえ、昨年の茨城県議選でも、日立、高萩・北茨城でそれぞれ候補を通し切っていることからも、まだまだその力は健在。
ただ自民の相手候補も現在デジタル副大臣。保守王国の茨城で数少ない「自民が負けている選挙区」のため、集中攻撃をかけてくる可能性があります。
前回と比べ、自民候補とどれくらいの得票差がつくのか、あるいは迫られるのか。今回も激しい戦いが繰り広げられそうです。

〈埼玉13区〉
自民現職 ○
国民新人 △
自民現職の三ッ林裕巳さんに、国民民主党から新人の橋本幹彦さんが挑む構図。
橋本さんは、春の千葉県議選に、長らく自民独占&無投票が続いていた成田市(定数2)から、立憲と国民の共同推薦を受けて立候補。選挙期間中は、党籍を持つ国民民主党から、玉木代表、前原代行、立憲からは野田元総理も駆けつけていましたが、次点で落選していました。
今回の新13区は、区割り変更の影響を受けた選挙区で、前回選までの旧13区とは異なるエリアになります。新13区の一部は、後述の党所属の衆議院議員、鈴木義弘さんの地盤になります。旧14区は南北に細長い選挙区だったため、区割り変更はそれを分割する形で行われ、一部が今回の新13区になっているのです。(旧14区の一部は新14区になりました)
何より、自民の三ッ林さんは、前回選まで鈴木義弘さんの相手候補でした。鈴木さんは地盤が三郷市であるため、それが含まれる新14区を選挙区に選びましたが、三ッ林さんは幸手市において支持が厚いことから、新13区を選択した、という経緯のようです。
いずれにしろ、13区と14区は隣り合う選挙区であり、13区には鈴木義弘さんの支持者もいますから、連携に注目です。
また、立憲や維新が立てるのか、それとも橋本さんが統一候補的な形でまとまるのかによっても、構図や情勢がかなり違います。新設区になるため、野党各党の擁立はまだ進んでいませんが、今後本格化すると思われ、今後の情勢はそこに依存する部分も大きく、注視が必要です。

〈埼玉14区〉
公明現職 ○
国民現職 △
維新新人 △
先述の通り、旧14区の自民現職が新13区に移ったため空白となり、そこに選挙区議席の拡大を目指す公明が石井啓一幹事長を擁立。注目区になっています。
国民民主党は比例復活の現職、鈴木義弘さんを引き続き擁立。維新は昨年の参院選に埼玉選挙区から立候補し、次点で落選した男性を擁立しました。
公明党は、選挙区立候補者の比例重複を基本的には認めていません。選挙区で落ちたら一発アウト、それが党幹事長であろうとも、ということです(関西では維新の伸長もあり、次回から比例重複を認めるようですが)。これは他党と比べてもかなり厳しい措置です。
基本的な戦いの構図は、「公明が守れるか」という点になると思われます。特に公明としては、「常勝関西」と言われた固い地盤である兵庫大阪の小選挙区で全敗の可能性も高まる以上、そして党幹事長で、次期代表の最有力候補を擁立した以上、14区では勝利を見込んでいるし、確実なものとしたいし、そのためにあらゆるリソースを投入するでしょう。
ただ、野党側にもチャンスはあります。まず国民民主の鈴木さんは、元々は三郷市選出の、自民党の埼玉県議でした。その後は維新や無所属、希望など、野党内でも「保守系」とされるルートを辿られています。なぜこれが有利に働くのか、それを紐解くために、まずは最近の自公関係についてみていきます。
最近、特に首都圏で、自公関係はギクシャクしています。確かに岸田総理と山口代表が関係解消を取り消しましたが、立川市長選や都議補選で、自民が落とした大きな要因は、そこにあるのではないか、という分析記事も多数出ている状況。何より、東京に限定したとはいえ、自公関係を「地に落ちた」を評したのは、この14区の石井幹事長です。世論調査等でも、自民党の保守派とされる支持層の「公明党との関係を解消すべきではないか」という層が厚くなってきています。
また、普通、「公明候補VS野党候補」という選挙区では、普通の選挙区に比べ、白票が多くなります。ここからは、野党は支持しないものの、公明を毛嫌いする層(自民の中でも保守派にあたる層)が一定数いる事が窺えます。
このような理由から、自民党の出身で、「保守」を自認する鈴木さんが、公明を忌避する自民支持層を取り込める可能性があります。もちろん、公明側も自民支持層の取りこぼしが、自らの敗北に直結するのは認識しているはずですので、ここは激しい奪い合いになると思われます。
鈴木さんにとって不利な面は、維新の擁立です。一時、内定していた候補が、選挙区移動となり、維新候補が不在となっていましたが、新たな候補として、去年の参院選で敗れた男性を公認。立候補経験のある分、知名度ももちろん他の新人よりは高いでしょう。加えて、維新も自民支持層と親和性が高いため、自民支持層を奪っていく可能性があるばかりか、両党の擁立で野党票も割れる事が懸念されます。
夏の代表選挙中、前原代表代行は、「選挙ドットコムちゃんねる」での討論番組でこのことに触れ、詳しいことは言えないとしながらも、維新の幹部と」話をしている」と明らかにしました。ただ、維新側も、支部長不在期間に、「このまま擁立しないのか」という記者の問いに「必ず立てる」(藤田幹事長)と明言するなど、関東で、しかも公明幹事長との直接対決というインパクトある舞台への擁立への気持ちは強そう。その後、維新から立候補し善戦した候補をぶつけてきたわけですから、この前原代行の調整もうまくいくかどうかは極めて不透明です。
現時点では公国維の三つ巴の公算が高そうです。鈴木さんは、公明に対しては自民党出身の保守派として、維新に対しては現職として、それぞれの強みを活かす必要があります。


○比例南関東ブロック

小選挙区獲得議席 0〜0〜1
比例獲得議席 1〜1〜1

南関東ブロックでは、前回小選挙区での議席獲得はなかったものの、比例で1議席を獲得。選挙1ヶ月前の駆け込み出馬となった、鈴木敦さんが比例復活しました。

衆院選では南関東全体で38万票、参院選で45万票の獲得票数でした。都市部を含むため、衆院選〜参院選までの間に様々な党の露出や、千葉や神奈川も両県に公認候補を擁立したことで、無党派層からの支持が増えたと思われます。1議席はまず固いでしょう。ただ、2議席目への壁は厚いです。比例区の3増3減で、比例南関東の定数が1増えるとはいえ、前回の衆院選では共産が53万票を得ても1議席の獲得で留まっていることから、現在の小選挙区への擁立規模では、なかなか2議席目は厳しそう。

〈千葉5区〉
自民現職 △
立憲新人 △
国民新人 ▲
維新新人 ▲
千葉5区は春の補選で注目された選挙区です。「政治とカネ」の問題を起因とする5区選出だった自民党議員の辞職によって補欠選挙が行われとはいえ、主要野党全てが公認候補を擁立した経緯から、当初は、与党安泰との見方が大勢でした。しかし、選挙戦が始まると、情勢は日に日に緊迫。自民と立憲が競り始めたのです。終盤にかけて、その差はどんどん縮まっていきました。岸田総理のテコ入れもあり、最後は自民に軍配があがったものの、立憲には5000票差まで迫られる結果に。与野党一騎打ちならこの結果も納得できるものの、野党乱立の中での数字に、自民党の中には危機感が、立憲の中には「野党でまとまれば勝てた」という反省が、それぞれ残りました。
ただ、その立憲の「反省」には、国民民主党内でも評価が割れています。
まずは、補選に国民民主党公認で立候補し、次期衆院選に向け引き続き活動している、岡野さんの「補選での数字」を客観的にみていきます。
岡野さんの獲得票数は2万5000票ほどで、順位は3位。自民が5万、立憲が4万5000ですから、岡野さんは巨大政党の半分ほどとなる票を獲得し、維新には2000票差で上回りました。 またNHKの出口調査によると、岡野さんは、無党派層で自民候補を上回る2番手、10代20代でも2番手、30代ではなんとトップとなる数字を叩き出していました。玉木代表を始め、党所属国会議員が何度も応援に入ったこともあり、党勢を考えれば、報道各社にとって、予想以上の善戦であったことは間違いありません。
これらの数字に対し、候補者を擁立し有権者に選択肢を示せた、と独自擁立に肯定的なのが玉木代表。野党乱立の結果、自民に議席を渡すことになったとして、独自の行動ではなく事前の調整を重視するのが前原代行です。ここは、代表選でも議論が戦わされた部分ですが、玉木代表からしてみれば、積極擁立は比例票掘り起こしにつながり(補選では関係ありませんが)、候補者調整をすれば小規模政党である国民民主党は、候補を取り下げるばかりになってしまうという思いがあります。逆に、民主党民進党で代表を務めた経験のある前原代行としては、立憲と調整しただけでも、自民の議席を減らすことができた、という思いがあるのでしょう。
ここは難しいところですが、立憲と国民の票を単純に足せば、自民党を上回ることができたのは事実です。野党として「勝てる可能性があった選挙区」だけに、立憲内から国民民主党に対し、恨み節が漏れるのはある意味当然でしょう。が、最近、野党調整において「単純に足す」だけでは、野党側に勝利がもたらされないこともしばしばです。国民民主党支持者の中には、立憲に忌避感を持つ層も一定数おり、国民民主党の擁立は、立憲にとって不利かどうか、一概にはいえない状況です(国民民主党が擁立しなかったとしても、それらの票は立憲にいかず、自民や維新に入るからです)。
次期衆院選では、自民と立憲、両者の戦いを軸に、岡野さんや維新候補がどこまで食い込めるかが鍵になります。補選と同様の顔ぶれが予想され、立憲も、小選挙区当選を見据え、野田佳彦さんが推す候補が出馬する隣の千葉6区と共に、重視して臨みます。国民民主党も岡野さんを先頭に選挙戦に挑む構えで、調整の機運はありません。

〈神奈川18区〉
自民現職 △
国民現職 ▲
維新新人 ▲
18区も注目区。相手となる自民現職が、あの、「瀬戸際大臣」だからです。
自民党としては難航した調整の末、統一教会の関係で一躍知名度を上げた山際元大臣、国民民主党は比例復活の現職の鈴木敦さん、維新が新人をそれぞれ擁立しました。
普通に考えれば、山際さんは大臣経験者で現職ですから、勝利は固いでしょう。一方で、統一教会に対する無党派層の忌避もかなり強いのが現実です。この選挙区の情勢は、完全に「風次第」です。野党側としては、「統一教会」が選挙の争点になれば、かつ、出来れば一騎打ちに持ち込めれば、一気に勝利の芽が出てきます。
ただ、既に国民と維新で野党が割れています。現在のところ、立憲が擁立を目指している旨の情報はありませんが、「統一教会」の象徴的な選挙区になるため、本当に立てないのかはまだ注視が必要。
鈴木さんも、前回選は、駆け込み出馬が響き、選挙区得票率が12%程にとどまっています(10%を切ると、比例復活する権利を失います)。また、区割り変更で旧10区から、新18区に選挙区移動。新しい活動範囲になった高津区では、春の川崎市議選で15票差の次点で公認候補が落選していて、まだまだ厳しい戦いが続いているのが事実。党内では最年少議員で、次期衆院選では、「野党の統一候補」となる機運を醸成し、無党派層からの支持を得ることができるかが鍵になります。

〈神奈川19区〉
自民新人 △
国民新人 ▲
維新新人 ▲
共産新人 ▲
19区は、日本で唯一、横浜と川崎、政令指定都市をまたがる選挙区です。10増10減で神奈川では小選挙区の数が増えますので、19区は「増えた」全く新しい選挙区です。一時は先述の山際元大臣も19区から出馬か、と言われていたましたが、結局18区からの立候補になったため、自民も現職がいない、野党側にも現職がいない、新人乱立の様相となっています。
自民側は、都筑区を地盤とする元横浜市議を立てました。横浜市会時代、初当選は最年少議員としてだったり、3期目は都筑区で歴代最高得票を叩き出したり、政策、選挙共に定評がある方です。春の市議選では、次期衆院選出馬を見据えて立候補を見送り、後継候補を2位で当選させました。
対する野党側。国民民主党は、昨年の参院選で神奈川選挙区から立候補した経験のある深作ヘススさんを擁立。神奈川19区が法律上できる前、10増10減の法案が国会を通る前に、19区での活動を開始しました。参院選では「12時間駅頭」と称して連日駅に立ち、玉木代表も繰り返し応援入り。結果は次々点落選でしたが、立憲の2人目の候補を上回る25万票を獲得。翌日の産経新聞には深作さんに言及した記事が出るほどでした。また春の横浜市議選では、選挙区内の都筑区で新人を当選させ、選挙区内の党勢拡大も進みます。
維新は、宮前区が地盤の県議の擁立を決めています。が、県議は春の県議選で初当選したばかり。維新に強い追い風があるとはいえ(最近は、万博や相次ぐ不祥事で、ずいぶん落ち着きましたが)、半年強での鞍替えが、有権者の理解を得られるのかは注視が必要です。
情勢としては、基本的に、自民新人を軸とした戦いが展開されるものと予想します。ただ、全くの新設区+全員新人という点から、最後までどうなるか、読めない選挙区です。元自治体議員の自民と維新の2人は、それぞれ、議員時代の地盤が、都筑区と宮前区で異なりますから、お互い、自身の選挙区外でどう支持を広げるかがポイントになるでしょう。深作さんは全県選挙である参院選出馬の経験があり、宮前区出身、都筑区在住、と、どちらかの自治体ではなく、「19区の候補」であることを強調する方針です。
都市部にあたるため、衆院選に向け、一気に数字が野党側に動く可能性もあります。が、現在の情勢と維新と国民で候補が割れたことは、与党にとっては有利に働く可能性は高いです。国民民主党関係では、参院選で選対委員長として、深作さんの擁立にあたった前原代行の維新との調整手腕に注目が集まると共に、隣の18区と合わせた相乗効果にも期待です。


○比例東京ブロック

小選挙区獲得議席数 0〜0〜0
比例獲得議席数 1〜1〜1

東京ブロックは、比例で、新たな議席獲得が濃厚なブロックです。そもそも、前回の衆院選では、小選挙区で2人しか擁立できなかったことが響き、31万票の約1万票足りず、議席の獲得を逃していました。一方、参院選では、都ファと選挙協力を実施。選挙区では、都ファ公認の候補を国民民主党が推薦、比例では国民民主党の4人の産別候補を都ファが推薦、といういわゆる相互推薦の体制を引きました。その結果、40万票超、れいわを上回る得票を獲得したのです。
次期衆院選でも「都ファとの距離感」は、一つの大きな鍵になります。参院選の選挙期間中は、小池知事、都ファの荒木候補、玉木代表が、繰り返し横並びし、特に小池知事が演説の中で、比例での国民民主党への投票を呼びかけたことは、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
衆院選から参院選への急激な比例票の伸びは、もちろん、メディア露出の増加や、党幹部が東京対策に力を入れたことも大きいでしょうが、間違いなく、都ファ票や小池都知事票が上乗せされたことも要因の一つです。
一方、都ファ側は、参院選の東京選挙区では荒木候補が28万票の獲得にとどまり、当落線上から大きく外れての落選となりました。各報道の調査によると、国民民主党支持層が、維新候補や無所属候補に流れたことが明らかになっています。また、地方選で、都ファが主導して擁立した候補に、国民民主党が推薦した形となった選挙で、当選した事例もあまり見られず、両党の協力体制がどこまで続くのかは不透明な一面もあります。
また、そもそも都ファが衆院選にどのような布陣で臨むのか、選挙区で候補を立てるのか、と言った方針さえも明らかになっていません。今後は、都ファ側の対応に注目が集まります。
仮に都ファが選挙区にも立てるのであれば、選挙協力のレベル(小選挙区を棲み分けるのか、比例名簿を一緒にするのか等、選択肢は豊富です)が、国民民主党の東京における選挙結果に一定の影響を与えそうです。

また、5人の候補の、都内での小選挙区当選はなかなか厳しいのが実情。その中での惜敗率争いで、比例の復活順が決まるため、惜敗率として誰が高くなるのかにも注目です。

〈東京12区〉
自民現職 △+
維新現職 △
国民元職 ▲
東京の小選挙区は10増10減の影響をモロに受けている選挙区が多く、12区もその一つ。旧12区では、前回の衆院選で、公明の若手のホープである岡本三成さん、維新の新人の阿部さん、共産の元職、「三つ巴」も構図が展開されました。旧12区は、前々回まで、公明党の前代表である太田さんが勝利してきた、公明党の牙城でしたが、太田さんの引退に伴い、選挙は乱立激戦に。公明は、比例北関東ブロックの衆議院議員だった岡本さんを後継として擁立。共産は、太田さんに連続で挑み続け、一度、比例復活したこともある女性元職を、引き続き擁立。そして、それまでの「公共対決」では白票も多かったことを踏まえ、割って入ったのが維新。選挙区当選の好機と見て、集中的な選挙戦を展開しましたが、結果は公明の岡本さんが逃げ切りました。ただ、阿部さんも比例復活し、初当選を果たしました。旧12区を巡っては、X(旧Twitter)で、連合東京が岡本さんの応援動画を掲載し、驚いた方も多かったのではないでしょうか。
今回は、その旧12区が、12区と29区に真っ二つに割れます。その結果、現職の2人の対応としては、岡本さんは29区へ、阿部さんは12区へ。それに伴い、12区から与党の現職がいなくなったため、自民が、前回選では比例東京ブロック単独候補として当選していた現職を、12区に充てました。国民民主党は、過去に維新に在籍したこともある大熊利昭さんを擁立。現時点では、この3人が立候補を表明しています。
これはどの東京の選挙区においても言えることですが、自民と公明との関係修復が、実際にどこまで進むかで、東京の選挙結果は大いに変わり得ます。自民党としては、立川市長選で負け、今年に入ってからあった二つの都議補選では、一方で当選したものの予想より低いよく表にとどまり、片一方は落選と、公明との関係悪化後の東京の地方選挙の結果は振るいません。もちろん、その後、関係修復で合意はしていますが、一度こじれた関係は、そんなに簡単に回復するものではないでしょう。
野党側の勝ち方として「行って来い2票」というものがあります。例えば、公明支持者が、元々自民党に入れるはずだった1票を、入れるのをやめただけなら、自民側の1票のマイナスに留まります。が、その1票を維新に入れたら。自民側はマイナス1票、野党側はプラス1票で、「行って来い」で「2票」というわけです。まさにその現象が、立川の都議補選で起きたのではないか、と言われています。都ファと公明は、いまだに関係が良好で、小池都知事も直々に公明関係者に協力を要請。その要請と、自民との関係悪化の相乗効果(?)で、公明支持者の票が、「行って来い2票」で自民から都ファに流れ、都ファの候補が予想外の一位当選をした。そう見る向きもあるのです。
維新と公明も過去の選挙協力を背景に、一部親和性あるため、この「行って来い2票」が起これば、一気に情勢がひっくり返っていく可能性はあります。現時点では、12区においても、自民が一歩優勢ですが、あとは自公関係と無党派の風次第。
国民民主党の大熊さんは、そこにいかに食い込めるかが焦点。現職時代の活動区域と12区は重ならないため、元職の強みは活かしにくいですが、12区内でも、春の統一選で新たに党所属の地方議員が誕生したことは大きく、駅頭にも力を入れています。

〈東京17区〉
自民現職 ◎
維新新人 ▲
国民元職 
自民の平沢さんの固い地盤です。1996年の小選挙区制度導入以来、一度たりとも負けたことはなく、比例復活を許したのも、政権交代の2009年の一度だけ。また毎回、公明推薦は受けておらず、ラジオ番組では「公明の応援がなくても選挙は勝てる」と断言するなど、関係悪化の影響は17区には及ばなさそうです。
維新の新人は、元々、旧国民の17区の候補予定者でしたが、合流騒動に伴って維新に入党。国民元職の円より子さんは、民主党の副代表や都連会長の経験もある大ベテラン。両者とも前回に引き続きの立候補です。
基本的に、平沢さんの圧倒的優位で、情勢は推移すると思われます。円さんも前回選で、当初国民民主党から立候補要請を受けた時には、当時比例ブロック単独一位で再選を目指すことが決まっていた、菅野志桜里さんを当選させるための、比例票掘り起こしのための出馬だった、とXで漏らしたほど。
円さんとしては、前回の衆院選後、1ヶ月半後には再挑戦を決め、活動を開始しています。議員時代には、「女性の権利」の問題に力を入れ、現在まで「女性のための政治スクール」を主催し、最近は本も出版。民主党で幹部を務めた経験から、都内で知名度は一定あり、うまく活かせるかが焦点です。

〈東京24区〉
自民現職 ○
国民新人 ▲
自民の現職は、現政調会長の萩生田光一さん。その選挙区に、前回に引き続き、国民民主党公認で、元都議の佐藤由美さんが挑みます。
前回選は、この2人に加え、共産の新人、社民の新人の4人での争いでした。選挙戦は終始萩生田さん優位で進み、最後は15万票に迫る得票で圧勝。ただ、事前の情勢調査では、多くの社が、共産が2番手で報じていましたが、最後は佐藤さんが共産候補に70票差上回り、2番手となる、国民民主党支持者にとってのサプライズもありました。
佐藤さんは、前回選の投開票日の10月末から2ヶ月足らずの、12月に、再度の挑戦を決め、公認内定。現時点では、まだ他の野党は、候補者の擁立を発表していません。
今回も、選挙戦は萩生田さんが優勢で進むと思われます。統一教会関連で、自民党や政権で幹部クラスだった萩生田さんがメディアからの集中砲火を浴びたこともあり、若干の減速はあり得ますが、野党側も、都内前選挙区に擁立する方針の維新、国民民主を与党とする協賛などの追加擁立が見込まれ、佐藤さんで一本化できる状況ではないため、その構図の面も後押しし、萩生田さんの優位は、現時点で変わらないものとみます。
佐藤さん側としては、野党の構図作りも、選挙戦に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。野党統一的立ち位置なのか、乱立になるのかでは、戦略も変わってきます。
駅頭や街宣などの活動を続け、前回選から得票を伸ばせるか。前回2番手だけに、国民民主党にとっても重点選挙区です。

〈東京28区〉
自民元職 △+
立憲新人 △+
維新新人 △
国民新人 ▲
共産新人 ▲
東京での自公関係悪化の発端となった地です。そこに、主要野党全てが公認候補を立て、注目区になっています。
最近、公明は、選挙区での積極擁立の方針を強めています。理由は、組織の衰退による比例票の減少と、「常勝関西」と呼ばれた大阪兵庫の6つの小選挙区で全敗する可能性があること。議席を維持するためには、自民の協力を取り付けた形で、小選挙区の議席を増やす必要があります。そんな中での「10増10減」は、都市部で新たに選挙区が増えるので、公明にとってはチャンスでした。先述の埼玉14区、後述の愛知16区など、新しく増えた、自民の現職がいない選挙区で、新たに候補者を立て、議席維持への布石を打ちました。
もちろん東京も、選挙区の数が増えるため、公明は、現有の1議席に加え、もう一つ小選挙区を自らに割り当てるよう、自民に要求していたのです。公明が求めた具体的な選挙区が、28区でした。一時、自民もそれを了承していた等、様々な報道はありますが、最終的には、自民が元職を立て、公明は擁立を断念しました。
その結果、公明は、自民と東京での関係断絶を表明。現在は回復していますが、その発端の地は28区だったのです。
自民側としては、関係修復をしたとはいえ、公明の組織には遺恨が残っていることは確実です。しかも28区では明らかにそれが強い。また、この元職の候補は、前回選で立憲新人に敗れ、比例復活も叶わず落選しています。これらの点で、本来であれば、自民元職は分が悪く、劣勢といえます。
しかし、野党全党の乱立が、自民を下支えしているのも事実です。今後、立憲と共産の調整はつく可能性がありますが、維新や国民まで含めたものとなると不可能に近いのが現状です。
国民民主党の新人、奥村祥大さんは、現在、29歳、全候補の中で最年少。選挙区のある練馬は、石黒都連幹事長のお膝元で、石黒幹事長は春の区議選で堂々のトップ当選を果たしています。また、28区は、野党が乱立し、野党同士の中でも争うため、他党との差別化も重要になってきます。
28区には、自民や立憲をはじめ各党とも力を入れていて、都内屈指の注目区になります。

〈東京29区〉
公明現職 △+
立憲新人 △
維新新人 △
国民元職 ▲
都内で公明が立てる唯一の選挙区、29区です。
29区には、公明の現職、岡本三成さん、立憲からは前回衆院選に引き続き出馬する男性元職、維新からは昨年の参院選に東京から立候補した経験のある女性新人、国民民主党からは元職の樽井良和さんが立候補します。
前提情報として、前回選で、岡本さんと対戦した2人の候補(維新の現職と共産の元職)は、いずれも今回の選挙では29区から立候補しないことを決めています(維新の現職は区割り変更で別の選挙区へ、共産元職は次期選挙への出馬見送りを表明)。
その上で、今回選の構図も、公明の中でも若手にあたり、将来の代表候補と呼び声の高い、岡本さんが、分裂する野党に一定リードしての戦いになるものと思われます。そこに立憲と維新の、「政治家経験」と「選挙経験」の両方を持ち合わせる候補が迫り、国民民主党の樽井さんが追います。
一時は、公明の側から自民の推薦は受けない方針を示していましたが、関係修復で合意後、自民が早々推薦を決定していることも、公明としてはプラスに働きそうです。(もちろん前述の通り、自民側にも公明へのアレルギーは根強いものがあるため、一部は維新や国民に流れそう)
野党側ですが、まず立憲元職。実は、この候補は、前回選で、出馬した選挙区が立国競合区でも無かったのにもかかわらず、連合の推薦が得られていませんでした。背景事情としては、東京では、共産の勢力が強く、都議会でも議席数では共産>立憲ですし、昨年の参院選でも(立憲は2人たてたとはいえ)、共産の候補が立憲の蓮舫さんの得票数を上回るなど、一定の基盤があります。都内には与野党接戦区も多く、それに競り勝つためには、立憲としても共産との選挙協力は大きな選択肢になります。その雰囲気の中で、この立憲元職は、自身のビラに、共産の都議候補との対談記事を掲載。真偽の程はわかりませんが、読売新聞の報道によると、党の平野選対委員長(当時)はこの件に、「お前、何考えてんねん」と激怒したと言います。加えて、この方、都議選の墨田区選挙区でも共産の候補の演説会に参加。墨田区では、国民民主党候補が連合推薦付きで立っており、選挙後、玉木代表が強い不快感を表明するなど、立国関係には悪い影響を残しました。
その様な経緯の中で、連合は前回選で元職への推薦を見送ったものと考えられます。対して、前述の通り、岡本さんは前回選で連合の支援を取り付けていて、樽井さんも国民民主党の候補。今回、連合がどの様な対応をするのかは注目です。
次に維新候補。元大阪市議で、昨年の参院選では、東京選挙区から維新公認で立候補。最後の6議席目の争いで、れいわの山本太郎さんに僅かに届かなかったものの、一定の存在感を発揮しました。その候補を29区に擁立したのは、29区が公明の選挙区であることも大きい様で、藤田幹事長は「非常にチャンス」として、力を入れます。
国民民主党は、前回選は、東京10区で活動し、選挙直前で比例中国ブロックへ移動し落選、その後も衆院選に向け活動していたものの、党からの要請で参院選に比例代表から出馬、そして今回、東京29区からの出馬が正式に決まった樽井良和さんです。樽井さんは「表現の自由」に関わる政策に精通していて、衆参両院の議員の経験もあります。春の統一地方選では選挙区に含まれる、荒川で新たに議員が誕生、足立でも比較的上位で現職が再選を果たしていて、党組織としての体制も強化されています。
一方、東京では、国民民主党と協力関係にある都ファの動向ですが、特別顧問の小池都知事は公明との関係が良好で、岡本さんの会合にも度々出席。国政進出を目指す都ファの具体的な選挙区への擁立方針も固まっていませんが、29区での対応にも注目が集まります。
29区での注目ポイントは、公明が自民の支持を受けた上で勝ち切れるか、立憲と維新どちらが多く得票できるか、連合と小池都知事の動向がどうなるか。
各候補とも小選挙区での当選を狙って活動を続けています。


○比例北陸信越ブロック

比例獲得議席数 0〜0〜0
小選挙区獲得議席数 0〜0〜0

比例北陸信越は、なかなか議席獲得の目処が立っていません。前回選は、ブロック内での擁立が、新潟2区のみ。立候補した高倉元県議は、小選挙区で自民候補に大差をつけられ落選、比例復活もなりませんでした。(高倉さんは、その後返り咲きを目指し、県議補選に立候補するも、連合から候補をぶつけられる形になり落選、その直後の弥彦村議補選でも村長派VS反村長派の戦いに割って入れず落選、政界を引退されています)

1議席獲得に必要な最低得票数は25万票前後。国民民主党の参院選での得票が14万3000票ほどですから、相当厳しいのが実情です。
加えて、参院選では、福井や新潟などで電力関係の個人票が多く出る傾向にあるため、注意が必要です。

一方、北陸信越ブロックの各県連では、党勢拡大が着実に進んでいます。新潟では、新潟市議選で新人が当選したのに加え、労組系の複数の議員らが集団入党。石川では、学生部の活動が活発です。長野は、大塚県連代表が旗振り役となり、独自に県連スクールを開講。福井でも、元職の当選や、入党などで議員数が増えています。
特筆すべきは富山です。実は、富山県連は、橋本・富山市議(県連幹事長)が1人で、新国民民主党結党直後に立ち上げました。前回の衆院選では、まだ県連が出来ていなかった新潟以外の地域の比例票掘り起こしを、富山県連で対応。しかし、結果としては、富山がブロック内の県の中で、国民民主党の最低得票率となってしまいました。
その後、橋本幹事長は、翌年の参院選に富山選挙区で擁立を目指す方針を早々に表明。最終的には断念したものの、県内の比例票をほぼ倍増させました。
ただ、擁立の面では苦戦が続きます。春の県議選でも、富山市と高岡市で擁立を目指し、複数人と交渉にあたったものの断念。次期衆院選でも、富山1区での擁立を目指していましたが、比例での擁立も含め模索する方針に。
これは富山だけではなく、石川でも、県議選で、白山市で公認候補の擁立をギリギリまで模索しましたが、断念に至っています。

次期衆院選では、まず、小選挙区に候補者を何人揃えられるかに注目です。富山1区は従来からの擁立方針ですが、前原代行が重ねて意欲を示す石川1区、複数人との面談を始めているという長野4区など、具体的な選挙区の名前はすでに上がり始めています。

このうち、長野4区では、共産が擁立する選挙区になり、立憲は共闘の関係上、擁立を避けたい思惑もある様で、国民民主党との棲み分けは「あうんの呼吸」(立憲関係者」で成立する見通しですが、石川県内は全ての小選挙区に立憲が立てており、国民民主党が擁立すれば競合は避けられない見通しです。

ともあれ、現段階でブロックの中で1人も候補予定者がいない唯一のブロックですから、まずは立てられるのか、です。


長くなってしまったので、一旦ここで切り、「東日本編」とします。
2議席がかかる東海ブロック、苦戦が続く近畿ブロック、初の議席獲得を目指す中四国ブロック、激戦区を含む九州ブロックについては、「西日本編」で紹介したいと思います。
小遣い程度に下もお願いしまーす。

ここから先は

0字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?