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日本からヨーロッパへ

11月9日(木)
搭乗便は成田発だったのでY子と私は成田空港近くのTホテルに前泊した。首都圏に住む私は夜9時に一足早くチェックインした。ロビーは中国人客でごった返していた。いつもながらみんな声が大きい。

ホテルは空港へのアクセスはよいがメンテナンスはすごく悪い。入浴後にバスタブの湯を流したら、床の排水溝から水が逆流してバスルームが水浸しになった。夜中に名古屋から到着したY子も同じ目に。事前に注意を促したのだが逆流は防げなかった。バスルームからぴちゃぴちゃという音が聞こえてきた。
 
11月10日(金)
朝7時過ぎに起床。Y子も私も身支度には時間をかけない人間だ。8時の送迎バスまで時間は十分あった。ロビーにはシャトルバスを待つ人がたくさんいる。昨夜の中国人グループもいる。彼らは今朝もにぎやかだ。昨夜のバスルーム被害をフロントに告げたら、「ご報告ありがとうございます」という返事だった。謝罪の言葉がないのにびっくり。

シャトルバスは10分ほどで空港に到着した。ツアーの集合時刻は8時55分。時間はまだたっぷりある。宅配便のカウンターに行き自宅から送っておいたスーツケースを受け取った。Y子も同様に名古屋から送ったスーツケースを受け取った。ツアーの集合場所に行くと添乗員のTHさんが声をかけてきた。ベテラン添乗員といった雰囲気の女性だ。THさんから必要書類を受け取り、航空会社のカウンターに行く。今回の航空会社はANAだ。チェックインは前日ウェブで済ませていたので荷物だけ預け、搭乗券を受け取る。搭乗便は10時55分発のデユッセルドルフ行き209便。搭乗までまだ時間があったのでレストラン街で軽い朝食をとった。

出発30分前に搭乗口に行く。飛行機は定刻に出発した。機内はほぼ満席。私は最後尾の席に座り、Y子はひとつ前の席に座った。前日にウェブでチェックインした際、通路側の座席は最後尾とそのひとつ前しか空いていなかった。年齢とともにトイレに立つことが多くなってきたので最近はもっぱら通路側をリクエストしている。私の座席は窓側2人掛けで、隣は若い男性だった。デュッセルドルフで開催される医療品展示会への出張だそうだ。

離陸2時間後に夕食が出た。内容はまずまずだった。メニューはハンバーグか焼き魚。焼き魚をリクエストしたが希望者が多くて足りないのでハンバーグにしてほしいと言われた。ないと言われると焼き魚が無性に食べたくなる。ハンバーグもなかなかの味でスープも美味しかったのだが、希望したものが食べられないことへのくやしさが心を乱れさせる。たかが機内食なのだが。でも焼き魚を選んだ人が後で「あまりおいしくなかった」と言うのを聞いたとたんに心が落ち着いた。なんて身勝手な心だろう。ちょっと恥ずかしい気もした。

長時間の飛行なのでアルコールは控えた。ちなみにANAは日本酒の提供も始めたようだがこれも我慢した。若いときは「タダで飲める」とばかりに何杯もお代わりしていたが、還暦を過ぎた今はほどほどにしないとあとが怖い。タダより怖いものはないことはこれまでの人生で十分学んできた。特に、行きの便は健康管理をしっかりしておかないと旅行が台無しになる。

12時間近い飛行なので映画を見まくった。「君の膵臓をたべたい」「ツレが鬱になりまして」「マツコの知らない世界」など家ではまず見ないものばかり。懐かしい「フルハウス」も楽しんだ。

15時、デュッセルドルフ空港に到着。日にちと時間の感覚がだんだんあやふやになってくる。ヨーロッパは日本より進んでいるんだっけ、遅れているんだっけ? 着陸前はかなり揺れた。「キャプテン、大丈夫?」と言いたくなるほどだった。無事に着陸してほっとした。窓の外を見ると滑走路が雨で濡れている。

雨のデュッセルドルフ空港

機体を降りて荷物検査と入国審査の場所に向かう。荷物検査ではペットボトルを没収されている人がたくさんいた。私も機内で配られた水を後で飲もうと開けずにとっておいたのだがあえなく没収された。乗り継ぎでもひとまず飛行機を降りると次の便には液体を持ち込めない。知らなかった。続いて入国審査のカウンターに行く。EU域内は最初の空港で入国手続きをするので私たちはここデュッセルドルフで審査を受ける。審査の列は2列だったので動きが早い方の選に並んだのだが、私の直前の母子に時間がかかってなかなか進まなくなった。反対側の列はどんどん流れていく。自分の選択が間違っていたことへの後悔が湧く。結果的にそれほどの違いはなかったのだけれど。ここでも自分の心の狭さを感じて恥ずかしくなった。

乗り継ぐのはウィーン行きのオーストリア航空の便。搭乗まで5時間もある。空港内にはそれほど興味を引くものは見当たらない。最近はどこの空港も大きな違いがないように私には思える。ハムサンド(2.4.ユーロ)を買って夕飯にして食べた。

20時、ウィーン行きのオーストリア航空(OS516)に搭乗する。大柄な女性CAがスナック菓子を配りながら「スイート・オア・ソルティ?(Sweet or Salty?)」と投げやりな口調で聞いて回っている。乗客は男性が多い。みんな体が大きい。

21時40分、ウィーンに到着。乗り継ぎがもう1回ある。今度はグラーツ行きだ。デュッセルドルフ空港でミネラルウォーターを没収されたので、免税店で新たにミネラルウォーターを購入した。1本だと1.9ユーロだが、2本だ3.6ユーロなので、2本買ってY子と1本ずつ分けた。22時45分、グラーツ行きのOS957に搭乗する。機内誌の日本特集をきっかけに社交家のY子はさっそく隣の夫婦とソーシャライズ(Socialize)している。彼女はどこに行っても、誰とでもすぐに親しくなれる女性だ。楽しそうにおしゃべりしている。夫婦に日本語の文字まで教えている。私は眠気の方が強くおしゃべりの元気はない。23時20分、グラーツに到着。外はすごく寒い。

夜中の12時前に「スター・イン・ホテル・グラーツ(STAR INN HOTEL GRAZ)」に到着。外観はそれほどでもないが、クオリティはまずまず。それに寝るだけなので多くは望まない。夜も遅かったのでシャワーを浴びてすぐにベッドに入った。あっと言う間に眠りについた。私たちはこうして無事にヨーロッパの土を踏んだ。

スター・イン・ホテル・グラーツの外観


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