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161 「責任を持つ」と言ってくれた学校長

教員をしていたとき学期中にどうしても参加したい海外のプログラムがありました。音楽を通した国際文化交流です。

参加には問題がありました。プログラムが秋に行われることです。つまり2学期のまっ最中です。公立学校の教員は原則として学期中の海外渡航は認められていませんでした。現在はどうなのかわかりませんが当時は年休であっても海外に行くことはNGでした。ましてや英語の教員が音楽活動で海外に行くなど認められるわけがありません。

私は勤務校の校長に相談しました。認めてもらえないことを覚悟で話をしました。それがどんな活動で、なぜ参加したいのか、授業はどうするかなど詳しく説明しました。校長は黙って聞いていましたが、私が話し終わると静かに言いました。「どうしても参加したいのでしょう? だったら行ってらっしゃい。私が責任持ちますから」と。問答無用で拒否されると思っていた私はびっくりしました。何事にも「委員会に聞いてみないと…」と言い即答しない校長が多い中で、独自の判断で認めてくれたことにも驚きました。

プログラムは行き帰りを含めて5日間でした。期間中は土日と行事の代休が入ているので実質的に授業に支障が出るのは2日半です。私は学年の同僚や生徒たちに事情を話しました。秘密にして出かけることには抵抗があったからです。授業は他教科と時間をやりくりして変更してもらい、自習にすることを極力避けました。中には快く思わない同僚もいたかもしれません。でも校長が許可したのですからやましい気持ちはありませんでした。校長には心から感謝しました。

活動は有意義でした。そして私にとっては貴重な学びでした。国内の研修では得られない大きな成果がありました。生徒たちにも体験を話し、指導に役立てました。

帰国後は真っ先に校長にお礼を言いに行きました。私が無事に帰国したのでほっとされたようです。校長は「責任を持つ」と言ってくれましたが実際に何かあったら多大な迷惑がかかることは目に見えています。それを承知で許可してくれた校長には心から感謝しています。

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