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ポケットティッシュを渡されて

かつて路上のあちこちで配られていたポケットティッシュ。最近はめっきり減りましたが、先日久しぶりに手にしました。夫と二人で地方都市の駅前を歩いていたときです。若い男性が配っていました。受け取ったのは夫の方です。

ティッシュには大手予備校の名前が印刷されていました。ごく薄いものでティッシュそのものは6枚しか(6枚もと言った方がよいのでしょうか)入っていません。冬期講習会の案内チラシが挟みこんでありました。

「なんでオレに予備校のティッシュ?」夫は不思議そうな顔をしていました。確かに現役の高校生や浪人生ではなく、高齢の夫に渡すのは不可解です。でも受講費用のスポンサーと考えれば親や祖父母をターゲットにするのも一理あります。夫はおそらく孫がかわいい「じーじ」に見られたのでしょう。さらにティッシュを渡されたのが私ではなく夫だったのは、家計を握っているのは男性だという思い込みがあったからでしょうか。そうだとしたらジェンダー認識に疑問を感じます。でもおそらく私の深読みでしょう。並んで歩いていたので夫の方が渡しやすかったというだけだと思います。

配布が盛んだった頃の風景も懐かしく思い出されました。駅前や人通りの多い道で配布されることが多かったですが、少し歩くだけで手にいっぱいになりました。多すぎて途中から手を出さなくなることもありました。仕事帰りに駅の階段を降りてくるといつも人が並んで配っていました。

配布元は様々なジャンルの会社でした。私がよく渡されたのは携帯電話、居酒屋、コンタクトレンズ、英会話学校、新築マンション、美容、自動車学校などでした。予備校や塾もありました。パチンコや消費者金融、出会い系などもあり「なんで私に?」と思うこともありました。

渡す方はだれかれ構わず渡す人もいれば、相手を選んで渡す人もいました。アルバイトの若い学生などは前者多かったように思います。後者からもらった時は自分がどう見られているかと改めて考えたりしました。もらう方は片っ端からもらっている人もいれば、配布元を確かめてからもらう人がいました。もらったティッシュはそのままカバンやポケットに入れる人、ちらっと見てからしまう人、添付されているチラシは捨ててティッシュだけカバンに入れる人など様々です。

まったく受け取らない人もいましたが、その一方で自分の方から近づいて行ってもらう人もいました。「オバちゃん」に多かったように思います。もらおうと手を出したのにもらえなかったりしてバツの悪い顔をしている人もいましたっけ。

ティッシュは飲食店やスーパー、銀行などにも置いてありました。そこら中にあり、「だれでもどうぞ」というように置かれていました。だから箱入りのティッシュを買うことはあっても、ポケットティッシュを自分で買うことはありませんでした。景気が良かったんだなあとしみじみ思います。

コロナ禍以降は配布がぐっと減りました。感染の心配があるからでしょうか。ただでもらえても手を出さなくなったのは私も同じです。

ポケットティッシュひとつでいろなことが頭をめぐりました。脳が少し活性化されたような気がします。

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