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校舎裏の桜の木

桜の花だよりが連日伝えられます。美しく咲き誇る桜には思わず目を奪われますが…

ある学校に赴任して3年目のことです。校舎裏にある焼却炉(当時は学校に焼却炉がありました)にゴミを捨てに行ったとき、ふと脇に目をやるときれいな桜の花が咲いていました。それほど大きな木ではありません。建物の陰になって陽もあまり当たりませんし表からは見えにくい場所ですがピンク色の可愛い花をいっぱい咲かせていました。たまたまそばで用務員さん(当時はそう呼ばれていました)が作業されていたので、「あんなところに桜がきれいに咲いていますね」と声をかけたところ、用務員さんは「毎年きれいに咲いてるよ。去年も咲いてたけど気がつかなかった?」と言われました。そして「あんな場所だから見る人はあんまりいないけどね」と言いました。

私はハッとしました。そしてちょっと恥ずかしい気持ちになりました。赴任して3年にもなるのに桜に気づいていなかったからです。焼却炉にはたびたび足を運んでいましたが桜には気づきませんでした。毎年きれいに咲いていたというのに。私はいったい何を見ていたのでしょう。正門付近の大きな桜の木はあでやかで毎年多くの人の目を奪っています。でも体育館裏のその木に目を向ける人はあまりいないようです。それでもきれいな花を咲かせている。人の目に触れない場所でも美しい花を咲かせているその木がなんだかいじらしく思えました。

何かにつけて注目されることがもてはやされる時代です。活躍して目立つ人には注目が集まります。そんな中で目立たないところでも美しい花を咲かせている人がいることを忘れてはいけないと思いました。そんな人にもっと目を向けなくてはいけないとも思います。

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