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初めての異文化体験は茶色い飲み物だった

私にとって初めて異文化体験は1960年代、小学校に入学したばかりの頃です。父の仕事上の知り合いであるアメリカ人将校のお宅に家族で招待されました。米軍基地の中にあるその人の家は当時テレビで放送されていたアメリカのホームドラマ(『パパは何でも知っている』)に出てくる家そのものでした。家の周囲には芝生が広がり、隣の家まで何十メートルも離れています。家の中には見たこともない家具や調度品が置かれ、キッチンの巨大な冷蔵庫には目を見張りました。ちなみに当時のわが家はまだ氷で冷やす冷蔵庫でした。土足で家に入ることにも驚きました。

リビングの大きなソファに座っていると奥さんが飲み物を運んできました。初めて見る茶色い飲み物です。「なんだろう?」と思いながら飲んでみましたが苦みがあって全然美味しくありません。薬のような味です。それに泡がいっぱい立っていてプシュプシュと音がしています。あまりに不味くて私は思わず泣き出してしまいました。それを見た奥さんが今度はアイスクリームを持ってきてくれました。バカでかい容器に入ったバニラアイスです。容器は私の頭より大きく見えました。今なら当たり前のように食べているアイスクリームですが当時の私はめったに口にすることはなかったです。す美味しかったです。「アメリカ人はいつもこんな美味しいものを食べているんだ」と羨ましく思ったことを記憶しています。ただ量があまりにも多かったので私は食べきれませんでした。そのあとのディナーも家で母が作る料理とはまったく違うものでした。

水洗の洋式トイレにも戸惑いました。見たのはも初めてです。私の家も水洗トイレでしたが和式でした。上部に水のタンクがあり紐を引っ張って流す「あの」タイプです。イスのようなトイレをどうやって使うのかわからず親を呼びに行きました。

父が彼らと話している言葉もまったくわかりません。何もかもが別世界のことのようでした。私にとって初めての異文化体験は驚きの連続でした。

ちなみにあの美味しくなかった茶色い飲み物はコカ・コーラです。



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