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辻次夕日郎『スノウボールアース』1巻

引っ越して半年が経過しました。ここ最近は、体調がすぐれない日々が続き、仕事や日々の暮らしに影響が及ぶようになってきた為、定期的に病院に通っています。そこで人生初めての大腸カメラ、座薬を経験し、高度な医療を享受する一方、何か大事なものを犠牲にしています。ONE FOR THE MONEYがHIP HOPなら、私のHIPが求めるのは健康の2文字。

マンガの備忘録を1冊。

■辻次夕日郎『スノウボールアース』1巻

近未来SF冒険譚として舞台となるのは凍結地球〈スノーボールアース〉。

残存する旧世代のテクノロジーを生かし、どのように生命を維持するのか?といった点は、文明崩壊後のサバイバル的な楽しみもありつつ、最近読んだSF小説『人間たちの話』の「冬の時代」を思い出したり。(同じく凍結地球〈スノーボールアース〉となった近未来の日本を冒険する、ふたりの少年の冒険譚)

「こうしたビルでは、昼間に雪解け水が流れ込み、夜になって再び氷結し、その膨張によって内部が圧迫される。そこに低温植物や微生物が繁殖する。そうした過程を幾百日と繰り返すにつれて、下層階は巨大生物の小腸の中のような奇怪な様相となっている。」—『人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)』柞刈 湯葉著

凍結した後の地球は、見かけ上、氷づけになったベランダに干された洗濯物のように時間は止まっています。しかしながら主人公は、倒した銀河怪獣を資源にする様子を見て、歩みを止めず環境に適応しようとした人類の営みに気づきます。そのさなかに居続けた当人たちにとっては無自覚ですが、主人公は「過去」と「現在」の間に時間経過がなく「点と点を重ね合わせられる」からこそそれに気付ける。

そこで、今年読んだ『世界は贈与でできている』を思い出したりしました。

前述の本では、巻き戻せない歳月によって主人公の鉄男は贈与の受取人となります。というのも、コールドスリープから目覚めると10年の月日が経過しており、過去からのメッセージログが届きます。そして、差出人が既にこの世を去っており、鉄男は贈与の差出人へと変化していきます。そこで、鉄男は「友達を作る」というコミュニケーションの差出人となり、物語は「仲間を作る」という少年漫画の王道のテーマを突き進む原動力を得ることになります。

「SFというエンタテイメントが提示する根源的な日常化──。〔…〕僕らがこの世界と出会い直すためです。」—『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学 (NewsPicksパブリッシング)』近内悠太著

今年中には2巻目が発売されるみたいです。この時期、年を越さなくてよい楽しみを増やしていきたいです。

おわり

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