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ネコのはなし


自宅で猫と暮らしている。
この猫は僕が店に立っていた時、店の前を鳴きながら走っていった。ガリガリに痩せた子猫だったので、野良なのは一目瞭然だった。

「あいつ轢かれちゃうよ。」
道を渡ろうとする姿を見て僕がそう言うと同時に、妻が表に駆け出して行ったが、しばらくして「見失っちゃった。」と言いながら帰ってきた。

僕も妻も犬と暮らした経験があって動物は大好きだったが、当時の僕は食品関係の仕事上、動物を飼うことに抵抗があったので「しょうがないね。」と言っただけだったと思う。

だが、追いかけてきた妻をどこかで見ていたのか、それから30分もしない内に店のドアの前で鳴き出した。

困ったなあ、と思ったけれど幸い店内はおしゃべりな常連さんが一人だけ。そっとドアを開けると客席の奥の方へ駆け込んでいって隠れてしまった。

常連さんが帰っても物影からこちらを見るだけで出てこなかった。じっと小さくなって棚の下に隠れていた。

そこに今度は猫好きの常連さんがやって来て、あれやこれやと教えてくれた。ごはんやトイレ、ひとまず必要な物を揃えてくれた。猫の扱いに慣れている常連さんが子猫を棚の下から出してくれた。

そして自宅で保護しながら貰い手を探すことになった。
ところが…
ご存知の方も多いと思うが、目立つ特徴も無い子猫を貰ってくれる人はなかなかいない。貰い手が現れないまま数日が過ぎた。
徐々に警戒心が無くなって、遊ぶ元気も出てきた。

10日ほど経って、一緒に暮らすことに決めた。

それからは名前を決めて溺愛してきた。
毎日「いいこだね」「大好きだよ」をムツゴロウさん並に伝えている。愛情たっぷりで育てたせいか、特徴の無い痩せた子猫は8キロ近くある大猫に育った。デブではなく体格がデカい。大きい種とされているメインクーンと数値的には変わらない。顔が少し小さいかな。。

休みの日には、僕の股の間で丸くなってグウグウ寝るのが彼の重要なルーティンだ。だから僕もそれに応えるべく、趣味の事は可能な限り午前中で済ますように心掛けている。そして午後は彼の居場所になって静かに過ごす。

休みの日はそうしてじっとしている時間が長いので、その時間はこうやって文章を書くかYou tubeでバイクやサーフィンの映像を見ることが多い。時々、ラリーの映像も見る。ヨーロッパではラリー人気が高いようで、往年のラリーカーが出場するレースも盛んに行われている模様。rallylegendsで検索すると色々見つかる。

日本ではちょっと信じられない光景だが、それはそれは懐かしい車が本気で走っている。
ルノー・サンク・ターボ、ランチア・ストラトス、セリカ、インプレッサ、Audiクワトロ、フィアットの131だっけ?等々。
もちろん911もいる。

日本はものを大事にする国だと漠然と思っている人も多いかと思うが、もう全然比較にならないレベルで西洋では工業製品が大事にされているという一面が垣間見える。

デザインも現在のWRCは各メーカー良く似ていて、トヨタか?と思うとフォードだったりヒュンダイだったりするけど、ちょっと昔のラリーカーは個性が際立っている。それらの車が超絶なテクニックで操られる姿を見るのが楽しい。

僕の休みは、こうして巨大猫を股に挟んだまま過ぎていく。姿勢も変えられないし股関節が滅茶苦茶疲れるのだが、時々、目を覚ましては画面から聞こえるエンジン音に迷惑そうに溜め息をつく姿も堪らなく可愛い。

これを一言で言うと「メロメロ」という表現になるのだと思う。



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