帰郷

お題「茶色い外側」

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 男は枯れ木のような老人を背負って立っていた。
 赤茶けた大地。崩れ落ちた砂の家。ゆらゆらと立つ陽炎だけが蠢く。

 背中の老人は軽く、身動きひとつしない。男の首筋にかかる生暖かいそよぎでまだかろうじて生きていることが分かる。

 男は老人をゆすり上げ、ひび割れた大地に踏み出した。

 朽ちた壁に幕を張り老人を横たえる。

「……さて」

 小さくつぶやいて男は荷物の中から縄梯子を取り出した。

 干上がった井戸の底。男は何日も土を掘り続けた。
 日蔭に横たわった老人は一回り縮んでいる。
 土を掘る男も枯れ木のように乾いている。

 円錐状に抉れた井戸の底に、男はようやく目当てのものを見つけた。

 人々が見捨てた大地だが、まだ生きていた。

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最後までご覧いただきありがとうございます。

老人はどうなったのか、男はどうなるのか、なんのために来たのか、いろいろ省略してますが、実は書いた本人が一番知りたい……(笑)。

最後までご覧いただきありがとうございます🥰 あなたにもいいことがありますように💕