正論に頼るな

「政治っていうのはね、『スカッとする』ことをやっちゃ絶対に平和的解決は無理なんですよ!国際連盟脱退なんて、その最たるもんじゃないですか!」

私が年に何度も心の中で反芻する言葉である。確かテレビ番組で聞いたのだと思う。誰が言ったのかを覚えていないことが口惜しい。

国の政治に限らず、スカッとすることをした結果、関係が修復不可能になることは多い。

私はイラチ家庭で育ったし、基本的に物事の見方も厳しいので、頭に血が上って「正論で相手をぶった斬ってやる!!」と思うことは多々ある。たがその度にこの言葉を思い出すのだ。奥歯を噛み締め、痙攣する瞼を深く閉じて深呼吸しながら、「私はスカッとしたいのではなく、そもそもの目的を遂行したいのだ。そのためにはどうする?この状況をどういなす?」と自問し続ける。深呼吸を続けるうちに、少しずつ気分も落ち着いてくる。

とにかく、慌てない。そして、駆け引きとはリアルタイムで双方が動き進行するものだと肝に銘じる。自分が犯してもいいと思えるリスクの範囲であれば、相手にボールを回し、任せて信じる。信じるというのは本当に辛く難しいことだが、決めたのであれば信じきる。そうすれば道筋が見えてくる。

正論は読んで字の如く正しいものだ。正しいからこそ、そこに焦点を合わせていると他のものが一切目に入ってこない。しかしあらゆる状況であらゆる対象に当てはまる正論など存在しない。むしろ、いま自分が置かれた状況、その一点に効くロジックを探るべきなのだ。それには引いて見る視点が必要になるし、引いて見る視点には経験または教養(古典)が必要になる。

我々は学ばなければならないし、探らなければならないし、結んでいかなければならない。よりよく生きて、目的を達成するために。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?