見出し画像

ゲーム翻訳者になるには

このテーマについてはすでに先人が書いたものがたくさんあり、繰り返しになってしまうと思うが、最近SNSを再開して周辺に何から始めればよいのかわからない、という人を見る機会が増えたので、私の考えも書いてみたいと思った。

a)何ができる人なのかをはっきりさせる。

ゲーム翻訳にはさまざまな種類があり(予算の大小、納期の厳しさ、ジャンル…)、人材を探している人は常にいる。

フリーランスの場合、入り口はあってないようなものなので、まずは自分が何ができる人なのかをはっきりさせて、その存在を、求人情報を持つ人やマッチングが得意な人に知ってもらうことが重要だ(翻訳会社に入りたい場合は、普通に求人サイトで探すか、アメリアの会員になって正社員の求人をチェックするのが正攻法だと思う)。

「何ができる人なのか」は、純粋な経歴のほかに、関心のあることや、訳文が見られるもの(有志翻訳など)でもいい。文字を売る仕事なので、ブログなどもいいかもしれない。

・経歴・学習歴
専攻や職歴、翻訳学校の受講歴など。専門知識はその分野の翻訳で大いに役立つ。
・関心や意欲のある対象
好きなゲームジャンルやサブカル、スポーツ、趣味などがあれば、アピールできる。TRPGのコンテキストで「GM」と書くのがよいか「ゲームマスター」と書くのがよいか、そのジャンル特有の言い回しなど、詳しいからこそ判断できることというのは多い。それは翻訳時に大きなアドバンテージとなる。
・訳文
訳文を実際に作って公開するのもよいだろう。ゲームの有志翻訳を入り口にプロの翻訳者になった人もいる。ただし、著作権の侵害には注意すること。海外にはフェアユースの考えがあり、著作権の話はここでするには複雑すぎるが、とにかく、作者の許可を得ない状態で翻訳したものを「翻訳者になりたいです!私のこれ見てください!」と公開するのは、スマートなやり方ではない。
ちなみにVoice of America(https://learningenglish.voanews.com)のコンテンツはパブリックドメインとして使用できる(なお挿入されているサードパーティーコンテンツーロイターの写真などーはパブリックドメイン対象外)。

できないことは、別に書かなくていいと思う。何ができないのかは、選ぶ方が見たらわかるものだし、気になる場合は相手が聞いてくるはずだ(だからこそ経歴詐称や嘘は絶対にダメ!!)。

それからできないことで関連して言うと、「経験がないからできません」という態度は、一番よくないと思う。

そんな発言を聞いても、「じゃあそこでずっとできないままでいてください」としか思えない。経験がないけれど、これはここまでできる(またはやってみたいという意欲はあるから挑戦させてほしい)という人は探せばいるのだから。

b)マッチングの機会を探る

自分のできることを明文化できたら、次は見つけてもらうフェーズ。

業界の人が集まる場で自分の存在を知ってもらう。もちろんそれがすぐに仕事に繋がるわけではないが、最初に書いたように、人材を探している人は常にいるので、誰かに知ってもらうことで、声がかかる可能性が高まるという話だ。

・Twitter
好きなゲームの翻訳担当者本人が見つかる可能性もある。Gameloc SpatialChats(https://twitter.com/GamelocSpChats)では、定期的に開かれるオンラインおしゃべり会の情報を確認できる。
人と繋がりやすいが、情報収集ツールとしては玉石混交なので、そのつもりで使うこと。
・Facebook
在宅翻訳コミュニティなど、承認制のグループが多い印象だが、変なプロフィールでなければ基本的には承認されると思う。タイムラインが流れてしまうTwitterと違い、グループに投稿を投げれば誰かが反応してくれる可能性が高い。
・リアルイベント
最近は開催が難しくなっているが、ネットワーキングや情報収集には、リアルイベントが一番効率がよいと思う。オープンなものであれば、事前にTwitterで告知が流れる。「○○が好きなの!?じゃあAさんと話合うと思うよ、あそこにいるよ!」みたいな流れでどんどん人を紹介してもらえたりして、仕事に繋がるかはともかく、普通に楽しい。リアルイベントに参加する時は、簡単なもので構わないので連絡先の書かれた名刺を用意しておいた方がいいと思う。

c)トライアルを受ける

あとはトライアルを受けるやり方。トライアルとは、翻訳会社に登録してもらうために受ける試験だ。
・基本的にトライアルは無料で翻訳することになる。
・企業により異なるが、一度落ちたら一生受けられないというわけではない。3年くらい経ったら再度受けられる会社が多いと思う。気になる場合は担当者に聞いてください。
・中には合否結果だけでなく、細かいフィードバックをくれる企業もある。

まとめ

①自分をアピールしてマッチングの機会を探す、②翻訳会社のトライアルを受ける、これがゲーム翻訳業界に参入するやり方で、仕事をもらえるようになってからも、これを繰り返して仕事を続けていくことになる。

通常の会社員なら、誰かに面倒を見てもらってとか、難易度の易しいものの後に難しいものを任せてもらって…とかで、少しずつ成長するようなキャリアパスを積んで行くのだろうけれど、残念ながらフリーランスは、自分が背伸びして処理できる範囲までの仕事を受けて、キツい思いをしながら成長していくしかない(唐突な免責:私がこう書いているからと言って、スキルや納期的に手に負えない案件を無理に受けるようなことはしないでくださいね!!!)。

自分が任せられた仕事をまっとうできるか、不安になるかもしれない。でもそれはぶっちゃけ、未経験の時に限った話ではない。みんなそういう思いを抱えながら、どう完成させるか、頭と体を使って模索して成果物を出している。自己管理スキルもプロのフリーランスに求められるスキルだから、翻訳者の作業中の叫びや愚痴が表に出てくることはほとんどないけれど、私は原文を再現できなくて悩みすぎて気がついたら床で寝ていたり、突然のデータトラブルに発狂したりしながら仕事をこなしている(なのでそこそこ体力も必要だと思います…)。

実際に仕事を引き受けるようになった時の流れは、こちらの動画(https://youtu.be/8X5V7eqKO-4)が参考になる。担当のPM(プロジェクトマネージャー)に、初めての取引なので全体の流れを教えてほしいと言ってもいいだろう。忙しいPMに質問するのは迷惑じゃないか?という気持ちもわかるが、不慣れなせいで盛大なやらかしをして後から対応を迫られるよりは、始めにちょっと手間をかける方がマシだろうというのが、私の考えだ。

以上、ゲーム翻訳者になるきっかけとなることを挙げてみた。
ツッコミや質問、お待ちしております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?