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函館山のぼれ

北海道旅行ときたら、多くの人は食事に重きを置かれるだろう。旅行Webサイトの朝食がおいしい宿のランキングで上位を占めるのが北海道は札幌と函館のホテルなのだ。しかも朝食バイキングとはビジネスホテルも導入しているので多岐にわたる。

北海道の名物は魚卵などの海産物と酪農産品、小麦・小豆などの穀物類。
つまり和食派はいくらやたらこをご飯にモリモリかけたり、最高品質の鮭をお供にできる。
洋食派は道産小麦の美味しいパンの上にバターを塗ったりチーズを合わせたり、牛乳やカフェオレを調和させたり。とにかく基幹的食材が抜群にうまい地が北海道なのだ。
サケ茶漬けのご飯の量を間違えたっていい。
無くなる心配をしてデザートをあらかじめ取り分けておいてもいい。
なんの変哲もんないこの朝食ビュッフェでひとつ、驚くべきメニューがあった。

それが「ふかしいも」なのだけど
文字通りじゃがいもを茹でて余熱で粉ふきにして大皿にドンと盛り付けてあるだけだったのだ。
脇にはバターがあったので「ま、せいぜいじゃがバターとして食べろよな」というところだったのだろうか。
1巡して、ムッシュと席について吟味しはじめてウマいウマいと言っていたのだが、イモをふかしただけのものがイクラとか松前漬けの並びの端っこにあってびっくりしたよと伝えた。
ムッシュもそれを発見したよと言っていてシェフからの挑戦、はたまた農業王国北海道からの挑戦状か、と。
ハムやフルーツやらを2巡目に狙いに行ってムッシュも私ももれなく「ふかしいも」をお皿に載せて戻って来た。
肝心の味は、美味しかったはずである。例えばジャーマンポテトとか、ポテトグラタンといった調理ならわかる。が、ふかして素材の味を堪能してみなさいという印象だけが強くて美味しかっただろうという記憶しかないのである。食材を茹でるだけで一品としてカウントできてしまう資源の豊かさにおののいた。
いもの印象だけ持って帰ってすこしダラダラしてから観光に出かけたいと話しながら、イカ釣りのイカなくなっちまうよと急きたてて支度をした。
チェックアウトは自動精算機で行い、さあ出かけようという折仲居さんが話しかけてきてくださった。「どうぞ正面玄関からどうぞ」と。精算機の横の通用口のようなところから出ようとしてしまっていたため、仲居さんに函館情報を聞きながら後にした。
そして前日ラキピに寄った函館港の、朝市へ行った。
無き祖父が北島三郎推しだったのだけどまさしく大漁祭りという雰囲気の場所だった。
イカを釣った。縞模様が綺麗なイシダイ、開きでしか見た事がなかったので初めて泳いでいるところを見たホッケの生け簀をぐるりと一周囲むほどの行列だった。時価だった。

釣りなんてとても難しいんだろうと思った。ら、イカの耳(本当は耳ではない)
のヘリに釣り針をひっかて持ち上げたら釣れた。
簡単すぎてびっくりした。

そして屋台へ渡すと目の前で捌いてくれる。
ノリノリでイカ釣ろうとは言ったが、自分は魚を刺身で食べられない。
昆布でシメてあったりあぶったり湯がいてある海産物は大好物だけど、果たしてイカは食べられるのだろうか?と来る前にすこし不安を抱いた。
目の前で短冊にされたイカは箸で持ち上げると向こう側が透けて函館市場の景色がみえるほどの新鮮さだったため、挑戦してみた。
食べて見たら本当に美味しかった。
食感ととろーっといううまみ、その身に醤油と生姜をからめてぱくぱく食べた。
内臓の部分はムッシュにあげて食べてもらった。

市場で友人のはしごのためにイカ飯のパウチを買った。いちばのお兄さんが2個買うとおいくら、3個買うともっと安くしますよと言ってくれたがお土産は1個だけでよいので1個をそれとなくおまけしてもらって買った。
市場のどんつきのほうで野菜の直売、ハンドメイドっぽい衣料品なんかがちらほら売り出されているところで美味しい海藻類をうってる店主さんに呼び止められてワカメを買った。ムッシュと山分けしてあれよあれよと3個も買った。わけわかめだった。

道路を挟んだ向かいにある函館駅も冷やかしに行った。蔓延防止措置の期間中で外の横丁は営業してる店舗が少なかった。はこだてプラザ的スポットにて名物土産を冷かした。本当は松前の温泉旅館の名物である海苔弁当が函館に来てるかどうか探そうとしたけど忘れていた。

さて次はどこの観光をしようかと相談してみたけど、函館山の上まで行ってみるか?としたけど雨も降りやまずだった。旅行と言えば地元のスーパーってことで函館のジャスコに行ってみようと車を走らせた。海風がつよいがロードサイドの郊外感は強かった。

お昼ごはんはどうしようか、焼き鳥弁当が名物のハセガワストアを持ち帰ろうかなど話して運転していたらロードサイドにラッキーピエロをみつけた。ここで会ったが百年目なのでラキピでお昼にすることになった。

ラッキーピエロは函館市を中心にチェーン展開しているバーガーショップなのだが、オリジナルグッズをめちゃめちゃ作りすぎたりする面白さのうちの一つに店舗ごとにインテリアのコンセプトが違う点がある。立ち寄った店舗のテーマはエルビス・プレスリーだった。彫像やレコードが飾られBGMに I can't help falling in love with you/好きにならずにいられないが流れたりするのだ。
前日にバーガーを頼めるおなかの余裕がなかったので、エッグバーガーとラキポテの組み合わせを食べたかった。ムッシュはもっと珍しいものを食べたがった。バーガーショップといえどメニュー数がかなり多く、店舗ごとに違うがダイナーのメニューからは外れるとんかつ、焼きそばやら餃子やらラーメンまでも提供するのだ。持ち帰りメニュー表を見るところによると、野球部の練習試合にたくさん必要だぞ!といった状況にも予約できるようで関東で言うところのほっともっと etc.にも匹敵するのであろう。函館市・北斗市でマクドナルドとKFCを足しても店舗数がかなわない脅威のローカルチェーン店である。
チャイニーズチキンバーガーのあのチキンと、エルビスプレスリー店にあったかつ丼をムッシュは注文した。さすがに量も量なのでアルバイトの店員さんに「かつ丼のご飯を少量にしてもらえませんか」と交渉したところ、奥の責任者に確認しに行き…交渉成立した。

半分でも完食できなかった…。

ロードサイドのどんつきで函館のジャスコにたどり着いた。食料品売り場で自分用のお土産を買いこんだ。ショッピングモールの判で押したような景観で忘れかけていたものの、サービスカウンターの横のエリアに六花亭の店舗が構えられていたので、そうか!そういえばここは北海道であったということを思い出した。

なにせ朝市に間に合うように出発した日だったので買い物もして次はどこへ行こうか、を繰り返した。腹ごなしをしてショッピングをしていたらお天気になってきたので函館山を目指して展望台に行くことにした。晴れ間の日曜の昼下がりに市街地を運転するのはとても気持ちがよかった。

曇り空で雨降りの天気では向かうのがためらわれそうな急こう配の道で、2台すれ違うのはぎりぎりの細い山道を登った。
ロープウェイは調整中だったので、頂上の展望台最寄りまで工事の人の誘導に従って着いた。
日本三大夜景が見られる場所なのだけれど、多くの人が勘違いしているのが函館から見える夜景は長万部(おしゃまんべ)の方角までずっと続く景色かというところだ。実際、函館市の函館港まで船の灯すあかりまでが美しい夜景の範囲なのだ、と昼間なのでよく見渡せた。

陽は眩しいけれど、山の上へ海から風がびょうびょう吹くのでとても冷たかった。
電波塔を横切って下山

函館山の麓のジャズが流れるおしゃれなカフェで休憩したけど、とても眠たくなった。駐車場が狭く、小一時間壁側に寄せようと進退を繰り返した。
函館の締めくくりに行ったのはコーヒールームきくち
本当に何の変哲もない喫茶店なのだが、このアイスクリームをテイクアウトして食べる競争を水曜どうでしょうの番組内で企画されたので聖地巡礼した。
おそらく視聴者のひとが残したのであろう番組の企画概要本、安住紳一郎アナの訪問時のさいんが掲げられていた。
聖地
こうして函館の夜は更け、空港でベンチに横になり羽田に戻り品川駅でわちゃわちゃしてわたしたちは日常に戻った。

また来るときは、ラッキーピエロの焼きそばが気になるとムッシュが言っています。

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